電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
GD23027
タイトル(和文)
エネルギーの途絶・供給制約に対する事業所のレジリエンスの調査ー全国の事業所を対象としたアンケート調査結果ー
タイトル(英文)
Resilience of business sectors against disruptions and constraints of energy supply -A nationwide questionnaire survey in Japan-
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
再生可能エネルギーの主力電源化に向け、再エネ等の分散型電源を有効活用して地域の電力需要を賄う地域グリッドの検討が進んでいる。地域グリッドは地域の災害レジリエンスを高める手段としても期待されており、これを実現するためには災害時における地域の電力需要を想定し、設備設計や非常時における運用の優先順位へ反映する必要がある。
目 的
産業・業務部門における災害時の電力需要評価手法を構築するため、①ライフラインの途絶・供給制約下におけるレジリエンス(操業水準への影響)、②発災後の突発的な節電要請への対応の実態、③将来のエネルギー利用に関する意向を把握する。
主な成果
全国の事業所を対象としたアンケート調査(期間:2023 年1 月下旬~2 月、回収数:1,843 件)を実施し、単純集計結果から以下の点を明らかとした。
①ライフラインの途絶・供給制約下におけるレジリエンス
・電力、水道、ガスの途絶による事業への影響度を“ライフラインレジリエンス係数(RF)注)”として推計した(図1)。各途絶パターン間の分布は既往調査[1]-[4]と整合的であったが、途絶による影響がより大きいことを示す結果となった。
・従来のRF を拡張し、電力の使用量制約に対する事業への影響度を調査した(図2)。約9割の事業所が操業水準を低下させずに達成できる節電水準を「10%以下」と回答し、節電可能水準を超えた場合に制約量に応じた事業の継続(部分操業)が可能と回答した事業所は7 割弱であった。
②発災後の突発的な節電要請への対応の実態
・災害発生に起因した過去の節電要請に特別な対応を行った事業所は3~4 割で、従業員規模の大きい事業所ほど協力率が高く、また以前の節電要請に対して協力経験のある事業所ほど協力する傾向にあった。達成した削減率は、8~9 割の事業所で10%以下であった(図3)。
③将来のエネルギー利用に関する意向
・電力の使用やエネルギー対策への取り組みに関して、2010 年度~2040 年度の実績・目標を調査した。7 割の事業所で再エネ発電設備、蓄電池・電動車のいずれかを導入する意向があり(図4)、電力の供給支障に対するレジリエンスや節電ポテンシャルの向上が期待される。
注)レジリエンス係数とは0~1 の値をとる指標であり、平常時の生産量・サービス供給水準を1 とし、事業活動が全くできない状態を0 と定義したもの。
今後の展開
調査結果の統計的分析及びモデル化を行い、既存の被害・復旧予測モデルと統合することで、災害時の電力需要評価手法を構築する。
[1] Applied Technology Council (ATC): Seismic Vulnerability and Impact of Disruption of Lifelines in the Conterminous United States, ATC-25, Redwood City, CA, 1991.
[2] Kajitani & Tatano: Estimation of Lifeline Resilience Factors Based on Surveys of Japanese Industries, Earthquake Spectra, Vol.25, No.4, pp.755-776, 2009.
[3] 大束ら:ライフラインの途絶に備えた対策がもたらす地域のレジリエンス向上効果の評価手法の提案 地域レベルのエネルギーシステムによるレジリエンス向上効果の貨幣価値評価, 日本建築学会環境系論文集, Vol.82, No.735, pp.471-479, 2017.
[4] Liu et al.: Estimating Lifeline Resilience Factors using Post-Disaster Business Recovery Data, Earthquake Spectra, Vol.37, No.2, pp.567-586, 2021.
概要 (英文)
This report summarized the results of questionnaire survey in Japan conducted in January-February 2023 to understand the resilience of business sectors against disruptions and constraints of energy supply, especially electricity. According to the responses from more than 1,800 firms, we obtained the followings findings.
(i) The impact on business due to disruption of electricity, water, and gas was estimated as the "lifeline resilience factor (RF)." The values of RF are smaller than those of previous studies, which suggests the possibility that business continuity has become more vulnerable. (ii) 30-40% of firms cooperated with post-disaster power saving requests, and 80-90% of them achieved a reduction rate of 10% or less. (iii) 70% of firms plan to introduce either renewable energy generation equipment, storage batteries, or electric vehicles by FY2030, and it is expected that those firms will be able to increase their resilience to power disruptions and the potential for cooperation in power saving requests.
報告書年度
2023
発行年月
2024/05
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
湯山 安由美 |
サステナブルシステム研究本部 構造・耐震工学研究部門 |
共 |
梶谷 義雄 |
香川大学 |
共 |
上野 剛 |
グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門 |
共 |
高橋 雅仁 |
グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門 |
共 |
安岡 絢子 |
グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門 |
共 |
安田 昇平 |
グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門 |
共 |
我部山 喜弘 |
香川大学 |
共 |
石川 智已 |
サステナブルシステム研究本部 構造・耐震工学研究部門 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
産業・業務部門 | Business sector |
レジリエンス | Resilience |
エネルギー途絶 | Energy disruption |
節電行動 | Power saving |
自然災害 | Natural disaster |