電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

GD23005

タイトル(和文)

高圧配電線における多相フラッシオーバ発生後の続流発生率計算手法の開発

タイトル(英文)

Development of Calculation Method for the Occurrence Probability of Short-Circuit Following Multi-Phase Flashover due to Lightning in Medium-Voltage Distribution Lines

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背 景
雷を原因とする高圧配電線の供給支障事故は,複数相のがいしでのフラッシオーバ(以下,FO)が生じた場合に発生する続流が要因注1)であると考えられている。このことを背景に,雷事故率を統計的に評価する配電線雷リスク評価手法[1]では,多相FO が発生した場合を続流の発生とみなし,雷サージ解析[2],[3]による多相FO の発生確率を続流の発生確率(以下,続流発生率)として評価する。しかしながら,実配電線における雷観測結果では,多相FOが発生したもののアーク放電が自然消弧し,続流が発生しない事例が報告されており注2),これが雷事故率の計算結果と実績値が乖離注3)する理由の一つとなっている。高圧配電線雷リスク評価手法の精緻化のためには,多相FO発生後のアーク放電の継続有無を考慮できる,より精緻な計算手法が必要である。
目 的
交流-インパルス電圧重畳試験により多相FO後にアーク放電が継続する確率(以下,継続率)を明らかにし,その継続率に基づいた続流発生率の計算手法を開発する。
主な成果
1. 交流-インパルス電圧重畳試験による多相FO 後の継続率評価
当所大電力試験所にて交流-インパルス電圧重畳試験(図1)を実施し,試験回路定数から定まる短絡電流(3相を金属短絡した時に流れる短絡電流)値とインパルス電圧の重畳位相角をパラメータとして,2 相FO 後および3 相FO 後のアーク放電の継続率を求めた注4)。その結果,(i) 2 相FO発生時には,短絡電流値が小さいほどアーク放電が消弧しやすくなり継続率が低下すること,(ii) 3 相FO 発生時には,2 相FO 発生時に比べ継続率が高いことがわかった(図2)。
2. 試験結果に基づく高圧配電線の続流発生率計算手法の提案
高圧配電線の雷サージ解析により計算した多相FOの発生確率に対して,上記交流-インパルス電圧重畳試験で得られた続流の継続率を乗算することで,続流の継続有無を考慮可能な続流発生率計算手法(図3。以下,提案手法)を開発した。開発した計算手法をモデル配電線路に適用した結果,多相FOの発生確率を続流発生率とみなす従来の手法に比べて提案手法で求めた続流発生率は減少し,雷リスク評価手法において続流の継続率が重要なパラメータであることを明らかとした(図4)。また提案手法は,線路亘長毎に変化する短絡電流値を考慮した上で続流発生率を算出するため,コンクリート柱もしくはフィーダ単位での評価が可能である。
注1)多相FO が生じた場合に腕金などを介して異相地絡の経路がつながり短絡に移行する。その際に電線と腕金間で交流の故障アークが発生し,故障アークの熱やエネルギーにより電線・がいしは損傷を受け供給支障事故に至る。
注2)カメラ観測および同時測定された電圧・電流の結果において,35 件の内14 件(40%)は多相FO が発生したものの続流が発生しなかった。(参考文献:T. Miyazaki and S. Okabe, IEEE Trans.EMC, Vol. 53, No. 1, pp. 114-121 (2011))
注3)中国地方の配電設備に対して雷リスク評価手法を適用し,夏期における雷事故率を計算した結果,その値は実績値に比べ約2.1 倍であった。(参考文献:吉田 友一 他,電気学会論文誌B,Vol.137,No. 6, pp. 460-468 (2017))
注4)当試験では,各短絡電流値に対してアーク放電が継続する位相角の範囲求め,商用周波電圧の内,アーク放電が継続する位相角範囲が占める割合を「継続率」として算出した。
関連報告書:
[1] H12010「地域特性を考慮した高圧配電線雷ハザード評価手法の提案」(2013.05)
[2] GD22003「雷電磁パルスの影響を考慮した配電線雷サージ解析手法の開発(その1)-直撃雷サージ解析手法の開発-」(2022.11)
[3] H19001「高圧配電線雷事故率計算プログラムの改良 (I) -直撃雷による事故率計算と計算結果の雷リスク評価への適用-」(2020.01)

概要 (英文)

Since the medium-voltage distribution system in Japan is an isolated neutral system, a ground-fault current associated with a single-phase flashover due to lightning is low, and in most cases, it does not cause a distribution line fault. In general, line faults are caused by the fault arc of commercial frequency short-circuit current following multi-phase flashover. Thus, in the lightning surge analysis using electromagnetic transient analysis programs for assessing the lightning fault rates of medium-voltage distribution lines, the multi-phase flashover is typically regarded as the line fault. However, the previous observation results in actual distribution lines have suggested that the multi-phase flashover does not necessarily cause the line fault. For accurate assessment of the lightning fault rate of medium-voltage distribution lines, it is important to clarify the continuous condition of fault arc following multi-phase flashover.
In this paper, first, we examined the continuous conditions of the fault arc following multi-phase flashover by lightning impulse tests superimposed on AC voltage. Second, on the basis of the continuous conditions, we proposed a method for calculating the occurrence probability of short-circuit current following multi-phase flashover due to lightning in medium-voltage distribution lines.

報告書年度

2023

発行年月

2023/11

報告者

担当氏名所属

森 亮太

グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門

田所 兼

グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門 大電力試験所

石本 和之

グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門

キーワード

和文英文
多相フラッシオーバ Multi-phase flashover
故障アーク Fault arc
Lightning
短絡電流 Short-circuit current
高圧配電線 Medium-voltage line
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