電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
GD23029
タイトル(和文)
広域での水素導管敷設によるガス需要の水素転換ポテンシャルの推定―愛知県の製造業を対象とした試算―
タイトル(英文)
Potential for hydrogen conversion of gas demand by laying hydrogen pipelines -Targeting the manufacturing industry in Aichi Prefecture-
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
カーボンニュートラル実現に向け、水素の利用が期待されている。水素は配管供給以外の輸送コストが高いことから、都市ガスと同じく配管供給が有望である。都市ガス導管への水素混合あるいは水素配管の敷設の方式が考えられるが、湾岸地帯等、特に需要が多い地域では、水素配管の敷設による水素供給の可能性がある。
目 的
水素導管の敷設によるガス需要の水素転換の可能量(以下、水素需要ポテンシャルと呼ぶ)を試算する手法を開発するとともに、開発手法を愛知県に適用し、水素需要ポテンシャルを試算する。
主な成果
1.水素需要ポテンシャル試算手法の開発
特定地域の水素需要ポテンシャルを試算する手法を考案した。開発手法ではまず、公開情報を元にガス需要量の地理的分布を推定する(図1)。次に、推定したガス需要量を参考にユーザが設定した水素導管の敷設シナリオを元に、水素需要ポテンシャルを試算する(図2)。本手法の特徴は以下の通りである。
• ガス供給会社が公表する地図画像及び経済センサス等の公開情報のみを用いる
• 町丁字別の需要推定に基づく解像度の高い試算が可能
2.愛知県を対象とした製造業の水素需要ポテンシャルの試算
愛知県内の全町丁字を対象に製造業のガス需要量を推定し(図3)、この結果と水素(アンモニア)の重要消費拠点かつ供給拠点と想定した石炭火力発電所の位置を元に3つの水素導管敷設シナリオ注1)(表1)を想定して水素需要ポテンシャルを試算した。
• 112kmの水素導管を敷設することで、碧南火力発電所+上位10位までの町丁字を全て網羅することが可能である(図4)。
• 供給エリアの設定パラメータとして水素導管からの並行距離注2)を250~2,000mに変化させ感度分析した(図5)。ベース+内陸延伸+渥美延伸ルートで導管から2,000mを供給エリアとした場合の水素需要ポテンシャルは約20,800TJ/年(16.2億Nm3/年)であり、これは愛知県内の製造業のガス需要量の35.5%を占める。
今後の展開
全国の多消費都道府県への展開、また水素供給の経済性評価や、コスト最適な敷設ルートの構築を行う。
注1)本シナリオでは、導管を公道の下に敷設する等の制約は考慮しておらず、単純な直線で想定している。
注2)水素導管からの並行距離範囲内にある町丁字(一部でも範囲内に位置する町丁字を含む)の製造業ガス需要を水素需要ポテンシャルと見なした。
概要 (英文)
In this study, the geographical distribution of gas demand in Aichi Prefecture, which ranks first in Japan in terms of gas demand from the manufacturing industry, was determined, and hydrogen demand potential was estimated based on an assumed scenario for the installation of hydrogen pipelines.
The main results are as follows:
1) Development of calculation method of potential for hydrogen demand
The calculation method for hydrogen demand was developed that estimates the geographic distribution of gasdemand for all towns inside specific area and calculate hydrogen potential based on the user's pipeline lying scenario.
2) Estimation of Potential for hydrogen demand in Aichi prefecture
The hydrogen potential was estimated for Aichi prefecture using the method obatained in 1). The scenario is based on the gas demand for each town in Aichi prefecture and the location of the thermal power plants, which were assumed to be hydrogen supply and consumption centers.
報告書年度
2023
発行年月
2024/05
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
上野 剛 |
グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門 |
共 |
山本 博巳 |
グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
水素 | Hydrogen |
ポテンシャル評価 | Potential Evaluation |
都市ガス需要 | City Gas Demand |
統計データ | Statistical Data |
地理情報 | Geographic Information |