電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
GD23030
タイトル(和文)
新型落雷位置標定システムLENTRAの開発および東京スカイツリーへの落雷を用いた推定性能の評価
タイトル(英文)
Development of newly designed LLS LENTRA and its evaluation results with lightnings hitting Tokyo Skytree
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
落雷位置標定システム(Lightning Location System : LLS)は、送配電線への落雷時の点検箇所や点検要否判断、設備の保守点検に活用されている。今後、保守点検の合理化等にLLSを活用していくためには、落雷位置標定や電流波高値推定の精度向上、電荷量や電流峻度の推定機能の追加等、LLSのさらなる性能向上が求められている注1)。そこで、当所では、これらの課題を解決する新型のLLSとして、LENTRA( Lightning parameters Estimation Network for Total Risk Assessment)の開発を進めてきた[1][2]。これまでにLENTRAの観測子局を製作して3箇所に設置し、実雷の観測結果を用いた検証を通して、落雷位置標定の精度向上、電荷量や電流峻度の推定が実現可能との見込みを得た。開発の次の段階として、観測子局の増設によるLENTRA観測ネットワークの拡大と、その推定性能の評価が必要である。
目 的
LENTRAの観測子局を追加し、夏・冬季雷を対象とした広範囲の観測システムを構築する。また、東京スカイツリーへの落雷データ(夏季雷)を用いて、LENTRAによる落雷位置・雷パラメータ(電荷量、電流波高値、電流峻度)の推定精度を評価する。
主な成果
1. LENTRAの観測システムの構築
LENTRAは落雷時の電界波形を観測し、雲放電か対地放電注2)かを判別したのち、落雷位置、時刻、極性、電荷量、電流波高値、電流峻度の推定を行う。観測子局を図1に示す計20箇所へ設置し、LENTRAの観測システムを構築した。本システムでは、観測した電界波形データを観測子局に蓄積するとともに、当所に設置の計算サーバに転送し、推定データを落雷時刻の5~10分後に出力する。
2. LENTRAの落雷位置・雷パラメータ推定の精度評価
東京スカイツリーへの落雷データ(第一雷撃3例、後続雷撃13例)を用いて、ロゴスキーコイルでの電流観測結果から得られる雷パラメータとLENTRAによる推定結果の比較を行った。その結果、落雷位置標定の誤差の中央値は第一雷撃で229 m、後続雷撃で40 m、落雷全体では41 mであった注3)(図2)。この結果は開発目標を十分に満たしていると言える(表1)。また、電荷量は、環境ノイズに影響を受けやすい小電荷量の領域にも関わらず-20~+30%の誤差で推定することができた(図3)。さらに、電流波高値と電流峻度の推定誤差は、開発目標値に向けて精度向上の必要があるが、上向き雷に伴う後続雷撃を除いて注4)それぞれ±25%、-50~+30 %の範囲であった(表1)。
注1)落雷位置の標定誤差が数百 mであり、設備被害を及ぼす落雷の判別に必要な電荷量の推定機能がない。また、電流波高値は推定精度の検討が不十分であり、電流峻度は推定機能がないといった課題がある。
注2)雲の中、雲と雲の間で発生する雲放電と異なり、雲と地上の間で発生する落雷。
注3)第一雷撃の誤差が大きい原因は、落雷時に東京スカイツリーから数百m伸びる長い上向きのリーダにより雷撃の結合点が塔頂からずれるためと考えられる。この影響を除して考えた場合、結果より位置標定の誤差は小さい。なお、通常の構造物への雷撃では上向きリーダの長さは数m~数十m程度であるため、この影響はわずかである。
注4)上向き雷に伴う後続雷撃は雷道が下向き雷よりも屈曲するため、電磁界波形が変化し誤差が大きくなる傾向にある。
関連報告書:
[1] H19005「新型落雷位置標定システム(新型LLS) の開発(1) -新型LLS実証機の開発と初期観測結果-」(2020.05)
[2]H20008 「新型落雷位置標定システム(新型LLS)の開発(2)-数値電磁界解析を用いたアンテナ感度の校正法の検討および電流パラメータ推定機能の実装-」(2021.06)
概要 (英文)
Currently, Lightning Location Systems (LLS) are under operation by each electric power company in Japan for use in maintenance and inspection after the lightning strikes. However, location error range by LLS is up to several hundreds of meters and lightning charge estimation is not available which required for identifications of high-risk lightning. Therefore, advanced LLS, which can locate striking points within errors of several tens of meters and estimates lightning transferred charge, is required for labor saving, and developed in the previous research report. This advanced LLS is called LENTRA (Lightning parameters Estimation Network for Total Risk Assessment).
In this report, latest overview of the LENTRA system and latest evaluation results of lightning stroke locations, transferred charge estimation, lightning peak current and lightning current steepness are reported. Evaluations were made by comparing the measurement results by Rogowski coil installed at the Tokyo Skytree.
報告書年度
2023
発行年月
2024/06
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
工藤 亜美 |
グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門 |
共 |
齋藤 幹久 |
グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門 |
共 |
三木 貫 |
グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
落雷位置標定システム | Lightning Location System |
落雷位置標定 | Lightning location |
電荷量 | Estimated charge transfer |
電流波高値 | Peak current |
電流峻度 | Current steepness |