電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
GD23026
タイトル(和文)
住宅のエネルギーに関するレジリエンス性向上のための調査-在宅介護における長期停電時の困りごと調査と介護機器への給電に関する現状と課題の把握-
タイトル(英文)
Research to improve the energy resilience of homes - Survey on Problems in Long-Term Power Outages in Home Care and understanding the current situation and issues related to supplying power to nursing care equipment -
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
当所では、住宅のエネルギーに関するレジリエンス性向上に資するため、長期停電時に優先的に使用したい家電機器等(以下、困りごと)について、調査を行っている[1]。調査の結果、家庭の特性が困りごとに影響し、特に在宅介護で使用される介護機器は、停電によって使用不可となった場合の深刻度が高い可能性が示唆された。
目 的
在宅介護における介護機器の使用実態や長期停電の影響、介護者の停電時サポートの認識等について、インタビュー調査を実施する。また、長期停電時に介護機器等に使用する給電機器注1)について文献等から調査を行い、課題を整理する。
主な成果
1.要介護度と介護機器の関係
5 名の家族介護者と介護職従事者を対象に、個別インタビューを実施した(表1)。要介護度が高い家庭ほど、電気を使用する介護機器の所持数が多く、人工呼吸器や吸引器といった生命に関わる機器の使用が見られた(図1)。また、要介護度が高い家庭では、長期停電時の困りごととして、介護機器に関する発言が多く聞かれ、介護機器への給電の必要性が高いと考えられる。
2.介護機器への給電可能時間の試算
要介護度が高い家庭は、ポータブル電源を保有しているものの、所持しているポータブル電源が、長期停電時に十分な容量か否かについて明確に把握していなかった。そこで、ポータブル電源による各種介護機器への給電可能時間を試算注2)した(表2)。常時稼働の介護機器は消費電力量が多く、ポータブル電源のみでは、短時間の給電で終わる可能性が高いといえる。介護機器への十分な給電や、家電機器と合わせて給電する可能性を考えると、ソーラパネル付きのポータブル電源や、EV 等の他の給電機器についての検討も必要である。
3.電力会社等の停電時サポート情報に対する介護者の認識
自治体や病院、一部の電力会社では、停電時サポートとして、介護機器用の小型発電機の貸出等を行っている(表3)。しかし介護者は、「自治体の支援は利用しづらい」、「電力会社のサポートは把握していない」など、サービスは行われているものの、活用につながっていない実情が窺えた。
以上のことから、在宅介護の世帯も含め、各家庭の特性に応じた災害対策情報を、適切に提供する仕組みが重要であることが示された。
注1)介護、家電機器に給電可能な機器のうち、本調査ではポータブル電源やEVを調査対象とした。
注2)ポータブル電源取扱メーカの製品、および「災害時における電動車から医療機器への給電活用マニュアル」を 参考に、人工呼吸器、酸素濃縮器、痰吸引器を使用した場合の日数を試算。なお定格消費電力での試算であり、条件によっては稼働しない場合もある。
関連報告書:
[1] GD21016 「住宅のエネルギーに関するレジリエンス性向上のための調査-自然災害による長期停電時の困りごとの把握-」(2022.6)
概要 (英文)
In this study we conducted an interview survey of households with persons requiring nursing care at home, who are particularly vulnerable in the event of a long-term power outage, regarding their actual use of electricity and nursing care equipment and their awareness of the problems during a power outage.
The higher the level of care needed, the higher the percentage of care equipment use with electricity, and the care equipment were cited as a problems in the event of the long-term power outage and had the portable power supplies. However, were not aware of whether they had sufficient equipment capacity of them. In addition, they were unaware of any assistance provided by the power company in the event of a power outage (i.e., loaning of the small generator).
It is important to disseminate information on the relationship between the how to use of caregiving and home appliance equipment, the capacity of the power-supply equipment, and the period of time the equipment can be used.
報告書年度
2023
発行年月
2024/05
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
安岡 絢子 |
グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門 |
共 |
上野 剛 |
グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門 |
共 |
宮永 俊之 |
グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
住宅レジリエンス性 | Resilience of homes |
長期停電 | Long-term power outage |
困りごと | Problem |
在宅介護 | Home-based care |
インタビュー | Interview |