電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
GD23022
タイトル(和文)
送電線における多相雷事故率の評価手法の開発(その2)-酸化亜鉛型避雷アークホーンと棒-棒の並列ギャップの放電進展特性と多相フラッシオーバ判定手法の提案-
タイトル(英文)
Development of evaluation method for multi-phase fault rate of transmission line (Part 2) - Proposal of concurrent flashover model based on discharge propagation characteristics in EGLA/Rod-Rod parallel electrode configuration -
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
送電線の多相雷事故は供給支障に至る可能性のある重大な事故であるため,多相雷事故率の評価は耐雷設計上重要である。当所開発のLORP注1)における多相雷事故率計算では,各相のアークホーン(AH)間に発生する雷過電圧の波高値を基に事故相数を決定する。そのため当所では2相のAHのフラッシオーバ(FO)を模擬したインパルス実験より,2つ並列配置したギャップが同時FOする条件を,印加電圧の波高値とギャップ長の観点から明らかにしてきた[1]。さらなる多相雷事故の判定精度の向上を図るためには,各相のAH間に発生する雷過電圧の波高値だけでなく,瞬時値解析から算出される雷過電圧の波形を考慮する必要がある注2)。
目 的
近年適用が進む酸化亜鉛型避雷アークホーン(避雷AH)とAHの並列ギャップが同時FOするときの放電進展過程を明らかにするとともに,数μsの雷過電圧波形の時間変化に対応した多相FOの判定手法を提案する。
主な成果
66/77および154 kV送電線を対象に,避雷AHとAHを模擬した棒-棒の並列ギャップに短波尾雷インパルス電圧(短波尾LI)注3)を印加して,2相FOの模擬実験を行った(図1(a))。ここで,送電線の相間または回線間の交流対地電圧の瞬時値の差を模擬するため,棒-棒ギャップには予めDC電圧を印加している注4)。本実験では1回の短波尾LIの印加に対して,最初のFOを第1FO,その後発生するFOを第2FOと定義した(図1(b))。
1. 避雷AH/棒-棒の並列ギャップの放電進展過程
避雷AHの直列ギャップと棒-棒ギャップがFOするまでのリーダ進展を測定した(図2)。短波尾LIの印加で直列ギャップと棒-棒ギャップの両方でリーダが進展するが,ギャップ長の短い直列ギャップが第1FOすると,棒-棒ギャップのリーダ進展が一度停止する。しかし数μs後に,棒-棒ギャップの中央付近から再び放電の発光が進展して,第2FOが発生することがわかった。
2. 避雷AH/棒-棒の並列ギャップの同時FO特性に基づく多相FOの判定手法の提案
第1FO後に棒-棒ギャップでリーダが進展していないギャップ長をXRと定義し,XRの平均電界を第1FOと第2FOの時間差で整理した(図3(a))。この結果,XRの平均電界が高いほど,第1FOと第2FOの時間差が短くなることがわかった。これらの同時FO特性より,第1FO後に棒-棒ギャップの中央付近から再び放電の発光が進展して第2FOに至る現象が,微弱な発光のストリーマ進展によるものと仮定し,ストリーマの進展長とXRの対比から多相FOを判定するモデルを提案した(図3(b))。モデルの計算フローの過程で導出される多相FOの時間差の結果は,2相FOの模擬実験の結果と概ね一致し(図3(a)),提案するモデルの妥当性を示した。これにより,各相のAH間の雷過電圧波形の瞬時値解析と提案するモデルを組合わせることで,詳細な多相FOの判定ができる見通しを得た。
注1)Lightning Outage Rate Program:送電線雷事故率予測計算プログラム
注2)現状のLORPは,鉄塔電位上昇法で計算した各相のAH間に発生する雷過電圧の波高値からAHのFO判定を行っており,瞬時値解析に対応していない。
注3)塔頂雷撃時にAHのギャップ間に発生する雷過電圧は,塔脚からの雷サージの負反射により,波尾長が数μs程度の短波尾雷インパルス(LI)電圧波形となる。(参考文献:青島 他,電気学会論文誌B,Vol.109,No.3,pp.135-142,1989)
注4)短波尾LI波形(1.8 / 5.5 μs)に比べ,送電線の交流波形の変化は数msと十分に緩やかである。したがって,DC電圧を片側のギャップに予め印加し,送電線の相間または回線間の交流対地電圧の瞬時値の差を模擬した。
注5)ギャップ間を進展する放電発光の時間推移を,連続的に1つの図で示したもの。
関連報告書:
[1]GD21021「送電線における多相雷事故率の評価手法の開発-交流位相差を考慮した2並列気中ギャップの同時フラッシオーバ特性-」(2022.06)
概要 (英文)
Multi-phase back-flashover phenomena are significant lightning accidents for overhead transmission lines, leading to double-circuit faults and interruptions of the power supply. In Japan, externally gapped line arresters (EGLA) have been applied mainly to overhead transmission lines below 154 kV class for several tens of years, which have excellent features to improve lightning protection performance. On the other hand, the conditions of multi-phase back-flashover occurrence for overhead transmission lines with EGLA applications have not yet been clarified quantitatively. In this report, the concurrent flashover characteristics are investigated experimentally by using the EGLA/Rod-Rod parallel electrode configuration under lightning impulse voltage. The discharge propagation characteristics are discussed based on the discharge observation results in the series air gap of EGLA and the Rod-Rod gap set to the gap length used in actual 66/77 or 154 kV overhead transmission lines in Japan. In addition, the concurrent flashover model is proposed assuming streamer-type discharge propagation based on the experimental results and several references. As a result, both the experimental and calculated values show almost good agreement. This means that the concurrent flashover characteristics could be determined by the leader discharge and the streamer-type discharge propagation in the EGLA / Rod-Rod parallel electrode configuration.
報告書年度
2023
発行年月
2024/05
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
中根 龍一 |
グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門 |
共 |
三木 貫 |
グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門 |
共 |
三木 恵 |
グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
雷 | Lightning |
架空送電線 | Overhead transmission lines |
多相逆フラッシオーバ | Multi-phase back-flashover |
アークホーン | Arcing horns |
ギャップ付き送電用避雷装置 | Externally gapped line arresters |