電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
H16007
タイトル(和文)
新型落雷位置標定システム(新型LLS)開発のための基礎検討(4)-東京スカイツリーへの落雷の光学観測結果を用いた解析手法の確立-
タイトル(英文)
Study on development of advanced LLS (4)- The establishment of an analysis method by using the optically observed lightning strokes hitting Tokyo Skytree -
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背景
合理的な雷害対策のため、現在当所では位置標定結果の真値からのずれが数十m 以内の精度を持ち、電荷量、ピーク電流値および電流峻度が推定可能で、かつ安価な新型LLS(注1)[1]~[3]の開発を目指している。この新型LLS 実現のため、推定電流値の精度向上および電流峻度推定が新たに必要となり、このためには実雷に伴う放電路形状、電流[4]、および電磁界の同時観測データを用いた雷電流伝播速度の推定が必要となる。また、落雷位置の推定精度向上には、上向きリーダの線電荷密度の値を知る必要があり、このためには実雷におけるピーク電流と上向きリーダの線電荷密度の関係を知る必要がある。しかしながらこれまで、実雷でのこれらの観測は成功していなかった。
目的
東京スカイツリーでの落雷観測により、電流伝搬速度の推定を行う。また落雷時のピーク電流値と上向きリーダの電荷量の関係を求める。
主な成果
1.電流伝搬速度の推定
東京スカイツリーにて、第一雷撃における雷放電路の、高速度カメラを用いた多地点同時観測に成功した。次にこの観測データを用いて3 次元的な雷放電路の再現をすることが出来た(図1)。さらに、同時に観測された電流、電界観測結果および数値電磁界解析を用いることにより、電界波形の波頭峻度を精度良く再現できる(図2)。これらにより、新型LLS の開発に必要となる電流伝搬速度は光速の30%~40%であることがわかった。これにより、今後新型LLS の電流値および電流峻度の推定精度向上に寄与することができる。
2.ピーク電流値と上向きリーダの電荷量の関係
従来、リーダの線電荷密度は落雷(帰還雷撃)のピーク電流値によらず、一定の値で模擬されていたが、東京スカイツリーにおける光学と電流の同時観測の結果、帰還雷撃のピーク電流値と上向きリーダの線電荷密度との間には、正の相関があることが判った(図3)。この特性を考慮することにより、今後新型LLS の落雷位置標定精度向上に寄与することができる。
今後の展開
今後、観測データを蓄積し、新型LLS 実用機の電流推定アルゴリズムに組み入れる電流伝播速度およびピーク電流値と上向きリーダの関係を提案する。
概要 (英文)
Simultaneously obtained data of lightning current, associated electromagnetic field waveforms and optically observed lightning channel data are necessary for progress of the advanced lightning location system under development at CRIEPI recently. Moreover, the data are also necessary for further reasonable lightning protection design of transmission line, distribution line and other electrical facilities. For this purpose, lightning discharges hitting Tokyo Skytree are under observation since 2012. About 50 lightning flashes were observed by 2015 and detailed current parameters are already reported.
Six lightning channels hitting Tokyo Skytree were optically observed by high speed cameras in August 2016. Associated current waveforms observed by Rogowski coils installed at a height of 497 m of the tower, and electromagnetic field waveforms observed by fast antennas located at multiple stations in the range of several kilometers to several tens of kilometers were also obtained for the 6 lightning discharges. By using the simultaneously observed data, details of lightning attachment process, relations of current and electromagnetic field wave forms, and parameters of upward connecting leaders were analyzed in this report.
報告書年度
2016
発行年月
2017/06
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
齋藤 幹久 |
電力技術研究所 雷・電磁環境領域 |
共 |
三木 貫 |
電力技術研究所 雷・電磁環境領域 |
共 |
三木 恵 |
電力技術研究所 雷・電磁環境領域 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
落雷位置標定システム | Lightning location system |
雷放電路 | Lightning channel |
電磁界波形 | Electromagnetic field waveforms |
雷パラメータ | Lightning parameters |
東京スカイツリー | Tokyo Skytree |