電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
GD23001
タイトル(和文)
ガス絶縁機器用Oリングの荷重に基づいたガス漏れ評価手法の開発 -設置環境を考慮したOリング荷重残率推定手法-
タイトル(英文)
Development of Gas Leakage Evaluation Method based on loading of O-rings Attached to Gas Insulated Equipment - Estimation Method of O-ring Load Retention Ratio Considering Installation Conditions -
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
ガス絶縁機器のシール材に使用されるOリングは、熱や酸素などにより劣化することで、内封するガスが漏洩して絶縁性能が低下するなど機器の寿命や信頼性に影響を与える。Oリングの劣化状態は、従来、内封するガス圧力によらず、Oリング寸法に基づいた圧縮永久歪率1)が80%を超えた場合にガス等が漏れる可能性があるとの経験則に基づき評価されている2)。一方、内封するガス圧力はOリングの荷重(フランジ面への反発力)で保持されることから、当所ではこれまでに実験的なアプローチによりOリングの荷重をガス漏れ発生の閾値設定に用いるガス漏れ評価手法、および従来手法の評価指標である圧縮永久歪率に代わる評価指標「Oリング荷重残率」3)を提案した [1] [2]。本ガス漏れ評価手法を寿命推定などへ適用するためには、実機器で想定される酸素の有無など雰囲気等が異なる設置環境に対してOリングの荷重推定が必要となる。
目 的
Oリングの荷重に基づきガス絶縁機器のガス漏れを評価するために、Oリング設置環境を考慮したOリング荷重残率推定手法を開発する。
主な成果
1. Oリング設置環境を考慮したOリング荷重残率推定手法の開発
Oリング設置環境4)を考慮したガス漏れを評価するために、実機器で想定される3種類の雰囲気別(Oリングの内外両側が窒素5)、内側が窒素で外側が大気、両側が大気)にOリングの熱劣化特性6)を取得した。同特性を用いて、既開発の圧縮永久歪率推定手法[3]をベースに、実機器の設置環境に適用可能なOリング荷重残率の推定手法を開発した。
この推定手法により算出したOリング荷重残率と実測値とを比較した結果、両者はほぼ一致した(図1)。本推定手法を用いることで、雰囲気等が異なる設置環境を考慮して、Oリングの寿命に関わるガス漏れ評価を行うことができることがわかった。
2. Oリング設置環境を考慮したガス漏れの評価指標推定ツールの開発と活用例
本推定手法によりガス漏れを容易に評価できるツールを開発した(図2)。本ツールでは、Oリングを設置する雰囲気と内封するガス圧力、圧縮率7)に関わるフランジ内でのOリングの寸法、およびOリングが曝される温度履歴を入力することで、経年に対するガス漏れの評価指標となるOリング荷重残率を算出することができる。 同ツールによる推定では、Oリングを設置する雰囲気の違いに加え、圧縮永久歪率では評価できなかった、圧縮率の違いや内封するガス圧力がOリングの寿命に与える影響を評価可能である。Oリング設置環境の違いによる寿命への影響評価の活用例を図3 に示す。Oリングを設置する雰囲気は寿命に大きく影響することがわかる。また、設置時の圧縮率を高めることでより長寿命化が期待できることがわかる。以上より、本ツールを用いることで、運用条件に応じた余寿命が推定可能となる。
1) Oリングをフランジに設置した際のつぶし代に対して、フランジから解放して元に戻らない厚さ分の割合。
2) 電気協同研究会:「ガス絶縁開閉装置の保全高度化」、電気協同研究第70 巻第2 号、P45 (2014 年)
3) Oリング荷重残率は、劣化前後のOリングの荷重等の比較により設定した評価指標。ゼロの場合に漏れが発生する。
4) ここでは、ガス雰囲気と内封するガス圧力、Oリングの原厚、フランジ内でのOリングの寸法をOリング設置環境と定義する。本報告では特にガス雰囲気の違いに着目してガス漏れ評価を行った。
5) 酸素の有無がOリング劣化に影響するため、SF6雰囲気相当として窒素雰囲気で代用した。
6) NBR 製Oリングの特性を取得。
7) 圧縮率: Oリングの原厚に対するOリングのつぶし代の割合。
関連報告書:
[1]H15008「ガス絶縁機器用Oリングの荷重に基づいたガス漏れ評価手法の提案」(2016.08)
[2]H17003「ガス絶縁機器用Oリングの荷重に基づいたガス漏れ評価手法の開発-開発手法と圧縮永久歪率を用いる手法との評価指標の関係-」(2018.08)
[3] H13013「ガス絶縁機器用Oリングのシール性能に基づく寿命評価手法の開発-Oリングの実用的な圧縮永久ひずみ率推定手法-」(2014.08)
概要 (英文)
We studied an evaluation method for gas leakages from gas-insulated equipment based on loadings of O-rings, which are repulsive forces on the flange surfaces. This is because the gas leakage would be determined by the loading of the O-ring. The retained loadings of O-rings aged under several atmospheric conditions, such as air or SF6 gas, were measured, and gas leakage has been evaluated experimentally so far. In this study, thermal deterioration characteristics of O-rings are measured for the atmospheric conditions with or without oxygen. Employing the obtained thermal deterioration characteristics, a method for estimating the load-retention ratio of the O-ring is developed. Furthermore, a tool for evaluating gas leakage from gas-insulated equipment based on the estimated load-retention ratio of the O-ring is developed. Utilizing this tool, the lifetime of the O-ring can quickly be evaluated considering atmospheric conditions, the compression ratio of the O-ring, and enclosed gas pressure.
報告書年度
2023
発行年月
2023/10
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
堀 康彦 |
グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門 |
共 |
水谷 嘉伸 |
グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
Oリング | O-ring |
ガス漏れ | Gas leakage |
荷重 | Load |
ガス絶縁機器 | Gas insulated equipment |
劣化評価 | Deterioration evaluation |