電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
H19009
タイトル(和文)
66kV送電用酸化亜鉛型避雷アークホーンのフラッシオーバ特性(その2)-短波尾雷インパルス電圧による放電特性と等価ギャップ長の評価-
タイトル(英文)
Flashover Characteristics of Arcing Horn with Metal-Oxide Surge Arrester (EGLA) for 66kV (Part 2) - Characteristics with Short-Tail Lightning Impulse Voltage and Its Evaluation of Equivalent Gap Length -
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
近年,雷による2回線事故防止や瞬時電圧低下防止の観点から,154kV以下の送電線を中心に送電用避雷装置として,酸化亜鉛型避雷アークホーン(以下,避雷AH)が多数設置されている。避雷AH の動作は,酸化亜鉛素子の非線形特性と直列ギャップの放電特性の組み合わせとなるが,その特性は十分には明らかにされていない。前報 [1] では標準雷インパルス電圧による避雷AH のフラッシオーバ特性から 注1),通常のアークホーンを模擬した棒-棒ギャップによる避雷AH の等価ギャップ長 注2)を明らかにした。これにより,雷事故率計算や絶縁協調の評価において避雷AH を簡易的に等価な棒-棒ギャップで置き換えられる可能性が示されたが,この簡易評価をLORP 注3)等に適用するためには,短波尾雷インパルス電圧 注4)(以下,短波尾LI)に対する特性を明らかにする必要がある。
目 的
避雷AH のLORP 等への適用に資するため,短波尾LI による避雷AH のフラッシオーバ特性を取得し,棒-棒ギャップによる避雷AHの等価ギャップ長を求める。
主な成果
66kV 送電線で用いられている製造元の異なる2 種類の避雷AH と,棒-棒ギャップ(図1)を供試体として,当所の塩原実験場にて短波尾LI(波頭長1.76μs,波尾長4.35μs)を印加し,フラッシオーバ特性を取得した。以下にその結果を示す。
1. 避雷AH のフラッシオーバ電圧-時間特性(V-t 特性)と制限電圧 注5)との関係
ギャップ長が350mm の避雷AH と棒-棒ギャップそれぞれについてV-t 特性を取得した。2種類の避雷AH の短波尾LI によるV-t 特性はほぼ等しく,棒-棒ギャップのV-t 特性と相似な形状となった。また,両者の電圧差は避雷要素部の制限電圧に相当することがわかった(図2)。
2. 避雷AH の50%フラッシオーバ電圧(V50)と等価ギャップ長
避雷AH と棒-棒ギャップに対して短波尾LI によるV50を取得した。V50が避雷AH と同等となる棒-棒ギャップの等価ギャップ長は正極性530mm,負極性480mmであることがわかった(図3)。これにより避雷AHの等価ギャップ長を,LORP 等における避雷AHのフラッシオーバ判定の簡易評価に利用することが可能である。
今後の展開
等価ギャップ長のLORPへの適用をはかる。また,過渡現象解析のための避雷AH詳細モデルとともに,同時フラッシオーバ現象の解析モデルを開発することで落雷による送電線の多相地絡の回路解析による再現を可能とする。
注1)前報H11016 では,架空地線で遮蔽されず電力線に雷撃した雷遮蔽失敗によってアークホーン間に発生するサージ性過電圧を想定し,標準雷インパルス電圧によるフラッシオーバ特性(電圧・電流特性,50%フラッシオーバ電圧特性,フラッシオーバ電圧-時間特性)を取得した。
注2)避雷AHをV50が一致する棒-棒ギャップで置き換えたときのギャップ長。前報同様に,直線近似により導出した。
注3)LORP(Lightning Outage Rate Program): 当所が開発した送電線の雷事故率を予測計算するプログラム。
注4)鉄塔塔頂への雷撃により侵入した雷サージは塔脚接地に向かって塔体を進行する。アークホーン間で発生する電圧は,大地からの反射波により波尾部分が相殺され,波尾長が数μs 程度の短波尾雷インパルス波形となる。
注5)前報同様に,印加されたインパルス電圧によって避雷要素部が保持する電圧値とする。
関連報告書:
[1] H11016「66kV送電用酸化亜鉛型避雷アークホーンのフラッシオーバ特性(その1)」(2012.05)
[2] H16006「送電線雷事故率の予測精度向上に関する研究(その3)」(2017.06)
概要 (英文)
This report describes flashover characteristics of arcing horn with metal-oxide surge arrester (EGLA) for 66kV transmission lines by applying the short-tail lightning impulse voltage. Although the operating characteristics of the metal-oxide surge arrester is considered by the combination of the electrical discharge at the series gap and the nonlinear characteristics of the ZnO arrester unit, detailed flashover characteristics and a transient circuit analysis model are not yet clarified. In recent years, the application of metal-oxide surge arresters increases rapidly. In this report, the metal-oxide surge arrester is set up directly-aligned and vertically, and the characteristics of flashover (voltage, current, V50, and V-t characteristics) are obtained by applying the short-tail lightning impulse voltage. According to the measured data of characteristics of flashover, the metal-oxide surge arrester and the series gap are operated independently each other. Furthermore, it became clear that V-t characteristics of metal-oxide surge arrester applying the short-tail lightning impulse voltage is equal to clamping voltage added to V-t characteristics of a rod-to-rod gap, as well as applying the standard lightning impulse voltage.
報告書年度
2019
発行年月
2020/05
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
三木 貫 |
電力技術研究所 気体絶縁・放電現象領域 |
共 |
三木 恵 |
電力技術研究所 気体絶縁・放電現象領域 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
雷 | Lightning |
送電線 | Transmission lines |
送電用避雷装置 | Transmission line surge arresters |
フラッシオーバ | Flashover |
絶縁協調 | Insulation co-ordination |