電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

GD22022

タイトル(和文)

大地電位上昇の影響を考慮可能な架空電力線から多点接地導体への電磁誘導評価手法の開発

タイトル(英文)

Development of a Method for Evaluating Voltages Induced on Multi-point Grounded Conductors by Magnetic Field Generated from Overhead Power Lines Considering Ground Potential Rise

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
架空電力線に流れる電流に起因して生じる通信線への電磁誘導評価においては,通信線に接触する人体の感電を防止する観点から,通信線への「誘導電圧(対地電圧)」を指標とした評価がなされており,誘導電圧が最大になる状況として,「金属性の通信線の片端が接地され,もう一方の端部に人体が接触する場合」が想定されている。一方,近年普及している光通信回線においては,一定の間隔ごとに接地されている金属性の吊架線に生じる誘導電圧を評価する必要がある注1)。従来の評価手法では,多点接地された吊架線の接地箇所周囲に生じる大地電位上昇分布を考慮しておらず,誘導電圧が過大に評価されるため,この大地電位上昇による影響を考慮可能な評価手法の開発が必要である。

目  的
接地箇所周囲に生じる大地電位上昇の影響を考慮可能な多点接地導体に対する電磁誘導電圧の評価手法を開発し,開発した評価手法を用いて実規模の通信設備に生じる誘導電圧の評価を行う。

主な成果
1. 大地電位上昇の影響を考慮可能な電磁誘導電圧評価手法の開発
従来法は,電力線から発生する磁界により生じる,片端接地された被誘導線の開放端での誘導電圧を計算することを目的とする。一方,この従来法を多点接地された被誘導線に適用した場合には,接地抵抗(遠方点を基準電位とする大地電位上昇を模擬)により接地を模擬するため,両端に発生する誘導電圧の最大値が過大に評価される(図1)。ここでは,三次元静電界計算プログラム注2)を用いて接地箇所周囲の大地電位上昇分布を計算し,この大地電位上昇と回路解析による電磁誘導電圧の計算結果の電位差を評価することで,接地箇所周囲の大地電位上昇の影響を考慮可能な誘導電圧の評価手法を開発した(図2)。
次に,開発した評価手法の妥当性を検証するため,赤城試験センターにおいて,電力線と被誘導線(多点接地導体)を模擬した縮小実験系を構築した(図3)。評価手法により得られた誘導電圧分布(被誘導線―大地間の電位差)の計算結果は,測定結果と10%以内の差で一致し,評価手法により実測結果を良好に再現できることを確認した(図4)。

2. 開発した評価手法を用いた実規模の通信設備に生じる電磁誘導電圧評価
本評価手法を通信設備の吊架線を対象にした計算配置注1)へ適用し,接地箇所周囲に生じる大地電位上昇を考慮した被誘導線の誘導電圧を計算した(図5)。この結果,実規模の通信設備を模擬した場合においても,大地電位上昇を考慮することにより,接地箇所周囲における誘導電圧が従来法に比べて低減されることを確認した(図6)。

注1)A. Nagao, N. Hirasawa, H. Ito, and R. Kobayashi: “Theoretical and Experimental evaluation of Electromagnetic induction from power line upon multi-points grounded conductors”, IEICE Communications Express, Vol. 8, No. 12, pp. 634‒639 (2019)
注2)電荷重畳法および表面電荷法に基づく三次元静電界計算プログラム [1]

関連報告書:[1] H09014「高次要素を用いた静電界計算プログラムの開発と電線のコロナ騒音評価への適用」(2010)

概要 (英文)

We have developed a method for evaluating voltages induced on a multi-point grounded overhead wire by magnetic fields generated from an overhead power line. Using an electrostatic field analysis along with a circuit analysis, induced voltages are evaluated with taking into account the effect of ground potential rises around the earth electrodes of the grounded overhead wire. Unlike conventional circuit-theory-based simulation techniques, in the developed method, we can calculate voltage differences between the overhead wire and the ground surface in a straightforward manner for evaluating induced voltages. The developed method was compared with measured results obtained using a scale-down model, and we confirmed that the calculated results using the developed method were in good agreement with the measured results. In addition, it was found that induced voltages when the effect of ground potential rises around earth electrodes was taken into account decreased by about 10% for a case of a parallel-wire length of 300 m compared with results obtained by ignoring the effect of the ground potential rises, and that the ground potential rises had a smaller effect on the induced voltages for a longer parallel length. The induced voltages were smaller within an approximately 1-m distance of the earth electrodes by considering the effect of the ground potential rises.

報告書年度

2022

発行年月

2023/09

報告者

担当氏名所属

椎名 健雄

グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門

立松 明芳

グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門

キーワード

和文英文
電磁誘導 Magnetic field induction
架空電力線 Overhead power line
大地電位上昇 Ground potential rise
誘導電圧 Induced voltage
静電界解析 Electrostatic field analysis
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry