電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

GD24002

タイトル(和文)

機械学習を用いた油中ガス分析による電力用油入変圧器の異常レベル進展予測―油中ガス分析実施間隔の延伸可否判断手法の提案―

タイトル(英文)

Predicting the progression of abnormal levels in oil-immersed transformers using machine learning for dissolved gas analysis -Proposal of a method for determining the feasibility of extending the interval of dissolved gas analysis-

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背景
電力用油入変圧器(以下、変圧器)の内部異常(過熱や放電など)の監視のため、これらの内部異常で発生したガスを分析する油中ガス分析が行われている。電気協同研究会のガイドライン注1)では各種ガス濃度に応じて「正常」「要注意I」「要注意II」「異常」という4 段階の異常レベル注2)へ分類しており、内部異常有無の判別に活用されている。油中ガス分析は1~3 年間隔で実施される場合が多く注3)、「要注意I」の場合は分析間隔を短縮する、「要注意II」以上は異常が発生したとみなし点検を実施する、などの措置がとられる。一方で設備保全業務効率化の観点からは、分析間隔の延伸によるコスト低減が求められている。

目的
異常レベルに着目し、現在の油中ガス分析結果を用いて異常レベル進展注4)を予測する手法を開発する。その上で、分析間隔の延伸可否判断手法を提案する。

主な成果
1. 機械学習を用いた異常レベル進展予測手法の開発
異常レベルが進展しないものを「現状維持ケース」、進展するものを「異常進展ケース」と定義する。実変圧器で実施された油中ガス分析結果の時系列データを用いて、機械学習により1~5 年後にどちらのケースかを予測する手法を開発した(図1)。本データは、各ガス濃度が高い領域(図2 (a))で両ケースが混在注5)し、高精度での予測が困難な分布である。この分布を踏まえて、本手法は「異常進展ケース」の見落としによるリスク回避を優先した予測を行えるよう開発されている(図2 (b))。
2. 分類確率に基づく油中ガス分析実施間隔の延伸可否判断手法の提案
「異常進展ケース」への分類確率注6)を用いて、リスク回避とコスト低減を考慮した油中ガス分析実施間隔の延伸可否判断を行う手法を提案した。分類確率のしきい値を低くするほど「異常進展ケース」の見落としが減少し、リスク低減に繋がる(図3 (a)(b))。図1 (3)(4) に示すように、しきい値を設定した上で経過年数ごとの分類確率推移を判断基準とすることで、リスクを踏まえた延伸可否判断が可能である。

注1) 電力用変圧器改修ガイドライン, 電気協同研究65 巻1 号, 2009.
注2) ガイドラインにおいて内部異常の程度を表す4 段階の区分を本報告では「異常レベル」と表記する。
注3) 変電設備の保全高度化とアセットマネジメント, 電気協同研究78 巻2 号, 2022.
注4) 内部異常が進行し、ガイドラインにおける4 段階の区分において次の異常レベルへ移行すること。本報告では、突発的に発生することの多い「放電」は事前予測が困難なため対象外とし、「過熱」のみを予測対象とする。
注5) 同様のガス濃度分布であっても「現状維持ケース」「異常進展ケース」双方の事例が存在する状態。
注6) あるデータが「異常進展ケース」に属する確率(予測の確からしさ)を数値で示したもの。両ケースが等しく混在する領域上のデータでは、分類確率は0.5 に近づく。

概要 (英文)

This report proposes a method for predicting abnormal levels in oil-immersed power transformers using dissolved gas analysis (DGA). The method focuses on maintenance criteria established by the Electric Technology Research Association, which are widely used by Japanese electric power companies. By utilizing machine learning, the method aims to reduce costs by extending the interval between DGA analyses. Decisions are informed by classification probabilities that consider both risk avoidance and cost reduction. Trends in classification probabilities over the next 1 to 5 years assist in making appropriate decisions regarding the extension of DGA intervals.

報告書年度

2024

発行年月

2024/06

報告者

担当氏名所属

服部 俊一

グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門

宮嵜 悟

グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門

水谷 嘉伸

グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門

本間 大成

グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門

三国 康佑

グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門

村田 博士

グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門

キーワード

和文英文
油入変圧器 Oil-immersed power transformer
油中ガス分析 Dissolved gas analysis
異常検出 Fault detection
機械学習 Machine learning
ランダムフォレスト Random Forest
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry