電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
GD22029
タイトル(和文)
雷電流処理に伴う配電用避雷器の耐量超過発生率に関する定量評価-雷電流の繰返し処理によるエネルギー耐量低下の影響-
タイトル(英文)
Evaluation of Surge Arrester Failure Rate due to Direct Lightning Strike to Distribution lines - Influence of Energy Capability Reduction due to Repetitive Lightning Current -
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
我が国の配電線においては,雷事故の未然防止を目的として避雷器が各所に施設されている。このような避雷器は,落雷時に処理する雷電流のエネルギーが耐量を超過した場合に,故障に至ることが知られている。その一方で,落雷後に故障に至らなかった避雷器は,外観上問題が確認されなければ設備の更新は行われない。しかしながら,避雷器は雷電流を繰返し処理することでエネルギー耐量が低下することが指摘されている注1)が,実際の配電線において,このような事象が発生する頻度については未だ検討がなされていない。配電線における避雷器の雷故障発生頻度を評価するためには,雷電流処理に伴うエネルギー耐量の低下を考慮した避雷器の耐量超過発生頻度の評価が必要となる。
目 的
配電線への直撃雷を対象として,雷電流を繰返し処理した際に避雷器がエネルギー耐量超過(以下,耐量超過と記す)に至る頻度を評価する手法を提案するとともに,雷電流の繰返し処理が,避雷器の耐量超過発生頻度に与える影響を評価する。
主な成果
1. 雷電流の繰返し処理時における避雷器の耐量超過発生頻度の評価手法
当所で開発した高圧配電線雷事故率計算プログラム[1]において,過去に実施された避雷器のエネルギー耐量評価試験結果とモンテカルロ法による多数回の雷サージ解析を組み合わせることで,配電線への直撃雷発生時に,避雷器が耐量超過に至る頻度を評価する手法を提案した注2)(図1)。
2. 避雷器のエネルギー耐量低下が耐量超過の発生頻度に与える影響
上記で提案した手法を用いて,配電線への直撃雷(夏季雷注3))による避雷器の耐量超過発生頻度を評価した。この結果,雷電流の繰返し処理によるエネルギー耐量低下を考慮した場合,避雷器が故障に至る耐量超過の発生頻度は増加するものの,配電設備の耐用年数である65 年程度注4)の期間では,この影響が小さいことを明らかにした(図2)。このため,夏季に雷が多い地域における配電線の保守・運用という観点においては,雷電流の繰返し処理に伴う配電用避雷器のエネルギー耐量低下を考慮する必要性は低いと考えられる。
注1) 参考文献:S.Matsuura,et.al, “Measurement of Energy Capability of Distribution Surge Arrester after Operations with Impulse Currents”, IEEJ Trans. PE, Vo.138, No.5, pp. 333-338(2018)
注2)本検討では,注1)の参考文献で報告されている配電用避雷器を対象として,雷電流処理に伴う耐量低下を当該避雷器における試験結果を基に算出した近似式により推定し,各雷電流を処理するごとに耐量低下が蓄積すると仮定した。実際には,連続的に耐量低下が蓄積する可能性は低いと考えられるが,避雷器の耐量超過発生頻度の算出において,過酷側(耐量低下が発生しやすい)の結果となることから,上述の仮定の下,検討を行った。
注3)本検討ではBerger の観測結果に基づく夏季に多い負極性下向き雷の第一雷撃による耐量超過を評価した。なお,冬季雷については,雷電流波形の模擬に用いた三角波では,冬季雷の特徴を再現するのが難しいことから,本検討では夏季雷を主対象とした。また,落雷頻度が比較的高い地域と仮定し,大地雷撃密度は3[回/km2/年]とした。
注4)ここではコンクリート柱の耐用年数を高経年化設備更新ガイドラインに記載の電柱の標準期待年数とし,設置される配電機器の最大使用年数と仮定した。実際に,柱上に設置される機器の年数はこれよりも短いものと推定される。
関連報告書:
[1] H19001「高圧配電線雷事故率計算プログラムの改良(Ⅰ)-直撃雷による事故率計算と計算結果の雷リスク評価への適用-」(2020.01)
概要 (英文)
Surge arresters installed on distribution lines to prevent lightning outage sometimes fail if the energy withstand capability of the surge arresters is exceeded by lightning currents. In case that no failure occurs, and no external problems are observed in surge arresters after lightning strike, these surge arresters are not renewed in many cases. It has been pointed out that the energy withstand capability of surge arresters decreases with repeated treatment of lightning currents, but the frequency with which such events occur in actual distribution lines has not yet been studied.
In this report, we assessed the failure rate of the surge arresters considering the decrease of the energy capability of surge arrester due to repetitive treatment of lightning currents by means of lightning outage rate calculation program for mediumvoltage distribution lines developed by CRIEPI.
報告書年度
2022
発行年月
2023/09
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
もくめ 将実 |
グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門 |
共 |
石本 和之 |
グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
配電線 | Distribution lines |
耐雷設計 | Lightning protection design |
避雷器 | Surge arrester |
直撃雷 | Direct lightning strike |
エネルギー耐量 | Energy capability |