電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

GD23016

タイトル(和文)

インバータ連系電源の導入拡大が系統保護に及ぼす影響-距離リレーの演算に与える影響の解析-

タイトル(英文)

Impacts of Large-scale Penetration of Inverter-Based Resources on Protection Relays - Analysis of Impact on Distance Relays -

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
インバータ連系電源(IBR:Inverter-Based Resources)の導入拡大により同期機比率が低下し,事故電流の減少が懸念されている。現状の保護リレーは同期機からの事故電流を基に設計されているため,保護リレーの動作に影響を与える可能性がある。一方で国内に導入されているIBRに関して,事故時に供給する電流(事故時供給電流)の特性やIBRが保護リレーの演算に与える影響は十分に解明されていない。

目  的
電力系統シミュレータ設備で多機種のIBRの事故時供給電流を把握し,それらが距離リレーの演算に与える影響を明らかにする。

主な成果
1. 7機種のIBRの事故時供給電流の把握
三相短絡や二相短絡を模擬した電圧ステップ変動の試験から,事故時供給電流は以下のように機種ごとに異なることを明らかにした。
・電流の大きさが,事故前と比較して増加注1),減少,一定に維持する機種がある。また,その増加減速度は機種によって異なる(図1(a))。
・事故中に一定時間だけ無効電流(遅れ)注2)を供給する機種がある(図1(b))。
・二相短絡時に,三相平衡電流(正相電圧基準,線間電圧基準注1))を供給する機種と三相不平衡電流を供給する機種がある(図2)。
・力率一定運転の場合,事故中に設定力率を維持する機種や無効電流のみを供給する機種がある。
2. IBRの事故時供給電流が距離リレーの演算に与える影響
IBRが送電線の分岐に接続された系統(図3)注3)における距離リレーの演算に与える影響を,実験データを用いて解析した。系統側の事故相の距離リレーが計算するリアクタンスがオーバーリーチ傾向注4)となるケース,アンダーリーチ傾向注4)となるケース,変化しないケースがあり,分岐に接続されるIBRによって保護リレーに与える影響が異なることを明らかにした(図4)。これらの影響の定量的評価には,「IBRからの事故時供給電流」の大きさや位相が重要であるため,系統連系時に情報提供が望まれる(図5)。

注1) 「会田. インバータ連系電源の大量導入時の系統保護に関する基礎検討-故障計算用インバータ連系電源モデルの開発-. 電力中央研究所報告 R20001. 2021.」に2機種の供給電流特性が示されている。これらのIBRは電圧低下時に電流リミッタまで電流が増加し,不平衡事故時に線間電圧基準の三相平衡電流を供給する。
注2) 電圧に対して同相成分の電流を有効電流,直交成分の電流を無効電流という。また,電圧に対して電流が進んでいる場合は無効電流(進み),遅れている場合は無効電流(遅れ)と表現する。
注3) 抵抗接地系統や非接地系統を想定した試験系統である。
注4) 実際の事故点までの距離より,距離リレーが演算するリアクタンスが大きい場合はアンダーリーチ傾向,小さい場合はオーバーリーチ傾向という。

概要 (英文)

In recent years, solar power generation and wind power generation within the electrical power system have expanded significantly. Further introduction of solar and wind power generation is anticipated towards achieving carbon neutrality in 2050. The expansion of Inverter-Based Resources (IBR) such as solar power generation and wind power generation leads to a decrease in the proportion of synchronous machines. Consequently, the expansion of IBRs has raised concerns regarding the reduction in short-circuit capacity within the electrical power system. In power systems with low short-circuit capacity, there is a risk of maloperation of protection relays due to the current supplied by IBR during fault conditions. On the other hand, the characteristics of the current supplied by IBR during system faults have not been sufficiently clarified. Therefore, this paper clarifies the characteristics of the current supplied by IBR during faults. Furthermore, this paper elucidates the impact of the current supplied by IBR during faults on the operation of distance relays.

報告書年度

2023

発行年月

2024/05

報告者

担当氏名所属

会田 峻介

グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門

山岡 史周

グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門

キーワード

和文英文
インバータ連系電源 Inverter-Based Resources
系統事故 System Fault
距離リレー Distance Relay
保護リレー Protection Relay
電力系統 Electric Power System
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry