電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
GD23028
タイトル(和文)
多様な暖房環境を模擬可能な温熱快適性試験室の開発 その4 被験者実験プロトコルの構築と実験による課題抽出
タイトル(英文)
Development of a comfort test room that can simulate various thermal environments during heating Part 4 Construction of subject experimentation protocols and identification of issues through subject experimentation
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
カーボンニュートラルの対策の一つに、暖房電化が挙げられるが、持続可能な対策とするためには、快適性の維持向上が重要である。当所では、快適性を評価するため、上下温度ムラ等も含めた多様な暖房環境を再現する快適性試験室を構築している[1] [2] [3] 。本快適性試験室で評価を行うためには、在室時の試験住宅の暖房環境を、快適性試験室で再現し、人の生理心理量を計測する実験プロトコル(計画・手順)の構築が必要である。
目 的
在室時の試験住宅の暖房環境を快適性試験室において再現し、生理心理量を計測する被験者実験プロトコルを構築する。また、被験者実験の結果から、実験プロトコルおよび快適性試験室の課題抽出を行う。
主な成果
1. 被験者実験プロトコルの構築
試験住宅および試験住宅の暖房環境を再現した快適性試験室において、生理心理量を測定する被験者実験プロトコルを構築した。測定項目および測定手順等を表1に、実験風景と実験室概要を図1、2に示す。なお、再現元の試験住宅はエアコン22℃設定とした。
2.試験住宅および快適性試験室における被験者実験の実施
男性被験者8名を対象に、プロトコルに従って実験を行った。また実験では、2つの断熱性能の試験住宅(低断熱条件:等級2/高断熱条件:等級4)注1)の暖房環境を再現した。
(1)暖房環境(図3):高断熱条件では、試験住宅と快適性試験室の温度分布は一致した。一方、上下温度差が生じやすい低断熱条件では、快適性試験室の方が、椅座時の頭部、腹部周辺温度は低く、足元周辺温度は高くなり、各々、有意差が認められた(P<0.01)。
(2)生理量(血圧・心拍・皮膚温(図4)):いずれの断熱条件においても、試験住宅と快適性試験室は同様の傾向を示し、有意差は認められなかった。しかし低断熱条件では、快適性試験室の方が時間経過に伴い、足末梢部皮膚温が大きく低下する傾向にあった。
(3)心理量(温冷感・温熱快適感):いずれの断熱条件においても、試験住宅と快適性試験室の間に有意差は認められなかった。しかし、低断熱条件では、頭部、腹部周辺温度が低く、足元皮膚温の低下幅が大きい快適性試験室の方が、不快側評価となった。
以上より、高断熱条件では、試験住宅の暖房環境を再現できた。一方、低断熱条件では、被験者周辺温度の有意差や、温熱快適感等の差が見られ、再現性に課題が示された。
今後の展開
低断熱条件を中心に、実験プロトコル注2)および試験室の環境構築方法等の改良を行う。
注1) 地域区分6 地域の等級2(省エネ基準:S.55 年相当)と等級4(次世代省エネ基準:H.28 年相当)の断熱性能の試験住宅を対象。
注2) 本実験の実施時期が季節適応の過渡期である11 月であったこと、実験期間中の寒暖差が大きかったことが、生理心理評価に影響した可能性があり、実験実施時期の再検討が必要である。また暖房環境の構築に人が与えた影響度合を検証するため、被験者人数の増加も検討する。
関連報告書:
[1] C19007 多様な暖房環境を模擬可能な温熱快適性試験室の開発 その1 プロトタイプ構築と空気環境の評価(2020.5)
[2] C20012 多様な暖房環境を模擬可能な温熱快適性試験室の開発 その2 サーマルマネキンを用いた熱放射環境と空気環境の評価(2021.6)
[3] GD21004 建物内の多様な温熱環境を模擬可能な快適性試験室の開発 その3 エアコン暖房環境の再現手法と妥当性の検証(2022.7)
概要 (英文)
We have constructed a comfort test capable of evaluating vertical temperature differences and window and wall temperature non-uniformity. The test room can simulate the thermal environment of a test house with different insulation level. In this report, we developed an experimental protocol for subjects in the laboratory. In addition, the experimental protocols and laboratory issues were extracted through the results of the experiments.
In the result, the heating environment of the highly insulated test house was generally reproducible in the test room. On the other hand, significant differences were found between the heating environment of the test house and that of the test room for the low-insulation condition. No significant differences were found between the test house and the test room in the subjects' physiological and psychological responses. However, the range of decrease in peripheral skin temperature in the test room was greater than that in the test house, indicating a tendency for reproducibility to decrease under low thermal insulation conditions.
報告書年度
2023
発行年月
2024/06
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
安岡 絢子 |
グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門 |
共 |
安田 昇平 |
グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門 |
共 |
上野 剛 |
グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門 |
共 |
宮永 俊之 |
グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門 |
キーワード
和文 | 英文 |
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暖房環境 | Thermal environment during heating |
熱放射環境 | Thermal radiant environment |
空気環境 | Airflow environment |
被験者実験 | Subject experiment |
生理心理評価 | Physiological psychological response |