電力中央研究所

報告書「電力中央研究所報告」は当研究所の研究成果を取りまとめた刊行物として、昭和28年より発行されております。 一部の報告書はPDF形式で全文をダウンロードすることができます。

※ PDFのファイルサイズが大きい場合には、ダウンロードに時間がかかる場合がございます。 ダウンロードは1回のクリックで開始しますので、ダウンロードが完了するまで、複数回のクリックはなさらないようご注意願います。

電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

GD23023

タイトル(和文)

電力系統の平衡事故を対象とした三相PVの特性把握および実効値解析用モデルの改良

タイトル(英文)

Characterizing of Three-Phase Photovoltaic Inverters for Balanced Fault and Improvement of Root-Mean-Square Model

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背 景
わが国では,太陽光発電(PV)を主とした再生可能エネルギー電源の主力電源化と系統安定性維持の両立が課題になると考えられ,メガソーラ等の三相PV 用PCS(以下,三相PV)の特性を考慮した系統解析とここで用いられるモデルへのニーズが高まっている注1)。これに対し,当所では三相PV の実機試験に基づき安定度解析向けの実効値解析用モデルを開発するとともに,代表メーカの2 機種についての実測を基にパラメータを同定してきた注2)。安定度解析の精度を向上させるためには,より多くの機種の特性を明らかにし,特性に応じたモデリングによって汎用性を向上させる必要がある。
目 的
主要メーカ製三相PVについて,より多くの機種の出力特性と安定度への影響を試験により把握する。また,これらの出力特性も模擬できるように既開発モデルを改良する。
主な成果
1. 三相PV の平衡事故時の出力特性の把握と安定度への影響の確認
計7 機種(国内A~F 社,国外G 社)の三相PV について,平衡事故(電圧低下)時の出力特性や復帰特性を整理した(図1,図2)。主な特徴は以下のとおりである。
・端子電圧が80%程度以上の場合は,全機種が共通して,有効電力一定制御により電流を増加させた(定電力特性または定電流特性注3-4)を示した)。
・端子電圧が80%程度を下回ると,機種により応動が異なり,①前述した特性を維持したもの,②端子電圧に比例して電流を減少させた(定インピーダンス特性を示した)もの,③端子電圧が閾値を下回るとステップ状に電流を減少させた(脱落特性を示した)もの,④端子電圧によらず初期電流値を維持した(定電流特性を示した)もの,の4 タイプが確認された。また,電圧回復後の復帰特性は機種により異なった。
・端子電圧が10%程度を下回ると,機種によっては一時的に電流供給を停止した。
図3 の試験系統を用いた実験により,前述した出力特性や復帰特性の違いが安定度の良し悪しに関わり,解析上の重要なファクターになることを確認した(図4)。
2. 三相PV の平衡事故時の出力特性を模擬可能とするための既開発モデルの改良
表1 のモデル要素を既開発モデルに組み込み,同定したパラメータを用いて,タイプ①に加えてタイプ②~④の各機種の応動を精度よく模擬できることを確認した(図5)。
注1) 現在,グリッドコードで系統解析用モデルに関する情報提供を要件化する方向で議論が進んでいる。
注2) H. Satoh, K. Yamashita, K. Shirasaki and Y. Kitauchi, "Root-mean Square Model of Three-Phase Photovoltaic Inverter for Unbalanced Fault," in IEEE Open Access Journal of Power and Energy(2020)。ここで,2 機種(後述するタイプ①)の平衡・不平衡事故時の応動を模擬できるモデルとそのパラメータを示している。なお,他機関が開発したモデル(WECC モデル等)もあるが,実機の応動を模擬するためには,別途,メーカからのパラメータ提供が必要となる。
注3) 系統電圧に対する需要側機器群の消費電力の変化の仕方(負荷の電圧特性)を指す表現で,電圧に依存しないものを定電力特性,電圧に比例するものを定電流特性,電圧の2 乗に比例するものを定インピーダンス特性と呼ぶ。ここでは,三相PV(発電設備)をマイナスの負荷として,同表現を用いていることに留意されたい。
注 4) 初期電流値が大きく電圧低下時に定格電流リミッタ(定格電流の1~1.2 倍程度)に達する場合,定電流特性となる。

概要 (英文)

In Japan, it is important to realize decarbonization by integrating renewable energy sources, mainly photovoltaic (PV), and maintain power system stability. As three-phase PV inverters, such as large-scale PV power plants, are expected to be introduced significantly, there is a growing need for power system stability analysis that considers the characteristics of three-phase PVs. In response to this need, the authors have developed a root-mean-square model based on the characteristics of three-phase PVs obtained from laboratory tests using CRIEPI's power system simulator. To utilize the developed model, it is necessary to clarify the characteristics of three-phase PVs of various manufacturers introduced in Japan and their influence on transient stability and to extend the functionality of the developed model according to the characteristics of each manufacturer.
Therefore, through additional lab tests, the authors analyzed and organized the characteristics of commercial three-phase PV from multiple manufacturers and clarified that the response of three-phase PVs, such as current and active power, to various voltage sag following balanced fault can be classified into four types. Furthermore, by extending the functions of the previously developed model based on the test results, a new three-phase PV model that can accurately simulate the response of each type of three-phase PV was developed. This report provides model blocks and parameter sets that can represent the characteristics of three-phase PV from multiple manufacturers and is expected to contribute to more appropriate power system stability analysis considering the actual characteristics of three-phase PV.

報告書年度

2023

発行年月

2024/06

報告者

担当氏名所属

佐藤 勇人

グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門

増田 宗紀

グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門

キーワード

和文英文
系統解析 Power system analysis
安定度 Transient stability
三相PV Three-phase PV inverter
実効値解析用モデル Root-mean-square model
平衡事故 Balanced fault
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry