電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
H16005
タイトル(和文)
レーザーを用いたキャニスタ付着塩分計測技術の開発-光ファイバ伝送による狭隘部へのアクセス性の向上-
タイトル(英文)
Development of Measurement Technology of Chlorine Attached on Canister Using Laser - Improvement Accessibility into Narrow Space by Use of Optical Fiber-
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
コンクリートキャスク方式による中間貯蔵施設が塩害環境下に長期間立地した場合は、使用済燃料を貯蔵するキャニスタの表面に塩分が付着するため、塩化物による応力腐食割れを考慮して、付着塩分を計測することが重要である。当所では、これまでにレーザ誘起ブレイクダウン分光法(LIBS)注1)を用いた計測システムの開発を行い、貯蔵中を想定した塩分計測方法の概念提案を行った[1, 2]。本方法では、ミラーを用いてレーザ光を空間的に伝送していた。一方、コンクリートキャスク内部に計測機器を挿入してLIBS を行うためにはアクセス性の良い光ファイバを用いたレーザ光の伝送が望まれる。
目 的
光ファイバを用いたレーザ光伝送により貯蔵中のキャニスタに付着した塩分を遠隔計測する可能性について実験的に検討する。
主な成果
放射線による光ファイバの劣化により一部の光が伝送できなくなるが、光ファイバが劣化してもその透過率が低下しない波長(1064 nm)を有するレーザ光を用いて以下
の実験を行った。
1. 光ファイバを用いた高エネルギーのレーザ光伝送方法の提案
レーザ光の強度分布を平坦にするホモジナイザを利用して、LIBS を行うのに必要な高エネルギーのレーザ光を安定して伝送した(図1)。また、レンズを複数枚組み合わ
せて光ファイバ伝送したレーザ光を集光できることを確認し、塩素の計測に必要な単位面積当たりのレーザエネルギー注2)を光ファイバ伝送により得ることができた(図2)。
2. キャスク内部を想定した付着塩分計測方法の開発
キャスク内部を想定した狭隘部に挿入可能な光ファイバ注3)を用いた計測機器を開発し、隙間の壁側面に設置したステンレス鋼に付着した塩分の計測を行った。その結果、
塩化物イオン濃度を得るのに必要な塩素の輝線を遠隔計測できることを実験的に示した(図3)。
以上の結果より、光ファイバを用いて貯蔵中のキャニスタ表面にアクセスし、塩素計測が行える見通しを得た。
注1) パルスレーザ光を計測対象物に照射し、その際に生じるプラズマを分光計測することにより対象物に含まれる各元素の濃度を計測する方法。
注2) 塩素が計測可能なレーザエネルギーの最低値[2]とレーザ光の集光径を元に算出した。
注3) 本実験では耐放射線性の高い石英ファイバを用いた。
注4) S. Eto, T. Fujii , Spectrochim. Acta B. Vol.116 (2016) pp.51-57. より一部抜粋
概要 (英文)
In order to improve the accessibility into the narrow space for the laser-induced breakdown spectroscopy (LIBS) system, the optical fiber was adopted for the transmittance of the laser-pulse with high energy. Although we developed the LIBS system for the measurement of chlorine in salt attached on the canister material which used for the interim storage of spent fuel, it was difficult to access to the surface of the canister while storage because the canister is stored in the concrete body to shield the radioactive ray from the nuclear material. The laser-pulse transmittance by use of the optical fiber have a possibility to easily access to the surface of the canister because the optical fiber can be bent and be inserted into the narrow gap between the canister and the concrete body. The experimental results of the laser transmittance show that the laser pulse (pulse width 10 ns, 532 nm or 1064 nm) can be transmitted with high energy, is enough for LIBS, by use of homogenizer which flats the beam-intensity profile. The remote LIBS measurement was demonstrated by using the 5 m-long fiber for laser-pulse transmittance. In the experiment, the compact device was used for focusing the laser pulse and collecting the emission of laser-induced plasma, and was inserted into the gap with 50 mm to measure the salt attached on stainless-steel which was located at the side wall. The results show that the chlorine emission spectrum was observed when chlorine concentration was about 50 mg/m2, and the fiber-delivered LIBS system enable the improvement of the accessibility into the concrete cask.
報告書年度
2016
発行年月
2017/05
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
江藤 修三 |
電力技術研究所 高エネルギー領域 |
共 |
藤井 隆 |
電力技術研究所 高エネルギー領域 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
レーザ誘起ブレイクダウン分光法 | Laser-induced breakdown spectroscopy |
光ファイバ伝送方式 | Transmission system by using optical fiber |
遠隔計測 | Remote measurement |
使用済燃料 | Spent fuel |
塩化物イオン濃度 | Chloride ion concentration |