電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

L06

タイトル(和文)

造血動態を指標としたマウス個体の放射線適応応答の機構

タイトル(英文)

Whole-body radiation adaptive response in terms of the recovery of hematopoietic system

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

放射線の生物影響が放射線の量(線量)の単純な蓄積だけで説明できない現象として、事前の低線量放射線照射によって後の放射線被ばくに対する抵抗性を獲得する「放射線適応応答」という現象が知られている。放射線適応応答にはマウスの致死効果を改善する効果が知られているが、その機構は明らかにされていなかった。低線量放射線が生物に及ぼす影響を正しく評価するためには、放射線適応応答が誘導される機構を明らかにする必要がある。高線量照射によるマウスの死因は主に血液を生産する能力(造血能)の低下によることが知られているため、放射線適応応答の誘導機構を明らかにするには、照射後に血球数が回復することを確認し、さらに血球の数のみならず血球の生産を調節する様々な増殖因子が応答する特性を把握することで、低線量放射線を事前に照射することにより造血能の低下を免れる現象を解明する必要がある。そこで、放射線適応応答を誘発する条件で照射したマウスの造血組織(末梢血、骨髄細胞)における細胞の数を測定し、血球数の回復が起こることを確認する。また、血球の増殖を刺激する増殖因子の種類を特定し、それらが引き起こすマウス個体の放射線適応応答の機序を明らかにし、放射線適応応答の機序モデルを構築することを目的とした。まず末梢血の血球数を調べ、事前に低線量放射線を照射したマウスでは赤血球および血小板の回復がより早く起こることを明らかにした。次に骨髄の細胞数を調べ、事前に低線量放射線を照射したマウスでは骨髄細胞数の回復がより早く起こることを明らかにした。また、低線量の事前照射で回復が見られた骨髄細胞の成熟度を調べ、事前照射したマウスの骨髄細胞の回復は、未熟な細胞の時点でその回復が起こっていることを明らかにした。さらに、血球の増殖を刺激する増殖因子を探索し、低線量放射線を事前照射したマウスでは骨髄球系の増殖を刺激する因子のひとつである顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の血中濃度がより早く増加することを明らかにした。本研究によって、マウス個体の放射線適応応答では、低線量放射線の事前照射によってより早く血球の回復が起こるためであり、その役割を担うのがG-CSFという増殖因子であることが初めて明らかになった。これにより、個体の放射線適応応答が低線量放射線によって誘導される増殖因子を介した血球の増殖によってもたらされるという機序モデルが構築できた。

概要 (英文)

The biological effects of ionizing radiation are not always determined by the amount of total absorbed dose. One of the effects is the radiation adaptive response: low-dose preirradiation prior to high-dose irradiation occasionally suppresses harmful effects. Although the lethal effects of whole-body ionizing irradiation are considered to be directly due to gastrointestinal or hematopoietic failure, Yonezawa et al. found that low-dose preirradiation significantly improved the survival of mice after high-dose lethal irradiation. However, the mechanism underlying the whole-body radiation adaptive response still remained unknown. This study partially clarified the mechanism of the whole-body radiation adaptive response by focusing on the dynamics of the hematopoietic system. Mice irradiated with low-dose acute X rays (0.5 Gy) for priming 2 weeks prior to a high-dose (6 Gy) challenge irradiation showed a rapid recovery of bone marrow cells, erythrocytes and platelets compared with mice subjected only to challenge irradiation. The rapid recovery of bone marrow cells after the challenge irradiation was consistent with the proliferation of hematopoietic progenitors and subpopulation of myeloid cells. Not only the growth of those cells, but also the production of a cytokine that induces the differentiation and growth of hematopoietic cells is also considerably increased by low-dose preirradiation. Therefore, the radiation adaptive response induced by low-dose preirradiation in terms of the recovery kinetics of the number of hematopoietic cells may be due to the rapid recovery of the number of myeloid cells after high-dose irradiation.

報告書年度

2008

発行年月

2009/05

報告者

担当氏名所属

大塚 健介

原子力技術研究所 放射線安全研究センター

キーワード

和文英文
放射線適応応答 Radiation Adaptive Response
低線量放射線 Low Dose Radiation
造血 Hematopoiesis
増殖因子 Growth Factor
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