電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
H20007
タイトル(和文)
雷放電路からの誘導の影響を考慮した配電線直撃雷フラッシオーバ解析
タイトル(英文)
Direct Lightning Flashover calculation of Medium Voltage Distribution Lines Considering LEMP Effect
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
我が国の高圧配電線は,架空地線の施設率が高く,避雷器も200 m以下の間隔で取付けられている場合が多いため,誘導雷に起因する雷事故は少なく,直撃雷に起因する雷事故の占める割合が高い。直撃雷に対する配電線の耐雷性能評価には,XTAPやEMTP等の瞬時値解析プログラムを用いた雷サージ解析が広く行われているが,これらの解析では雷放電路からの電磁界(LEMP: lightning electromagnetic pulse)による誘導の影響は無視されることが多い。一方,近年の研究では,LEMPの影響を考慮することにより直撃雷時にがいしに発生する電圧が増加する場合があることが明らかとなっている(注1)。高圧配電線における雷事故率計算の精緻化のためには,LEMPが直撃雷フラッシオーバ率に与える影響について明らかにする必要がある。
目 的
LEMPの影響を考慮することが可能なFDTD法に基づく汎用サージ解析プログラムVSTL(注2)の計算結果とEMTPの計算結果の比較をもとに,配電線直撃雷に対するLEMPの影響を明らかにするとともに,LEMPが配電線フラッシオーバ発生確率に与える影響を評価する。
主な成果
1. LEMPの影響を考慮した配電線直撃雷サージ解析
架空地線のみが取付けられた配電線を対象として,VSTLおよびEMTPを用いて,配電線直撃雷時にがいし間に発生する雷過電圧を計算した。この結果,VSTLにより得られた計算結果はEMTPによる計算結果に比べ大きくなることを明らかにした。これは,LEMPによって,相導体上に接地電位とは逆極性の電圧が誘導されるためである。このためEMTP等の瞬時値解析プログラムによって雷サージ解析を行う場合には,LEMPにより発生する誘導電圧を別途計算し,重畳する必要がある(注3)(図1)。
2. LEMPが配電線直撃雷フラッシオーバ発生率に与える影響
配電線に避雷器が取付けられていない場合,LEMPを考慮することによってフラッシオーバ発生確率(注4)は増加する。この傾向は大地抵抗率が低い場合に顕著となる。一方で,避雷器の取付け間隔が短くなるほど,LEMPの影響は小さくなる(図2,3)。
以上の結果から,日本の配電線のように,避雷器が200 m程度の間隔で取付けられた場合には,LEMPがフラッシオーバ発生率に与える影響は比較的小さいと考えられる。
(注1)参考文献:K. Ishimoto et. al., IEEE Trans. PWRD, doi: 10.1109/TPWRD.2021.3053620 (2021)
(注2)参考報告書:立松,電力中央研究所 研究報告 H17005 (2018)
(注3)誘導電圧を計算するためには,RusckやAgrawalのモデルに基づき電磁界と相導体間の結合を計算すればよい。本報告ではAgrawalモデルに基づき誘導電圧を計算する誘導雷電圧計算コードの一つであるLIOV-EMTPコードを使用した。
(注4)本報告では負極性第一雷撃電流波形(波頭長3.83 µs,波尾長75 µs)が配電線に直撃した際に多相フラッシオーバが発生する確率を計算した。
概要 (英文)
In Japanese medium voltage distribution lines, lightning outages associated with indirect lightning strikes are less frequent since shield wires and surge arresters are installed with close interval. Thus, the lightning performance is mainly determined by the line response due to direct lightning strikes. In previous studies relevant to the protection against direct lightning strikes, the influences of the lightning electromagnetic pulse (LEMP) radiated from lighting channel are typically disregarded. This report examines the influence of LEMP by means of numerical simulations. The main results are shown below.
(1) The comparison of the results of the FDTD method and the circuit analysis revealed that the voltage across the insulator is significantly enhanced by the LEMP. This is because the LEMP induces the voltages on the phase conductors with opposite polarity to the ground potential rise.
(2) The above-mentioned voltage enhancement by LEMP is negligible when lightning strikes to the pole equipped with surge arresters. For this reason, the influence of LEMP on the flashover rate is small for the case that the surge arresters are installed with relatively close interval like Japanese medium voltage distribution lines.
報告書年度
2020
発行年月
2021/08
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
石本 和之 |
電力技術研究所 サージ・電磁気現象領域 |
キーワード
和文 | 英文 |
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配電線 | Distribution lines |
直撃雷 | Direct lightning |
雷電磁パルス | Lightning electromagnetic pulse |
回路解析 | Electronic circuit simulation |
FDTD法 | FDTD method |