電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

L06010

タイトル(和文)

ナトリウム冷却小型高速炉4Sにおける局所事故の解析的評価 -冷却材流路の部分閉塞を対象とした予備評価-

タイトル(英文)

Analytical Evaluation of Local Fault in Sodium Cooled Small Fast Reactor (4S) -Preliminary Evaluation of Partial Blockage in Coolant Channel-

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

当所が設計研究を実施しているナトリウム冷却小型高速炉(4S)は、炉心の長寿命化による燃料無交換を設計目標の一つとしている。そのため、内部転換の良好な金属燃料を用い、かつ従来の高速炉に比べて燃料ピンを稠密配置した形状となっている。この形状では、燃料集合体内に流入した異物による冷却材流路の閉塞や燃料ピンの湾曲による隣接ピンとの接触等の異常(一般に局所事故と呼ぶ)が、従来形状に比べて発生しやすく、またその影響が拡大し易いことが懸念される。
混合酸化物燃料高速炉の局所事故を対象とした研究は多数実施されており、異常の拡大条件や炉心冷却特性への影響等が明らかにされているが、金属燃料を対象とした試験研究は少ない。したがって、4S炉の局所事故時の安全性を予備的に評価するためには、炉心燃料の特徴を考慮して広範囲に解析的な検討を行う必要がある。
そこで本研究では、4S炉の燃料集合体を対象に、冷却材流路の局所閉塞時の熱流動解析を実施し、流路閉塞率や閉塞形態などのパラメータが集合体内の流動および温度分布へ及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。また、4S炉の冷却材流路閉塞事故に対する安全性について予備的に評価する。
本研究では、既往研究において代表的な流路閉塞形態であることが示されている平板状の中心閉塞および片側閉塞を評価対象として選定した。また、熱流動への影響が大きい因子である流路閉塞率、閉塞物の空隙率、閉塞形成位置を解析パラメータとして設定した。解析には汎用熱流体解析コードであるPHOENICSを用い、3次元定常熱流動解析を実施した。その結果、以下のことが明らかになった。
(1)4S炉の定格運転条件下で部分流路閉塞が発生した場合の冷却材の最高温度は、流路閉塞率の増加とともに上昇するが、今回の解析範囲では、すべての条件で冷却材の沸騰は発生しない。ただし、一部の条件を除き、金属燃料と被覆管の共晶反応による液相形成が発生することが示された。
(2)4S炉では既往研究の集合体に比べて燃料ピンを稠密配置しており、かつレイノルズ数も約15,000と小さいため、乱流が十分に発達しておらず、閉塞物後流側に形成される再循環領域が既往研究の1/4程度と小規模になる。これにより冷却材の滞留も発達せず、沸騰が回避されたものと考えられる。
(3)金属燃料と被覆管の界面での液相侵食速度を考慮した予備的な検討に基づけば、急速な燃料破損や周囲燃料ピンへの破損伝播は生じないと予想された。

以上より、4S炉で部分流路閉塞が発生した場合、冷却材の沸騰は回避され、急速な燃料破損の拡大による集合体規模での破損は生じないという見通しが得られた。

概要 (英文)

Local faults are fuel failures that result from heat removal imbalance within a single subassembly especially in FBRs. Although the occurrence frequency of local faults is quite low, the licensing body required local faults evaluations in previous FBR plants to confirm the potential for the occurrence of severe fuel subassembly failure and its propagation.
A conceptual design of 4S (Super-Safe, Small and Simple) is a sodium cooled fast reactor, which aims at an application to dispersed energy source and long core lifetime. It has a dense arrangement of fuel pins to achieve a long lifetime. Therefore, from the viewpoint of thermal hydraulics, the 4S reactor is considered to have more potential for coolant boiling and fuel pin failure caused by formation of local blockage, comparing these potential in the conventional FBRs.
The objective of the present study is to evaluate the effect of local blockage on the coolant flow pattern and temperature rise in the 4S-type fuel subassembly under the normal operation condition. A series of three-dimensional thermal-hydraulic analysis in a single subassembly with local blockage was conducted by the commercialized CFD code "PHOENICS".
Analytical results show that the peak coolant temperature behind the blockage rises with increasing the blockage area, however, the coolant boiling does not occur under the present analytical conditions. On the other hand, it is found that the liquid phase formation caused by eutectic reactions will occur between the metallic fuel and the cladding under the local blockage condition. However, the penetration rate of liquid phase at fuel-cladding interface is quit low. Therefore, it is expected that rapid fuel pin failure and its propagation to surrounding pins due to liquid phase formation will not occur.

報告書年度

2006

発行年月

2007/06

報告者

担当氏名所属

西村 聡

原子力技術研究所 新型炉領域

植田 伸幸

原子力技術研究所 新型炉領域

キーワード

和文英文
小型原子炉 Small nuclear reactor
高速炉 Fast reactor
ナトリウム冷却 Sodium cooling
金属燃料集合体 Metallic fuel subassembly
局所閉塞 Local blockage
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