電力中央研究所

報告書「電力中央研究所報告」は当研究所の研究成果を取りまとめた刊行物として、昭和28年より発行されております。 一部の報告書はPDF形式で全文をダウンロードすることができます。

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

GD23004

タイトル(和文)

雷電磁パルスの影響を考慮した配電線雷サージ解析手法の開発(その2) -傾斜・屈曲した雷放電路の模擬手法の開発-

タイトル(英文)

Development of Lightning Surge Analysis Method for Distribution Lines (Part 2) -Representation Method for an Inclined/Bent Lightning Channel-

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
耐雷機材が密に取り付けられた我が国の高圧配電線(以下,配電線)では,誘導雷による雷事故は少なく,直撃雷による雷事故の割合が高い。直撃雷に対する配電線の耐雷性能評価には,XTAPやEMTP注1 による回路解析が広く用いられるが,落雷時に発生する雷電磁パルス(Lightning electromagnetic pulse, LEMP)注2 の影響は重要視されてこなかった。一方,これまでに,FDTD法注3 等による数値電磁界解析を用い,配電線直撃雷においてもLEMPが雷事故率に大なる影響を及ぼす場合があることを明らかにした[1] 注4 。さらに,雷事故率計算に用いられてきた回路解析においてLEMPの影響を模擬し得る直撃雷サージ解析手法を開発した[2]。しかし,この手法では垂直な雷放電路を仮定している。実際には雷放電路は傾斜・屈曲しており,より実現象に即した配電線耐雷性能評価のためには,傾斜・屈曲した雷放電路の模擬手法を開発し,その影響を評価する必要がある。
目  的
回路解析において傾斜・屈曲した雷放電路を模擬し得る解析法を開発するとともに,本手法を用いて配電線直撃雷サージ解析を実施し,傾斜・屈曲した雷放電路が配電線に発生する雷過電圧に与える影響を明らかとする。
主な成果
1. 回路解析において傾斜・屈曲した雷放電路の影響を考慮し得る解析法の開発
直撃雷サージ解析手法[2]に改良を加え,ポテンシャルの手法により模擬した雷放電路を重ね合わせることで,回路解析において傾斜・屈曲した雷放電路の影響を考慮し得る雷サージ解析手法を開発した。開発法とVSTL REV注5 による,配電線への直撃雷過電圧の計算結果は良好に一致し,傾斜・屈曲した雷放電路によるLEMPおよびこれにより架空線に生ずる誘導電圧が開発法により正しく計算できることを示した(図1,図2,図3)。
2. 傾斜・屈曲した雷放電路の影響を考慮した直撃雷サージ解析
開発した手法を用いて,傾斜・屈曲した雷放電路を考慮した直撃雷サージ解析を実施し,雷事故率計算において重要となるがいし間電圧を評価した。線路に直交する方向へ雷放電路が傾斜している場合にはがいし間電圧は低下する一方で,線路に沿う方向への傾斜ではがいし間電圧は上昇し,例えば屈曲した雷放電路により生ずるがいし間電圧は,最大で±15%程度,垂直な雷放電路を仮定した場合と比べ変化することが明らかとなった(図1,図2,図4)。
実際の雷現象では雷放電路の形状は様々であるため,今後,モンテカルロ法を用いた雷事故率計算[3]に開発法を組み込むことにより,雷放電路の形状も変数の一つとして考慮した上で,雷放電路の形状が雷事故率に与える影響を評価する予定である。

注1)eXpandable Transient Analysis ProgramおよびElectromagnetic Transients Programの略。接点解析法に基づく回路解析(瞬時値解析)プログラム。
注2)雷撃に伴い発生する電磁パルスで,配電線に誘導電圧(誘導雷)を発生させる。
注3)Finite difference time domain法の略で,時間領域における数値電磁界解析手法の一種。回路解析と比べ,配電線直撃雷等の電磁界変化を含む現象を高精度に解析できる一方で複雑なモデリングや多大な計算機資源を必要とする。
注4)特に避雷器および避雷装置の施設密度が低い線路において,雷事故率計算結果が大きく変化する。
注5)Virtual Surge Test Lab. Restructured and Extended Version の略。FDTD法に基づくサージ・過渡電磁界解析プログラム。
関連報告書:
[1] H20007「雷放電路からの誘導の影響を考慮した配電線直撃雷フラッシオーバ解析」 (2021.08)
[2] GD22003「雷電磁パルスの影響を考慮した配電線雷サージ解析手法の開発(その1)-直撃雷サージ解析手法の開発-」 (2022.11)
[3] H19001「高圧配電線雷事故率計算プログラムの改良 (I)」-直撃雷による事故率計算と計算結果の雷リスク評価への適用- (2020.1)

概要 (英文)

Lightning strikes to overhead medium voltage distribution lines are the main concerns for Japanese distribution systems. In this report, we developed an analysis method of a direct lightning strike to distribution lines considering an inclined/bent lightning channel, with taking account of the influence of the lightning electromagnetic pulse (LEMP) within the electromagnetic transient analysis. For the analysis of inclined/bent lightning channel, the potential method for computing LEMPs was extended: an inclined lightning channel can be directly modeled using the potential method, and a bent lightning channel was modeled by the superimposition of inclined lightning channels. The validity of the developed method was confirmed by comparing the analysis results of the developed method and that of the three-dimensional finite difference time domain method, both for direct and indirect lightning surges. For the direct lightning surges, for example, insulator voltages generated by the bent lightning channel can differ by about plus and minus 15% from those generated by the vertical lightning channel. Since real lightning channels have various shapes, it is worth to perform the lightning outage rate calculation considering the shape of the lightning channel as random variables. The next step of the research is lightning outage rate calculation considering the LEMP effect by the analysis method developed in this report and the previous one.

報告書年度

2023

発行年月

2023/10

報告者

担当氏名所属

山中 章文

グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門

石本 和之

グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門

立松 明芳

グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門

キーワード

和文英文
配電線 Distribution line
雷電磁パルス Lightning electromagnetic pulse
傾斜・屈曲雷放電路 Inclined/bent lightning channel
瞬時値解析 Electromagnetic transient analysis
数値電磁界解析 Numerical electromagnetic analysis
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