電力中央研究所

報告書「電力中央研究所報告」は当研究所の研究成果を取りまとめた刊行物として、昭和28年より発行されております。 一部の報告書はPDF形式で全文をダウンロードすることができます。

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

H16004

タイトル(和文)

「送電設備の雪害に関する研究」10ヶ年研究成果(その2)-がいし塩雪害の評価手法と対策-

タイトル(英文)

Report on 10 years research of snow damage of overhead transmission facilities (Part 2) - Evaluation method and measures to salt snow damage of insulators -

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背 景
2005年12月に新潟県下越地域において、暴風雪に伴う送電線の雪害事故により、大規模の停電が発生した。この事故を契機に、当所では、電力会社の協力のもと、2007年7月より「送電設備の雪害に関する研究」として、各種の雪害事象に対応した試験・研究を開始した。この一環として、塩分を含む湿雪ががいしに圧密着雪したことによる事故(以下、塩雪害)の原因究明と、運用面および設備面での対策構築に向け、海塩・降雪ならびにがいし着雪の現地観測や人工試験を実施するとともに、当所で開発した数値解析システムを用いた検討を進めてきた。

目 的
塩雪害が発生する気象条件を解明するとともに、塩雪害発生懸念地域の推定法を提案する。また、各種がいし類の着雪・耐電圧特性の解明と塩雪害対策品の効果検証を行う。

主な成果
1. 塩雪害気象条件の解明と発生懸念地域推定法の提案
海塩・降雪の現地観測や、領域海塩解析モデル(Re-SPRAY)を用いた海塩の輸送過程の検討などから、新潟下越雪害時には、日本海寒帯気団集束帯上に複数発生した渦状擾乱により、高濃度の海塩を含んだ雪が新潟県に降ったことが分かった(図1)。また、周辺各地の過去の気象データについて分析を行った結果、気象条件から塩雪害発生の可能性がある地域を推定するための指標として、海風の風向に限定した着雪ポテンシャル(海風着雪ポテンシャル)が有効であることが分かった(図2)。
2. がいし等の着雪・耐電圧特性の解明と対策品の効果検証
サンプルがいしを用いた現地着雪観測や風洞設備を用いた人工着雪試験を行うとともに、154 kV級がいしを対象に、人工雪を用いた着雪課電試験を実施した。その結果、長幹がいしに比べ、笠間隔が大きい懸垂がいしは、着雪特性および着雪時のフラッシオーバ特性の面から有利であり、長幹がいしに代わる懸垂がいしの適用が、塩雪害の防止対策として有効であることが確認された(表1、図3、図4)。また、ポリマーがいしについても、懸垂がいしと同様の効果が期待できることが分かった。

今後の展開
海塩・降雪ならびにがいし着雪に関する現地観測の一部を継続し、過酷環境条件でのデータ蓄積を図るとともに、塩雪害予測・解析手法の高度化ならびにがいしフラッシオーバの機構解明・特性評価を進める。

概要 (英文)

In December 2005, Japan experienced a major outage in Niigata Kaetsu area due to a large amount of wet snow mixed with sea-salt accreted on several transmission line insulators. To clarify the causes of the snow-induced outage and increase reliability of the networks, comprehensive project researches related to the effect of ice and snow accretion on overhead lines were initiated.
Meteorological analysis and field observation on meteorological situation of salty snow damage to insulator in Niigata Kaetsu area were carried out. According to meteorological analysis and numerical model for sea salt, vortex disturbances along Japan sea Polar air mass Convergence Zone (JPCZ) would be a key meteorological situation for the snow damage in 2005. As an indicator of possibility of snow salty damage with snow accretion on insulators, snow accretion potential is improved with respect to onshore wind. The improved snow accretion potential show maximum values at the periods of the snow damage in the Niigata area, 2005, suggesting the availability of the potential for prediction of the salty snow damage.
Snow accretion properties of various insulators were investigated by field observation and artificial laboratory tests. Also, a 154 kV class full-scale snow test procedure to evaluate various insulator designs was developed, and artificial flashover voltage tests of snow accreted insulators were carried out. As the results, cap & pin insulators showed better performance for snow accretion and significantly higher flashover voltage than long-rod insulators. Thus substitution of long-rod insulators with cap & pin insulators appears to be reasonable as a countermeasure against snow induced flashovers.

報告書年度

2016

発行年月

2017/06

報告者

担当氏名所属

本間 宏也

電力技術研究所 高電圧・絶縁領域

屋地 康平

電力技術研究所 高電圧・絶縁領域

木原 直人

地球工学研究所 流体科学領域

大原 信

環境科学研究所 大気・海洋環境領域

西原 崇

地球工学研究所 流体科学領域

平口 博丸

地球工学研究所

キーワード

和文英文
がいし Insulator
雪害 Snow damage
海塩 Sea-salt
気象解析 Meteorological simulation
フラッシオーバ Flashover
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