電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
GD22023
タイトル(和文)
国内の遠方監視制御装置に対するIEC 61850の適用-遠方/直接制御権切替の実現方法-
タイトル(英文)
An Application of IEC 61850 to Telecontrol Systems in Japan - A Switching Method of Control Authority between Local/Remote Places -
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
電力流通設備の保護制御等を対象としているIEC 61850 を適用したIED1) が国内でも変電所を中心に導入され始めている。IED の展開が今後本格化した際,遠方監視制御装置(以下,テレコン子局)2) にもIEC 61850 を適用することで,動作の整合性や電気事業者における技術力を確保しやすくなる。テレコン子局にIEC 61850 を適用する際の課題の一つに,遠方/直接制御権の切替機能の実現がある。この機能に関して,IEC 61850 では複数の選択肢が存在し,かつ標準化対象外の点3) も多いため,国内電気事業者のニーズに応じた適切な方法を確立する必要がある。
目 的
テレコン子局にIEC 61850 を適用する場合における遠方/直接制御権切替の実現方法を提案する。また,提案した実現方法の実装を通じ,その適用可能性を評価する。
主な成果
1. 遠方/直接制御権切替の実現方法の提案
制御権の切替対象を,現在の変電所で運用されているパターンに基づいて変電所構内全体,制御区画4) ,回線5) の3 種類に整理した上で,それぞれにおける制御権切替の実現方法を提案した。いずれの方法も,システム構築における作業量等を勘案して,IEC61850 の中から適切な選択肢を用い,標準化対象外の範囲に関する仕様を定めた。具体的には,変電所構内全体の制御権については,テレコン子局において制御権を一括管理する方法とした。制御区画ごとの制御権については,テレコン子局において論理デバイス6)同士を木構造で関係づけ,各制御区画に対応させた論理デバイスで制御権を管理する方法とした(図1)。回線ごとの制御権については,各回線に対応させた論理デバイスで制御権を管理する方法とした。
2. 試作システムを用いた実現方法の適用可能性評価
実現方法の適用可能性を評価するために,図2 に示す構成を持つシステムを試作した。このシステムにおいて,制御権の切替対象に対応した3 パターンの論理ノードを実装し試験を行った。試験については, ①制御権の切替に応じて対応する論理ノードの値が適切に変更されるあるいは維持されること,②制御権の所在に応じて適切に判定できること,以上二つの観点に基づいて実施する内容を定めた。試験ケースの概要と試験結果を表1 に示す。試作システムはいずれの試験においても適切な動作を示したことから,制御権切替の実現方法が実用上で適用可能である見通しを得た。
注 1) Intelligent Electronic Device の略称。保護制御装置のこと。
2) IEC 61850 においては,プロキシ/ゲートウェイと呼ばれる装置が該当する。
3) 標準化されずに個別に定める必要のある仕様を指す。例えば,遠方/直接制御権を表すデータそのものは標準化されているが,それをどこに配置するかは個別に定める必要がある。
4) 変電所構内における主回路機器を電圧階級等で区分した単位を指す。
5) 送電線やバンク等の単位を指す。
6) IED の構成単位であり,複数の保護制御機能(論理ノード)を束ねて管理する役割を担う。
概要 (英文)
Installations of IEC 61850-based intelligent electronic devices (IEDs) to substations are gradually increasing in Japan. Also applying the standard to telecontrol systems is a promising approach to ensure data consistency and technical competence. One of the challenges in applying IEC 61850 to telecontrol systems is to establish a switching method of control authority between local and remote places because there are more than one IEC 61850-based switching method. This report proposes a solution for the control authority switching for each domain, i.e., substations, substation sections, and transmission lines. The proposed solutions are developed considering the system quality and the system developing cost. The test results using a prototype system with the proposed solutions exhibit that the proposed method for switching control authority has practical relevance.
報告書年度
2022
発行年月
2023/10
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
漁野 康紀 |
グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門 |
共 |
山下 広人 |
グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門 |
共 |
瀬戸 好弘 |
グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門 |
共 |
大谷 哲夫 |
グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門 |
共 |
水上 朋子 |
東芝エネルギーシステムズ株式会社 |
共 |
和田 大輔 |
三菱電機株式会社 |
共 |
小野 正幸 |
日本工営株式会社 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
国際標準 | International standard |
変電所 | Substation |
テレコン | Telecontrol system |
テレコン子局 | Proxy/Gateway |
IED | IED |