電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
H17002
タイトル(和文)
雷による配電線径間途中断線に関する検討-径間途中への雷撃による相導体間スパークオーバ発生率評価-
タイトル(英文)
Study on Wire Breaking in Mid-Span of Distribution Lines due to Lightning -Evaluation of Phase-to-Phase Sparkover Rates due to Direct Lightning Strike-
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
近年,配電設備の雷害対策の実施に当たっては,供給信頼度を維持しつつ,設備投資に要するコストを低減することが求められている。このため,当所では雷性状や配電設備構成,周辺構造物等の地域毎の特性を考慮した高圧配電線雷リスク評価手法を構築し,実配電線へ適用することによりその精度の検証を行うとともに,評価結果をもとに費用対効果を考慮した雷害対策の提案を行ってきた(注1)。
これまでに構築した手法では,がいし近傍での断線および避雷器の焼損を雷事故と定義し,数値計算によりこれらの発生頻度を求めている。一方,近年の避雷装置の導入拡大に伴いがいし近傍での断線が減少し,径間途中での断線の占める割合が相対的に増加している地域もある。このため,高圧配電線雷リスク評価手法においても径間途中での断線を評価する必要が生じている。
目 的
径間途中での雷断線の発生要因の一つと考えられる,相間でのスパークオーバ発生率を評価する手法を構築する。
主な成果
1. 径間途中での雷断線発生箇所の分析
ある地域で発生した径間途中での雷断線発生箇所の調査結果から,架空地線が無い箇所では,相導体への雷撃発生率が増加するため,架空地線が有る箇所に比べ,径間途中断線の発生率が7倍程度高くなることが分かった(表1)。
2. 相導体雷撃時に発生する雷過電圧様相の実験による把握
試験配電線を用いて,相導体への直撃雷試験を行い,①相間に発生する雷過電圧波形の波尾長は雷インパルス電流の波尾長に比べ極めて短いこと,②相間距離の増加に伴い相間スパークオーバ発生電圧が上昇すること,③避雷装置の動作開始電圧が高くなると相間に発生する雷過電圧も上昇すること,などを明らかにした(図1)。
3. 相間でのスパークオーバ発生率算定手法の構築
過去に実施された配電線への雷撃様相の観測結果(注2)をもとに修正を行った電気幾何学モデル(注3)と,XTAPを用いた雷サージ解析結果を組み合わせることにより,1落雷当たりの相間スパークオーバ発生率を算定する手法を構築した。本手法を用いることにより,配電線装柱毎の相間スパークオーバ発生率を評価可能となる(図2)。
今後の展開
相間でのスパークオーバ特性や,絶縁電線の溶断特性の評価を行い,径間途中断線現象の解明を進めるとともに,これらの結果の雷リスク評価手法への適用を行う。
(注1) 参考文献:電力中央研究所 研究報告 H12010 (2013),電気学会論文誌B,Vol. 137,No. 6,pp. 460-468 (2017)
(注2) 参考文献:電気学会論文誌B,Vol. 129,No. 6,pp. 815-822 (2009)
(注3) 配電線相導体は絶縁被覆の影響により,相導体からのリーダの進展が抑制されるため,コンクリート柱に比べ雷が直撃しにくい。本報告では相導体の雷撃吸引距離に修正を行うことによって,この影響を表現した。
概要 (英文)
For the past decades, in Japan, the installation rates of surge arresters attached to 6.6 kV distribution lines have been increasing. As a results, in a certain area, wire breakings near the insulator have drastically decreased and the ratio of wire breakings at the mid-span of phase conductors to all lighting outages has relatively increased. Since phase conductors fallen on the ground surface due to wire breaking in the mid-span may cause not only outage but also a public disaster, it is important to clarify the mechanism and effective countermeasures against this phenomena.
In this report, at first, we experimentally examined characteristics of lightning overvoltage generated on phase-to-phase, which is considered to be one of the factors of wire breaking in the mid-span, using actual-scale test distribution lines. Next, based on the experimental results, we proposed an analytical method to evaluate phase-to-phase sparkover rates. We clarify from these results that the phase-to-phase sparkover rates depend on arrangements of phase conductors and characteristics of surge arresters. Using the proposed method, we can evaluate the phase-to-phase sparkover rates in each region.
報告書年度
2017
発行年月
2018/06
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
石本 和之 |
電力技術研究所 雷・電磁環境領域 |
共 |
森 亮太 |
電力技術研究所 雷・電磁環境領域 |
共 |
浅川 聡 |
電力技術研究所 塩原実験場 |
共 |
原 慎吾 |
電力技術研究所 雷・電磁環境領域 |
共 |
新井 伸隆 |
電力技術研究所 雷・電磁環境領域 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
配電線 | Distribution lines |
耐雷設計 | Lightning protection design |
径間途中断線 | Wire breaking in mid-span |
直撃雷 | Direct lightning strike |
相導体間スパークオーバ | Phase-to-phase sparkover |