電力中央研究所

報告書「電力中央研究所報告」は当研究所の研究成果を取りまとめた刊行物として、昭和28年より発行されております。 一部の報告書はPDF形式で全文をダウンロードすることができます。

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

GD23025

タイトル(和文)

絶縁電線の影響を考慮したがいしのフラッシオーバ発生率の評価

タイトル(英文)

Evaluation of the Flashover Rates of Insulators taking into account the Influence of the Insulation-covered Conductor

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
我が国の高圧配電線では,絶縁被覆を有する絶縁電線が用いられている。従来の雷事故率計算では,絶縁被覆にピンホール等が発生した場合の雷事故を想定し,絶縁被覆の影響を無視した検討がなされる場合が多い。一方で,実際の配電線では絶縁被覆にピンホール等がない場合においても雷事故が発生すると考えられ,絶縁被覆がある場合ではフラッシオーバ(以下,F.O.)電圧が上昇する注1)。しかしながら,雷サージ解析のためのがいしと絶縁電線の両方を考慮したF.O.モデル注2)については未だ十分な検討がなされていない。合理的な配電線の雷害対策の検討に向けた雷事故率評価手法の精緻化のためには,短波尾雷インパルス電圧注3)に対するがいしと絶縁電線から成る系のF.O.特性注4)を実験により明らかにし,実験結果を基にF.O.モデルを構築する必要がある。
目  的
がいしと絶縁電線の系のF.O.特性を実験により明らかにし,がいしと絶縁電線の両方を考慮したF.O.モデルを構築する。また,構築したモデルを用いて,絶縁電線ががいしのF.O.発生率に与える影響を評価する。
主な成果
1. 短波尾雷インパルス電圧に対するがいしと絶縁電線から成る系のF.O.特性
当所塩原実験場の12 MVインパルス発生装置を用いた実験系(図1)にて,配電線雷撃時にがいし間に発生する電圧波形を模擬した短波尾雷インパルス電圧に対するがいしと絶縁電線の系のF.O.特性を取得した。その結果,がいしと裸電線の場合と比較して,がいしと絶縁電線の場合のF.O.電圧は100 kV程度高くなることが分かった(図2)。
2. がいしと絶縁電線の系におけるF.O.発生率
上記で取得したF.O.特性を基に,がいしを積分法モデル,絶縁電線を一定電圧モデルで模擬したモデルの組合せにより,雷サージ解析のためのがいしと絶縁電線の両方を考慮したF.O.モデルを構築した(図2,図3)。さらに,構築したF.O.モデルを用いて落雷位置や雷電流波形にモンテカルロ法を適用した統計的評価により,避雷器の施設間隔(100 m,200 m,400 m)別に配電線のF.O.発生率注5)を計算した結果,がいしと裸電線の場合と比較して,がいしと絶縁電線の場合では F.O.発生率が最大で5割程度低下することが分かった(図4,図5)。

注1) 標準雷インパルス電圧に対する絶縁電線とがいしの組合せのF.O.モデルを検討したもの。参考文献:関岡昇三他,「絶縁電線とがいしの組み合わせにおけるフラッシオーバモデルの検討」,電気学会高電圧研資,HV-97-91 (1997)
注2) 配電線雷サージ解析に適用するがいしのF.Oモデルを指す。例として一定電圧モデルや積分法モデルが挙げられる。
注3) 標準雷インパルス電圧(波尾長50 µs)に対し,波尾が極めて短い特徴を有する雷インパルス電圧のこと。配電線への直撃雷発生時にがいし間に発生する電圧に近い。
注4) ここでは,F.O.特性としてV-t特性を取得した。
注5) 1年間に単位長さ(千km)当たりに発生するF.O.の回数をF.O.発生率[件/千km/年]と定義し,第一雷撃および後続雷撃のF.O.発生回数の和をF.O.発生率とした。

概要 (英文)

In Japanese distribution lines, insulation-covered phase conductor is generally used. Flashover characteristics of an insulator with the insulation-covered conductor are different from that with a bare conductor. However, flashover characteristics of an insulator with the insulation-covered conductor have not been well studied. To improve the accuracy of a lightning outage rate calculation method of medium-voltage distribution lines, it is important to develop an accurate flashover model of an insulator with insulation-covered conductor.
In this report, first, we experimentally examine the flashover characteristic of an insulator with a insulation-covered conductor against a short-wave-tail lightning impulse voltage. Next, we propose a flashover model of the insulator taking into account the influence of the insulation-covered conductor. Finally, we evaluate the influence of the insulation-covered conductor on the flashover rate of the insulator using the proposed flashover model.

報告書年度

2023

発行年月

2024/06

報告者

担当氏名所属

もくめ 将実

グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門

石本 和之

グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門

森 亮太

グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門

前田 智寛

グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門

キーワード

和文英文
配電線 Distribution lines
フラッシオーバ Flashover
がいし Insulator
絶縁電線 Insulation-covered conductor
短波尾雷インパルス電圧 Short-wave-tail lightning impulse voltage
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