電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

GD23010

タイトル(和文)

産業用ヒートポンプのエネルギー性能に関する簡易推定法の提案

タイトル(英文)

Simplified method for estimating energy performance of industrial heat pumps

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背 景
高効率な電化技術である産業用ヒートポンプの技術開発や商用化が進んでおり、カーボンニュートラルの実現には導入の加速が必要である。ただし、産業用加熱工程は多様であるため、ヒートポンプのエネルギー性能注1)表示は基準や指標が多様であり、統一性を欠いている。これら性能表示の複雑さが、ヒートポンプの適用性検討を難しくしており、導入を阻害する要因の一つになっている。
目 的
多種多様な産業用ヒートポンプ製品のエネルギー性能を統一的かつ簡易的に推定する手法を構築する。
主な成果
日本の産業用ヒートポンプ製品(25 機種)のデータ(588 点)をもとに、性能特性を分析し、4 つに分類した上で、エネルギー性能を推定する手法を考案した(図1)。本手法
ではエネルギー性能を対数平均温度リフト注2)に対応するローレンツ効率注3)、およびCOP 注4)で表現する。特徴は以下の通り。
・ ローレンツ効率を対数平均温度リフトで整理することで、幅広い温度レベルや温度グライド注5)のヒートポンプに当てはまる統一的な推定式を用いている。
・COP の算定は、熱源と熱供給先の媒体の種類、およびそれらの出入口温度のみを用いる簡易的な式で行う。
・推定式①や②によって、圧縮機の形式や冷媒の種類によらず、標準的な単段圧縮サイクルヒートポンプのCOP をおよそ10%以内の精度で推定できる。例えば、機器を選定する前の初期検討段階で既存のヒートポンプ技術の平均性能を推定する場合や、カタログに記載のない条件でのCOP を推算する場合に利用できる。
・推定式③や④によって、二段圧縮サイクルや二元サイクルを含む、既存技術の最高COP を推定できる。例えば、製品の有無に関わらず、既存のヒートポンプ技術の限界性能を把握する際に利用できる。あるいは、技術開発時に定める目標値として利用することもできる。
注1)エネルギー性能:本稿ではヒートポンプのエネルギー効率に関するCOP とローレンツ効率を意味する。
注2)温度リフト:ヒートポンプが熱をくみ上げる温度差であり、熱供給先温度から熱源温度を引いた値。ただし、熱供給先温度および熱源温度は変化するため、それらの対数平均値を用いたものを対数平均温度リフトと呼ぶ。
注3)ローレンツ効率:実際のヒートポンプの性能が理想性能に対してどの程度であるかといった、エネルギー性能の相対値を表す指標であり、理想性能としてローレンツサイクルを有するヒートポンプを基準としたもの。
注4)COP:エネルギー性能の絶対値を表す指標であり、消費電力に対する加熱能力の比で定義される。
注5)温度グライド:熱供給先または熱源の出入口温度差。
関連報告書:C20002「熱力学的分析に基づく高温ヒートポンプサイクルの設計指針―冷媒および高効率化技術の選択に向けた一提案―」(2020.08)

概要 (英文)

Industrial heat pumps are recognized as a technology for decarbonizing industries due to their high efficiency and ability to be electrified with low-carbon electricity. In Japan, various types of industrial heat pumps have been commercialized, including water to water heat pumps, water to air heat pumps, and air to water heat pumps. To accommodate a wide variety of industrial heating processes, the technical specifications and energy performance indications of industrial heat pumps vary. This diversity requires time and effort when examining the applicability of heat pumps, which is one of the factors hindering their introduction.
This study aims to develop a unified and simple method for estimating the energy performance of a wide variety of industrial heat pump products. First, energy performance data on industrial heat pumps available in the Japanese market were collected and systematically analyzed. Then, based on the regression analysis, two types of correlations between Lorentz efficiency and logarithmic mean temperature lift were developed. The first type correlation can estimate the average COP of industrial heat pumps with single stage cycles with an accuracy of approximately within plus and minus 10%. On the other hand, the second type correlation represents the highest performance of existing technologies including double stage cycles and cascade cycles. Both correlations can be calculated simply inputting 6 parameters: heat source medium, heat sink medium, heat source inlet temperature, heat source outlet temperature, heat sink inlet temperature, and heat sink outlet temperature.

報告書年度

2023

発行年月

2024/04

報告者

担当氏名所属

甲斐田 武延

グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門

キーワード

和文英文
産業用ヒートポンプ Industrial heat pump
COP Coefficient of performance
温度リフト Temperature lift
ローレンツサイクル Lorenz cycle
回帰分析 Regression analysis
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry