電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

GD22028

タイトル(和文)

GIS断路器開閉による低圧制御回路への誘導サージ特性-フェライトコアによるサージ低減特性の実験的評価-

タイトル(英文)

Characteristics of surges induced on low-voltage control circuits due to switching operation in gas-insulated switchgear -Experimental study on reduction of induced surges using ferrite cores-

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
発変電所において,ガス絶縁機器やディジタル形保護継電装置の導入が進み,低圧制御回路の耐サージ性能の低下が懸念されている[1]。低圧制御回路に誘導されるサージの主な発生要因のうち,GIS における断路器開閉サージは雷サージと比較して高い周波数成分(数 MHz-数十 MHz)を有している。このため,保護継電装置のサージ対策として一般的に設置されるサージ吸収用コンデンサの低減効果は限定的となることが指摘されている[2]。これに対し,フェライトコア注1)は,高周波ノイズに対する有効な対策手法の一つとしてよく知られるが,断路器開閉サージに起因する誘導サージに対して,その低減効果を定量的に評価した例はほとんどない。
目  的
GIS と低圧制御回路(計器用変成器-制御線-保護継電装置系)を模擬する実験回路において,断路器開閉サージを模擬する急峻波サージを発生させ,制御線に発生する誘導電圧に対するフェライトコアの低減効果を評価する。
主な成果
GIS と低圧制御回路を模擬する実験回路において,断路器開閉サージを模擬した急峻波サージを発生させ,保護継電装置の信号入力端子間に発生する誘導電圧に対するフェライトコアの低減効果を評価した(図1)。その結果,以下の点を明らかとした。
1. 計器用変成器二次側の制御線に発生する誘導電圧の伝搬モード
フェライトコアを,制御線の2 本の心線に併せて取り付けた場合には誘導電圧が低減されないが(図2(a)),制御線の各心線に取り付けた場合には誘導電圧が低減される(図2(b))。この結果は,差動モードの成分を主とする誘導電圧が制御線に発生していることを示しており,誘導メカニズムについて,実際のGIS 変電所において低圧制御回路に発生する誘導電圧を評価した結果注2)と整合する注3)。
2. フェライトコアの取り付け個数および心線巻き数の誘導電圧への影響
上記の結果より,差動モードを主成分とする誘導電圧に対するフェライトコアの取付方法(個数,巻き数)の影響を評価した(図3)。制御線の各心線にフェライトコアを取り付けた場合,フェライトコアの取付個数および心線の巻き数を増やすことで回路に追加されるインピーダンスが増加し,それに伴って誘導電圧の周波数帯域全体に亘り低減効果が増加する。例えば,取付個数を1 個,巻き数を2 巻とした場合に,20 MHz 以下の主要な成分は低減され,誘導電圧の波高値は0.17 倍(1.07 V → 0.18 V)にまで低減された。

注1)例えば,トロイダル形状のフェライトコアでは,空洞部を通過する高周波ノイズ電流に応じてコアが磁化することで,ノイズを遮断する,或いはノイズのエネルギーを熱に変換することで吸収する。
注2)例えば,実際の 123 kV GIS 変電所において,断路器開閉サージにより制御線に発生する誘導電圧を実測した波形を,計器用変成器における移行サージの影響を模擬したサージ解析により再現できることが報告されている(A. M. Miri and Z. Stojkovic, “Transient electromagnetic phenomena in the secondary circuits of voltage- and current transformers in GIS (measurement and calculations),” IEEE Trans. Power Delivery, vol. 16, no. 4, pp.571–575, 2001)。
注3)GIS の接地線が長い場合など,外被サージが発生しやすい配置においては,同相モード成分が支配的となる可能性がある。この場合には,同相モードに対するフェライトコアの取付方法(2 本の心線に併せて取り付け)も有効であると考えられる。

関連報告書:
[1]H07001「発変電所低圧・制御回路のサージ対策技術に関する研究課題」(2007.12)
[2]H11015「低圧制御回路の開閉サージ特性—GIS断路器開閉による急峻波サージの影響—」(2012.05)

概要 (英文)

In recent years, the protection relay equipment has been replaced with digital one in power plants and substations, which has become a threat to immunity performance against surges. Among representative causes of malfunction, very fast transient overvoltages are generated due to the switching operation of a disconnector in main circuits, reaching several megahertz to tens of megahertz. In this report, using an experimental setup of low-voltage control circuits, transient currents with very short rise times in some nanoseconds are generated that simulate the operation of a disconnector within a gas-insulated switchgear, and the voltages induced at the protection relay equipment are measured. To reduce the induced voltages at high frequencies, ferrite cores are installed in the experimental circuits, and their reduction effects are quantitatively evaluated depending on their ways to be installed. The measured results show that the surges induced on the control cable and reaching the protection relay-side end are dominated by the differential-mode currents, and proper installation of ferrite cores yields a preferable surge-reduction effect.

報告書年度

2022

発行年月

2023/09

報告者

担当氏名所属

田代 大貴

グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門

立松 明芳

グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門

吉崎 徳人

グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門

キーワード

和文英文
低圧制御回路 Low-voltage control circuits
誘導電圧 Induced voltages
ガス絶縁開閉装置 Gas-insulated switchgear
断路器開閉サージ Very fast transients
フェライトコア Ferrite cores
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry