電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

GD23009

タイトル(和文)

マンホール内外間通信における920 MHz帯電波減衰量の評価手法

タイトル(英文)

An Evaluation Method of 920 MHz Band Radio Wave Attenuation for Communications through a Manhole

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背 景
電力設備の保守管理業務においては,人口減少による将来の労働力不足が懸念されており,通信技術を活用した遠隔監視による巡視点検業務の効率化および省力化が求められている。地中送電設備に対しては,地中洞道やマンホール内に各種センサを設置し,観測データを無線通信により地上へ伝送することで,地上の既設通信網を活用した遠隔監視システムを構築することが可能である。 一方で,地中から地上に対する無線通信においては,地中構造物の形状,マンホールの蓋に加え,通行車両や雨水などの地上環境が通信品質に影響を与える。安定した無線通信を実現するためには,現場環境を考慮して,地中から地上に対する電波伝搬における減衰量を把握する必要がある。
目 的
地中と地上間の遮蔽環境に適した920 MHz 帯注1)電波減衰量を実験により把握するとともに,電波減衰量の評価手法を提案する。
主な成果
1. 地中から地上に対する電波減衰量の実験評価
実マンホールを用いて,マンホール蓋や地上環境による920 MHz 帯電波減衰量を実験評価した(図1)。その結果,以下が明らかとなった。
(1) マンホール蓋を閉めた場合は,開けた場合に比べ,受信信号強度が一重蓋で最大で約20 dB,二重蓋で最大で約30 dB 減衰した(図2)。
(2) マンホール立坑の真上に車両が存在する場合は,トラックより乗用車の影響の方が大きい傾向にあり,受信信号強度が最大で約19 dB 減衰した(図3)。
(3) 雨水の影響について,マンホール蓋の表面に雨水が付着している場合は,ほとんど影響が出ない。一方,マンホール蓋と枠の隙間に雨水が溜まっている場合は,受信
信号強度が約10 dB 減衰した(表1)。
2. 電波減衰量の評価手法
電波伝搬経路の特徴を踏まえ,マンホール部分の電波減衰量評価には電磁界解析法注2)を,マンホール蓋から地上側の電波減衰量評価にはレイトレース法注3)をそれぞれ適用することで,二つの解析法を併用する評価手法を提案した。主な成果1 の(1)の環境条件で電波減衰量を評価し,受信信号強度を算出した結果,電磁界解析法のみを用いる場合に比べ,提案手法では測定値との誤差が平均で1.7 dB,標準偏差で2.0 dB 改善した(図4)。また,提案手法を活用し,設置候補場所に対する電波減衰量を机上で評価できるツール(図5)を開発した。
注1)無線局免許不要で,回折特性に優れているため,遮蔽環境においてより遠くまで電波が届きやすいという特長を持つ。本報告は,LPWA(Low Power Wide Area)の一つであるLoRa を用いて評価した。
2)対象物と電磁界の相互作用をマックスウェルの方程式で解析する方法。近傍での伝搬特性解析に適している。本報告では,電磁界解析法の一つである時間領域差分(FDTD)法に基づくRemcom 社の電磁界シミュレータXFdtd(Ver. 7.4)を使用した。
3)発信源からの電波を伝搬経路上の障害物による反射,透過,回折を考慮して追跡し,受信点に到達する伝搬経路を合成することで電波伝搬特性を評価する方法。

概要 (英文)

This report describes fundamental evaluations of 920 MHz band radio wave attenuation for telemonitoring of underground power transmission facilities. To understand the propagation loss between underground and aboveground environments, some measurements were carried out for effects of manhole cover, a vehicle parked over the manhole, and rainwater flooding, respectively. The measurement conditions included where the manhole cover was slightly wet, and the gap between the manhole cover and frame was flooded. After the propagation loss for each measurement are clearly identified, some computer simulations combining FDTD and ray tracing are also carried out for comparing to the measurement results. As a result, a correction value is obtained to improve the accuracy of the simulation, and the propagation loss can be accurately estimated by using computer simulations. For the radio planning, the author develops a calculation tool for propagation loss, and a guideline of antenna installation and considered propagation loss are introduced.

報告書年度

2023

発行年月

2024/03

報告者

担当氏名所属

土屋 弘昌

グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門

キーワード

和文英文
920 MHz帯 920 MHz band
LPWA LPWA
マンホール Manhole
地中送電設備 Underground power transmission facilities
電波伝搬特性 Radio wave propagation characteristics
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