電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
GD22032
タイトル(和文)
系統解析用モジュラーマルチレベル変換器回路モデルの開発-直流多端子系統を用いた基本応動の検証-
タイトル(英文)
Development of Modular Multilevel Converter Circuit Model for Power System Analysis- Verification of Fundamental Response through Multi Terminal HVDC -
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
洋上のウィンドファームから陸上の複数拠点へ送電する用途でモジュラーマルチレベル変換器1)(以下,MMC)を用いた直流多端子2)が検討されている。一般に,直流多端子が既存の交流系統に与える影響を効率的に評価するためには,実効値解析が用いられる。既に実効値解析に用いるMMC モデルとして複数のモデルが提案されており3),MMCの各アームに存在するセル電圧の詳細模擬などを行っている。しかし,交流系統への影響を評価するモデルとしてはこれらの詳細な情報は不要であり,利用者の負担が大きかった。そこで,MMC回路の特徴を抽出し,それに基づく簡略化モデルが求められている。
目 的
簡略化したMMC回路モデルを開発する。また,Y法4)を用いて直流多端子への適用を想定した基本的な応動の検証をする。
主な成果
1. 簡略化したMMC 回路モデルの開発
MMC(図1)の特徴5)を抽出し,これに基づく簡略化モデルを開発した。開発したモデルは,各アームに存在するセルコンデンサのバランスの均衡がとれているとの前提のもと6)MMC のセルコンデンサを1 つに集約し,MMC の特徴である直流変調機能を既実装の2 レベル変換器(図2)に付加したモデルである(図3)。これにより,MMC回路の複雑な内部制御を考慮することなく影響評価が可能である。
2. 直流多端子を用いた基本的な応動の検証
2端子の直流系統を構築し,Y法と瞬時値解析ソフトXTAP7)との比較により開発したモデルの検証を行った。両者の解析波形はよく一致しており,開発したモデルはMMC の基本的な応動8)を模擬できていることが確認できる(図4)。
また,これを用いて直流多端子モデルを構築した(図5)。多端子モデルは一つの端子を直流電圧一定制御(DCAVR)で動作させ,その他の全端子を直流電力一定制御(DCAPR)で動作させている。潮流変更(端子3 の潮流反転指令)時のY 法解析結果を示す(図6)。端子3 が潮流反転し,その変動をDCAVR 端子が吸収していることから多端子モデルは想定通り動作していることが確認できる。開発したモデルは直流多端子系統の制御方式の検討への応用が期待できる。
注 1) モジュール(セルとも呼ぶ)を多段接続することにより構成する変換器をMMC (Modular Multilevel Converter)と呼ぶ。
2) 多地点間を直流送電線で結んで送電する方式のこと。
3) 例えば,Dragan Jovcic and Ali Akbar Jamshidifar “Phasor Model of Modular Multilevel Converter With Circulating Current SuppressionControl”, IEEE Transaction on Power Delivery, Vol. 30, No. 4, pp. 1889-1897 (2015-8).
4) 当所で開発された電力系統動特性解析プログラムであり,電力系統統合解析ツールCPAT の一機能。現時点では自励式直流送電モデルとして2 レベル変換器を用いたモデルが実装されている。また,直流多端子モデルとしては他励式変換器を用いたモデルが実装されている。
5) 既実装の2 レベル変換器はエネルギー蓄積用の直流コンデンサが直流回路に直に接続されているため,コンデンサ電圧と直流電圧が等しくなる。一方で,MMC はセルコンデンサが半導体素子を介して接続されるため直流電圧がセル電圧と独立に制御できる。
6) MMCは回路内部に循環電流を流しセルコンデンサの電圧不均衡を修正するバランス制御を実施している。MMCは大きな系統擾乱時にコンデンサの電圧不均衡が原因で運転停止となる可能性がある。このような不均衡による運転継続可否の判断用途では,本モデルは用いることができない。
7) XTAPのモデルは6 つのアーム及びそれに付属するセルコンデンサが独立に表現されたモデルを用いた。
8) 潮流反転及びDCチョッパ動作の2 ケースで応動を確認した。
概要 (英文)
Multi-terminal HVDC with modular multilevel converters is being considered for the transmission of power from offshore wind farms to multiple points on an onshore AC system. RMS analysis is used for efficient analysis of the impact of DC multi-terminal on the existing AC system. However, existing MMC models are not suitable for RMS analysis because they represent complex circuits and controls of MMC in detail.
We have developed a simplified MMC model for RMS analysis by extracting the features of MMC. This model reduces the cell capacitors in each arm of the MMC to a single capacitor, and only the DC modulation function is added to the existing model. To verify the developed model, we compared the results between XTAP and Y-method. The waveforms of the RMS and instantaneous value analyses are in good agreement. A multi-terminal HVDC model was also constructed using the developed MMC model and it was confirmed that basic responses can be simulated in this model.
報告書年度
2022
発行年月
2023/09
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
菊間 俊明 |
グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門 |
キーワード
和文 | 英文 |
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HVDC | HVDC |
直流多端子 | Multi terminal DC |
MMC | MMC |
系統解析 | Power system analysis |
実効値解析 | RMS analysis |