電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
H20003
タイトル(和文)
架空地線撤去時における高圧配電線雷事故率の定量評価 -架空地線支持金物が雷事故率に与える影響-
タイトル(英文)
Estimation of Lightning Outage Rate of Medium Voltage Distribution Lines without Overhead Ground Wires - Influence of Supporting Steels for Overhead Ground Wire on Lightning Outage Rate -
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
近年,配電設備の維持・管理に要するコスト削減の観点から,一部の地域においては架空地線の撤去が行われる場合があるが,その際に,架空地線を支持する金物のみが残置される場合がある。架空地線を撤去した配電線では,相導体への雷撃の増加に伴い径間途中断線や,避雷装置の焼損の増加が懸念される。残置した架空地線支持金物の雷撃吸引効果によりコンクリート柱への雷撃が増加することで,相導体への雷撃頻度が減少するという観測結果注1)も報告されているが,この架空地線支持金物が雷事故率に与える影響について,定量的に検討した例はほとんどない。
目 的
当所で開発した高圧配電線雷事故率計算プログラム注2)を用いて,架空地線支持金物が雷事故率に与える影響について明らかにする。
主な成果
1. 架空地線支持金物が直撃雷発生率に与える影響
図1に示す配電線における直撃雷発生率を計算した。この結果,架空地線撤去時に架空地線支持金物を残置することで,コンクリート柱への雷撃頻度が増加し,相導体への雷撃頻度は減少することが分かった(図2)。
2. 架空地線支持金物が雷事故率に与える影響
図1に示す配電線におけるスパークオーバ発生率注3)および避雷装置焼損率を計算した。スパークオーバ発生率は架空地線を撤去することで増加する。また,架空地線を撤去した配電線では,避雷装置が密に施設された場合,架空地線支持金物を残置することで,スパークオーバ発生率の減少が期待できる。一方で,避雷装置の施設割合が疎な場合,架空地線支持金物を残置することで,スパークオーバ発生率が増加する可能性がある(図3)。これは,残置した架空地線支持金物により電柱への雷撃頻度が増加し,多相スパークオーバ発生率が増加したためである。
また,避雷装置焼損率は架空地線を撤去することで大幅に増加する。一方で,架空地線撤去時であっても,架空地線支持金物を残置することで,避雷装置焼損率が減少することが分かった(図4)。
以上の結果から,架空地線撤去時に架空地線支持金物の残置を検討する場合,避雷装置の取付け状況を考慮することが重要となることを明らかにした。
注1)参考文献: S.Oguchi et al, IEEE Trans. on DEI., Vol.19, No1, pp.363-370 (2012)
注2)参考文献:石本,電力中央研究所 研究報告H19001(2020)
注3)塩原実験場で実施した配電線の相間スパークオーバ特性の取得結果などに基づいてスパークオーバ発生率を計算した。
概要 (英文)
In recent years, from the viewpoint of reducing the cost of maintenance and management of distribution facilities, overhead ground wires are sometimes removed in a certain area. At that time, supporting steels for overhead ground wire are sometimes left behind. The observation results show that supporting steels tend to attract lightning strikes. However, there are few studies on the influences of supporting steels on the lightning outage rate.
In this report, we examined the influence of the supporting steel for overhead ground wire on the lightning outage rate. The main results are as follows.
(1) The sparkover rate depends on the installation rate of surge arrester when supporting steel for overhead ground wire is left behind.
(2) The damage rate of the surge arrestor decreases when supporting steel for overhead ground wire is left behind.
報告書年度
2020
発行年月
2021/08
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
山口 宜大 |
電力技術研究所 サージ・電磁気現象領域 |
共 |
石本 和之 |
電力技術研究所 サージ・電磁気現象領域 |
共 |
森 亮太 |
電力技術研究所 サージ・電磁気現象領域 |
共 |
河野 丈治 |
電力技術研究所 サージ・電磁気現象領域 |
キーワード
和文 | 英文 |
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配電線 | Distribution lines |
耐雷設計 | Lightning protection design |
雷事故率 | Lightning Outage Rate |
直撃雷 | Direct lightning strike |
架空地線支持金物 | Supporting steels for overhead ground wire |