電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

H17008

タイトル(和文)

レーザーを用いたキャニスタ付着塩分計測技術の開発-キャニスタの温度と腐食様相が塩分計測に及ぼす影響-

タイトル(英文)

Development of Measurement Technology of ChlorineAttached on Canister Using Laser-Effect of Temperature and Corrosion Condition of Canister on the measurement of salt-

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背 景
使用済燃料の中間貯蔵方式の一つであるコンクリートキャスクでは、自然換気によるステンレス鋼製キャニスタの除熱を行うため、海岸立地を想定した場合に海塩粒子がキャニスタ表面に付着することが想定される。キャニスタの溶接部近傍においては、付着した塩分の塩化物イオン濃度が一定値以上注1)の場合、応力腐食割れが生じる可能性がある。そのため、貯蔵中のキャニスタ表面に付着した塩分の塩化物イオン濃度を把握することが重要と考えられる。当所では、レーザ誘起ブレイクダウン分光法(LIBS)注2)による塩化物イオン濃度計測法の開発を進めており、これまでにコンクリート体とキャニスタとの隙間を模擬した模型を用いて、付着塩分の遠隔計測の可能性を実験的に示した[2]。一方、実環境への適用を考慮すると、キャニスタが高温の状態で計測した場合や、腐食生成物のある表面を計測した場合における付着塩分計測の可能性を検証する必要がある。

目 的
鋼試験片を用いてキャニスタの温度および腐食様相が付着塩分のLIBS 計測に与える影響について実験的に評価する。

主な成果
1. キャニスタ温度がLIBS 計測に及ぼす影響
人工海水が噴霧されたステンレス鋼試験片を加熱した条件でLIBS計測を行った(図1)。その結果、試験片表面温度が室温から200℃の条件において、LIBS による塩化物イオン濃度の定量で必要となる塩素の輝線の発光強度は大きく変化しないことが分かった(図2)。その結果、使用済燃料貯蔵初期から終了時期までの期間注3)、キャニスタ温度を考慮せずに塩化物イオン濃度を定量計測することが可能と考えられる。
2. キャニスタの腐食様相がLIBS 計測に及ぼす影響
同一条件で人工海水が噴霧されたステンレス鋼試験片を用いて大気腐食試験を行い、腐食が生じた試験片と腐食試験に供していない試験片を用いてLIBS計測を行った(図3)。腐食したステンレス鋼試験片を計測した場合、腐食していないステンレス鋼試験片を計測した場合に比べて塩素の発光強度は半分程度に低下した(図4)。これは、腐食生成物を分解するためにレーザエネルギーが消費されたことが主な原因と考えられる。

以上により、キャニスタの温度は付着塩分のLIBS 計測の結果に影響しないと考えられる一方、腐食したキャニスタ表面を計測する場合には、塩素の発光強度の低下割合を予め求めることで発光強度を補正する必要があることが分かった。

概要 (英文)

A concrete cask, which is one of the interim storage system for spent nuclear material, has a natural ventilation system to remove the decay heat of nuclear materials. When a concrete cask is located at a seaside area, the stress corrosion cracking may be occurred at the area near a welded zone due to the deposit of sea salts with high chloride ion concentration. Therefore, the measurement of salt attached on a canister is effective for the monitoring the environmental condition for the occurrence of a stress corrosion cracking. We are developing the measurement system for a deposited salt on the canister by use of the laser-induced breakdown spectroscopy (LIBS), and have performed the remote measurement in a narrow gap simulating the inside of a concrete cask. In this study, the effects of the temperature and the corrosion condition of the canister on the measurement of salt by use of LIBS are evaluated. The corroded steel samples was made by corrosion test, and measured by LIBS. These results show that the chlorine emission intensity is not affected by the temperature of steel, but the chlorine emission intensity decreases when the surface of steel was eroded by salt.

報告書年度

2017

発行年月

2018/05

報告者

担当氏名所属

江藤 修三

電力技術研究所 高エネルギー領域

谷 純一

材料科学研究所 電気化学領域

キーワード

和文英文
コンクリートキャスク Concrete cask
キャニスタ Canister
応力腐食割れ Stress Corrosion Cracking
塩化物イオン濃度 Chloride ion concentration
レーザ誘起ブレイクダウン分光法 Laser-Induced Breakdown Spectroscopy
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