電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

GD23020

タイトル(和文)

運転中部分放電診断を活用した水車発電機固定子巻線の管理手法の提案

タイトル(英文)

Proposal of Management Method for Stator Winding of Hydropower Generator by On-line Partial-discharge Diagnosis

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背 景
運転時の水車発電機固定子巻線(以下,固定子巻線)から生じる部分放電信号を監視する運転中部分放電診断は,課電装置が不要で,部分放電信号の監視頻度を自由に設定できるため個々の固定子巻線の経年劣化注1)傾向の把握や巻線異常注1)の早期発見が期待できる。このため,海外ではすでに運転中部分放電診断の導入実績があり,固定子巻線の状態監視が行われているが,固定子巻線の経年劣化による寿命推定は行われていない注2)。一方,国内旧一般電気事業者では停止中絶縁劣化診断に基づく寿命推定法注3)(従来の寿命推定法)を用いた固定子巻線の管理が一般的であり,運転中部分放電診断の導入実績は少なく,その適用可能性は明らかではない。また,その導入に当たっては,従来の寿命推定法を取り込んだ,運転中部分放電診断に基づく固定子巻線の管理手法が求められる。

目 的
固定子巻線への運転中部分放電診断の適用に向けた課題を整理しその解決を図り,運転中部分放電診断による固定子巻線の管理手法を提案する。

主な成果
1. 固定子巻線への運転中部分放電診断の適用に向けた課題とその対応 固定子巻線への運転中部分放電診断の適用に向けた課題を整理し,その対応を検討した(表1)。いずれの課題も運転中部分放電診断の適用を阻害するものではなく,固定子巻線に運転中部分放電診断が適用可能であることを明らかにした。
2. 運転中部分放電診断を活用した固定子巻線の管理手法の提案 表1 に示した課題への対応結果を踏まえ,ノイズレベルが小さく固定子巻線の劣化推移を評価可能な高周波帯域(350kHz 帯域以上)と固定子巻線の絶縁耐力の推定が可能な低周波帯域(100kHz 帯域)注4)を組み合わせた運転中部分放電診断手法を提案した(図1 の左図)。運転中部分放電診断による部分放電電荷量から破壊電圧を推定することで,従来の寿命推定法と同様の寿命推定が可能である。加えて,運転中部分放電診断では,個々の固定子巻線のトレンド管理により,経年劣化傾向を把握することで,固定子巻線の寿命を延伸できる可能性があるため,更新計画の合理化が期待できる(図1 の右図)。

注1) 劣化は通常運転により経時的に絶縁性能が低下する現象であり,巻線絶縁内部のボイド成長による絶縁性能低下がそれに相当する。異常は全ての巻線で発生するとは限らず突発的に発生する事象であり,例えば,コイル表面摩耗,鉄心のケイ素鋼板のずれ(鉄心ずれ),鉄心過熱,及びコイルエンド部汚損等がある。
注2) 運転中部分放電診断でもっとも実績があるIRIS POWER 社では,運転中の部分放電データを長年に亘り蓄積しており,蓄積した部分放電データを放電の大きさから5 段階に分類し,現状の運転中発電機の固定子巻線がどの段階にあるかのみに注目しており,寿命推定は行っていない。一方,国内では発電設備のオーバーホールの時期まで固定子巻線の寿命推定により発電機が運転可能であるという見極めが重要視される。
注3) 停止中絶縁劣化診断では発電機を電力系統から切り離した状態で課電装置により固定子巻線に高電圧を印加し固定子巻線の劣化状態を診断する。その診断結果から絶縁破壊電圧を推定し,さらに絶縁破壊電圧の経年低下特性モデル(共通モデル)を用いてその診断年からの経時推移を予測する。なお,絶縁耐力が低下し,2E+1(E は定格電圧)で寿命と判断する。
注4) 巻線の絶縁耐力を推定する根拠となる巻線の部分放電と絶縁耐力との相関関係データは100kHz 帯域での測定データであるため,この相関関係データを利用し絶縁耐力を推定するには運転中部分放電診断においても100kHz 帯域で測定する必要がある。

関連報告書:
[1] GD22031 「水車発電機固定子巻線の運転中部分放電診断の妥当性評価―雷サージ侵入時の電位分布と部分放電伝搬特性―」(2023)
[2] GD21034 「水車発電機固定子巻線の保守点検への機械学習手法の導入に向けた基礎検討―固定子巻線異常判定のためのデータベースの構築―」(2022)

概要 (英文)

In diagnostics of insulation degradation of stator winding of hydro generator, a high voltage (HV) is applied to the stator winding by HV applying device while the generator is disconnected from the power system to diagnose the degradation state of the stator winding. A method for estimating dielectric strength from the result of the off-line diagnosis is in practical use. On the other hand, on-line partial discharge (PD) diagnostics, which measures and evaluates the PD generated from the stator winding in service, does not require HV applying device and allows the frequency of measurement to be set freely, making it possible to determine the deterioration trend of winding and to expect early detection of winding faults. However, on-line PD diagnostics have not been utilized for stator windings of hydro generator in electric companies. Therefore, we examine the applicability of on-line PD diagnostics and propose management method for stator winding of hydropower generator by on-line PD diagnostics.

報告書年度

2023

発行年月

2024/07

報告者

担当氏名所属

倉石 隆志

グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門

宮嵜 悟

グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門

キーワード

和文英文
水力発電機 Hydro Generator
固定子巻線 Stator Winding
運転中部分放電診断 On-line Partial-discharge Diagnostics
部分放電 Partial Discharge
結合コンデンサ Coupling Capacitor
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