電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
GD22026
タイトル(和文)
需要側機器を活用した周波数調整力確保に関する基礎検討(その1)-照明機器の一次調整力としてのポテンシャルの試算-
タイトル(英文)
A Basic Study on Ensuring Frequency Control Reserves using Demand-Side Devices (Part 1) - An Estimation of Lighting Device's Potential for Frequency Containment Reserve -
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
わが国では,電力系統の脱炭素化と周波数安定性維持の両立に向けて,脱炭素化された調整力の確保が課題となっている。近年,この対応策の一つとして,需要側機器の消費電力制御1)が期待されており,調整力としてのポテンシャルの精査が求められている2)。
このような観点から,地域や季節に関わらず需要がある照明機器,夏季冬季で需要が増加する空調機器等の消費電力について,需要家への影響を考慮した制御可能量や制御性能,調整力として活用するための技術的な課題と対応を明らかにすることが重要である。
目 的
照明機器の消費電力を対象に,需要家への影響を考慮した制御可能量や制御性能を試算し,照明機器を調整力として活用するための技術的な課題と対応を整理する。
主な成果
1. 住宅部門・業務部門における照明需要と制御可能量の試算
需要シミュレーションツール等3)を用いて各部門の照明需要を推定し,照度規格4-7)と照度低下の許容範囲8)に基づいて,需要削減による最大・最小制御可能量を試算した。その結果,総需要基準9)の制御可能量が,住宅部門では未明を除く広い時間帯で1~5%程度,業務部門では全時間帯で1~3%程度となることを明らかにした(図1)。
2. 照明機器の消費電力制御を行う試験用装置の構築と制御性能の試算
住宅用照明機器を対象として緊急時の消費電力制御の試験用装置を構築し(図2),周波数変動時の制御性能を評価した。その結果,むだ時間が0.5 秒程度内,仕上り時間10)が0.5~2.5秒程度内であり,一次調整力11)相当の速応性を有することを明らかにした(図3)。
3. 照明機器の消費電力制御を活用した一次調整力の確保における技術的な課題と対応案
むだ時間を含む照明機器の消費電力制御の活用において,図4 に示す周波数振動とフリッカの抑制が課題となり,適切な制御方式(例えば,固定幅の制御12))を用いる等の対応が重要になることをシミュレーションにより確認した。
このように,照明機器は一次調整力としてのポテンシャルを有するが,むだ時間を含む等,従来の同期電源とは特性が異なるため,これに留意した活用が必要となる。
注1) 山下,北内,井上,徳光,「自律分散形負荷制御方式の開発と実験的検証」,平成24年電気学会全国大会 6-224(2012)
2) 経済産業省,「2050 年カーボンニュートラルの実現に向けた需要側の取組」,第30 回 総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会 省エネルギー小委員会 資料1(2021)
3) 上野,「需要シミュレーションツールの開発(その3)事業所を含む地域全体の推定モデルへの拡張」,電力中央研究所 研究報告C18003(2019),経産省,「夏季/冬季の省エネ・節電メニュー」(2022)
4) 日本産業規格,「JIS Z 9110:2010 照明基準総則」(2010)
5) 井上,大野,「室内照度ならびに居住者の明るさに対する満足度 住宅内の照明環境に関する実態調査(その1)」,日本建築学会計画系論文集 63 巻,第507 号,pp.1-5(1998)
6) 厚生労働省,「事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令」(2021)
7) 成島,宗方,岩田,谷口,望月,「我が国のオフィス照明環境と執務者評価の変遷に関する研究」,日本建築学会環境系論文集 81 巻,第719 号,pp.49-56(2016)
8) Y. Akashi and J Neches: “Potential recommendations for illuminance reductions by load-shedding”, Lighting Research and Technology (2005)
9) 日本エネルギー経済研究所,「EDMC エネルギー・経済統計要覧」,理工図書(2022)の産業・業務・住宅部門の全部門における電力量kWhの合計値を総需要とし,これを基準に試算。
10) 本研究では,落着先の値の±5%に収束する時間を仕上り時間と称す。
11) 電力広域的運営推進機関,「一次調整力の広域調達について」,第31 回需給調整市場検討小委員会 資料2(2022)
12) IEEE: “IEEE Standard for Interconnection and Interoperability of Inverter-Based Resources (IBRs) Interconnecting with Associated Transmission Electric Power Systems”, IEEE Std 2800™-2022 (2022)
概要 (英文)
In Japan, it is an important issue to ensure decarbonized frequency control reserves for realizing decarbonization and ensuring frequency stability of power systems. In recent years, power consumption control of demand-side devices has been expected as one of the effective measures, and its potential as a frequency control reserve is required to be scrutinized. From this perspective, it is important to clarify the power control performance of major demand-side devices (lighting devices, air conditioners, etc.) and how it can be utilized in considering its impact on consumers.
Therefore, the authors estimated the controllable amount of power consumption of lighting devices considering the impact on consumers, constructed a prototype of emergency power consumption control for commercially available lighting devices, and experimentally validated its performance in laboratory tests. This report clarifies that lighting devices can contribute to ensuring frequency containment reserves and discusses issues and measures to utilize its potential.
報告書年度
2022
発行年月
2023/11
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
佐藤 勇人 |
グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門 |
共 |
安岡 絢子 |
グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門 |
共 |
増田 宗紀 |
グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
電力系統のレジリエンス | Power System Resilience |
周波数安定性 | Frequency Stability |
一次調整力 | Frequency Containment Reserve |
需要側機器 | Demand-Side Device |
照明機器 | Lighting Device |