電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
GD23014
タイトル(和文)
マイクログリッド設計最適化手法の開発-コスト・環境・レジリエンスを考慮した事業採算性の計算手法-
タイトル(英文)
Development of a design optimization method for microgrids - A method for calculating business profitability with cost, environment and resilience taken into account -
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背景
電力インフラのレジリエンス強化およびカーボンニュートラル実現の手段として、地域の分散型エネルギー資源 (DER) を活用するマイクログリッド1)が期待され、各種の実証事業が行われている。今後、マイクログリッドを持続可能な事業として成立させるには、導入設備の最適な容量や事業全体の採算性を適切に見積もることが重要である。
目的
マイクログリッド事業の採算性を見積もるための第一歩として、マイクログリッド導入地域の需要や日射量、導入予定設備の諸元をもとに、 DER の最適容量や事業性を試算する手法を開発する。
主な成果
1. マイクログリッド設計最適化手法の開発
コスト、環境性2)、レジリエンス性3)の3つの指標に基づき、マイクログリッドの事業性などを試算する最適化手法を開発した (図1)。
・需要や日射量、導入予定の太陽光発電設備や蓄電池等の諸元を入力とする。
・3つの指標を最適に満たす設備容量と、運開後複数年にわたる採算性を計算する。
・3つの指標間にはトレードオフがあるため、コスト最重要視など、解析者の選好に応じた解を選択することができる。
2. 沖縄地方を対象にした開発手法による試算
沖縄地方の需要、日射量、設備の諸元をもとに模擬データを作成して開発手法に入力し、上記3指標の選好度合いに応じたパレート最適解4)の集合をサンプル的に求めた (図2)。分析例を以下に示す。
・3指標のバランスを重視した「バランス重視ケース」と、環境性を重視した「環境重視ケース」について、最適設備容量や収益等を表1に示す。環境重視ケースはバランス重視ケースと比べ、太陽光発電設備の容量が1.6倍に増え、CO2 発生量が2割減る。
・二つのケースにおける需要・発電量等の日変化曲線を図3に示す。バランス重視ケースでは太陽光発電の余剰分をすべて上位系統側に売電するのに対し、環境重視ケースでは蓄電池への充電にも充てられ、蓄電池の放電により夜間の分まで賄えることが分かる。
試算結果の分析から、開発手法はマイクログリッドの初期設計において、採算性等の検討に有用である可能性が示された。
注1) 本手法において、マイクログリッドは上位系統に接続しているが、独立した場合も検討可能である。
注2) 本手法において環境性は、年間の CO2 発生量で表現する。
注3) 本手法においてレジリエンス性は、非常時に電力供給できる余力として、蓄電池の充電残量で表現する。
注4) ある一つの指標を「より良く」しようとすると残りの指標のどれかは必ず「より悪く」なってしまうような、指標間のトレードオフを示す解のこと。
概要 (英文)
As a hopeful solution for urgent requirement of both strengthening resilience and realizing decarbonization of power infrastructure, microgrids have attracted much attention, which utilize distributed energy resources in peacetime, and independently supply power in case of emergency such as disaster. On the other hand, in order to establish microgrids as sustainable business enterprise, proper estimation of their whole business profitability is indispensable in making their financing plan. Considering this point, a method for design optimization of microgrids is developed and proposed in this report. In this method, by using as input daily curve data of load and solar radiation of a region where a microgrid is expected to be built, and parameter values of power-generating facilities (photovoltaic power system, storage battery system and rotary power) such as their introduction and operation costs and CO2 emission factors etc., and by minimizing three indices each of which is related to "cost", "environment" and "resilience" as much as possible, capacities of the power-generating facilities to be installed and their daily operational status are estimated from a Pareto optimal solution where trade-off relationships among the above-mentioned three indices are taken into consideration. The proposed method is also applied to simulated data in Okinawa area to find that the demand is met mainly by the solar power the surplus of which is sold to utility grid and charged into battery in daytime, and mainly by rotary power with support of utility power or discharge from battery in night time.
報告書年度
2023
発行年月
2024/05
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
鶴見 剛也 |
グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門 |
共 |
野田 琢 |
グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
マイクログリッド | Microgrid |
レジリエンス | Resilience |
脱炭素化 | Decarbonization |
現在正味価値 | Net present value |
多目的最適化 | Multi-objective optimization |