電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

H17006

タイトル(和文)

導体通電加熱により熱ストレスを付与した実機CVケーブル絶縁体の様相変化に関する考察

タイトル(英文)

Study on changes in chemical aspects of actual XLPE cable insulating material thermally aged by conductor current

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背 景
従来のCVケーブルでは,水トリー劣化が電気絶縁性能へ影響を与える劣化の主要因であった。一方、水トリーの原因となる水分の浸入を抑制した遮水層付CVケーブル注 )では、長期健全性を検討する上で水トリー以外の劣化要因を考慮する必要がある。そのうち最も可能性の高い要因として,熱や酸素による酸化劣化が想定される。CVケーブル絶縁体としての架橋ポリエチレンの酸化劣化は,電気絶縁特性などを低下させると考えられ,シート試料における報告例がある注 )。しかし、実機CVケーブルで実際の運用状態を考慮した検討注 )はなされておらず、熱や酸素に起因する劣化を各種様相(酸化防止剤分布、結晶化度、高次構造など)の変化で評価した例は極めて少ない。
目 的
実機CVケーブル絶縁体において実際の運用状態での劣化挙動を把握するため,導体通電加熱による規定の熱ストレス付与前後での,熱や酸素に起因する各種様相の変化を明らかとする。
主な成果
運転状態を考慮した導体通電加熱による熱ストレス付与前後での,実機66kV CVケーブル絶縁体中の各種様相の変化を把握するため,赤外分光 (FT-IR),酸化開始温度 (IOT) 注 ),X線回折 (XRD) 測定ならびに透過電子顕微鏡 (TEM) 観察を行った (表1)。その結果,IOTとXRD測定については明確な変化が認められた。以下に詳細を示す。
1. IOT測定による酸化防止剤 (AO) 残存量の変化
熱ストレス付与前後の絶縁体に対し,IOT測定によりAO残存量を推定した。未使用状態の絶縁体 (内導近傍,中間付近,外導近傍) を測定したところ,絶縁体径方向に対してAO残存量は一定ではなく,外導近傍から内導近傍にかけて徐々に低下することが推定された。熱ストレス付与後の同一箇所にて比較したところ,絶縁層全体でAO残存量は低下したが,径方向各部位に対する低下挙動は不均一であった (図1)。
2. XRD測定による結晶化度の変化
未使用状態での絶縁体 (内導近傍,外導近傍) の結晶化度をXRD測定により推定したところ,内導近傍に比べて外導近傍では高い値を示した。一方,熱ストレス付与後は結晶化度が全体的に増加し注 ),径方向での分布が一様となる傾向を確認した (図2)。
以上により,AO残存量と結晶化度の変化に着目することで,ケーブル絶縁体における熱や酸素に起因する酸化の様相を把握できると考えられる。

今後の展開
長期間の熱ストレス付与によるCVケーブル絶縁体の酸化による劣化進行を明らかとするため,IOTや結晶化度の変化を確認するとともに,電気絶縁性能との相関性も評価する。

概要 (英文)

An actual XLPE cable was exposed to the thermal degradation by conductor current heating to simulate its operational condition and the insulating material of the cable was examined about the chemical and physical changes in order to investigate degradation mechanism and degradation diagnosis method on an XLPE cable with water-barrier design. New and thermal degraded cable insulations were applied to various measurements from the viewpoint of remaining antioxidant content, crystallinity, morphology, and chemical bonds. Remaining antioxidant content of insulations was estimated by the measurements of initial oxidation temperature (IOT). From the result of IOT measurement, remaining antioxidant content of the new cable insulator gradually decreased from outer to inner of the insulator. After thermal degradation of cable insulator, IOT of the insulating layer decreased although the decreasing behavior of IOT was not same in radial position. The crystallinity difference between outer and inner parts of the insulator in the new cable was analyzed by the XRD measurements and decreased with the increase of crystallinity after thermal degradation. In addition, the evidence of carbonyl bond, which often applied for the analysis of the oxidation of polymeric materials, was found at the FT-IR spectrum of new cable insulator. This result would lead the difficulty of quantitative analysis for oxidation of polymeric materials by FT-IR measurement. From these investigations, it was suggested that the chemical and physical changes of actual XLPE cable insulator after thermal degradation should be compared with the radially same position of insulator.

報告書年度

2017

発行年月

2018/05

報告者

担当氏名所属

三坂 英樹

電力技術研究所 高電圧・絶縁領域

高橋 俊裕

電力技術研究所 高電圧・絶縁領域

キーワード

和文英文
CVケーブル XLPE cable
架橋ポリエチレン Cross-linked polyethylene
導体通電加熱 Conductor current heating
酸化防止剤 Antioxidant
結晶化度 Degree of crystallization
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