電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

GD22021

タイトル(和文)

IEC 61850プロセスバスを適用した保護リレーシステムの高速・高精度な不稼働率の計算法

タイトル(英文)

A Fast and Accurate Calculation Method of Availability for Protection Relays Applying IEC 61850 Process Bus

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背 景
国内の変電所に対するIEC 61850 の適用拡大に伴い,高い信頼度が要求される保護リレーシステムにもプロセスバス1)の適用が期待されている。プロセスバスを適用した保護リレーシステム(以下,プロセスバス適用システム)に対しては,信頼度を確保する観点から,通信経路の冗長化方式であるPRPやHSR2)の適用が推奨されている。プロセスバスの構成検討には信頼度の主要な指標である不稼働率の評価が不可欠であるが,MU/IED3)の台数が増加すると,従来の真理値表を用いた方法(真理値表法4))では高精度かつ高速な計算は困難である。
目 的
PRP やHSR を組み合わせた構成のプロセスバス適用システムに対する,高精度かつ高速な不稼働率計算手法を提案する。提案手法を従来の真理値表法と比較し,手法の有効性を示す。
主な成果
1. プロセスバス適用システムの不稼働率計算手法の提案
PRP やHSRを組み合わせたプロセスバス適用システム構成(図1)に対し,MU/IEDグループ5)毎に中継区間の右ルート・左ルートと通信可能となる確率の計算式を導出した。さらにMU/IED グループ間が通信可能となるための各階層状態の組み合わせを列挙する(表1)ことで,全体の不稼働率を算出する手法を提案した。真理値表法は装置単位で稼働・不稼働の組み合わせを考慮するため,計算時間と精度がトレードオフになる。これに対し提案手法は,MU/IEDグループ単位で通信可否の組み合わせを考慮するため,その数が少なく,高速かつ厳密な不稼働率計算が可能である。また,様々なグループの構成を考慮できるため,多様な構成のプロセスバス適用システムの不稼働率を簡易に計算することが可能である。
2. 最大規模の母線保護用プロセスバス適用システムを対象とした評価
500 kV 変電所を想定し,MU/IED の台数が最大である母線保護について,プロセスバス適用システムの不稼働率を算出した(表2)。真理値表法では, MU グループ数の増加に伴い指数的に計算時間が長くなっており,最大誤差も拡大している。これに対し提案手法は,全ての組み合わせにおいて1 秒以内に厳密な値を算出可能であり,複数のプロセスバス適用システムの構成を不稼働率面から比較評価する際に活用できる。
注1) IEC 61850-9-2 で規定される通信網。主機器の近傍に設置され主機器の監視や電流・電圧の計測を行う装置をプロセスレベルの装置,制御室内に設置され制御や保護演算を行う装置をベイレベルの装置と呼び,その間の通信網をプロセスバスと呼ぶ。
2) IEC 62439-3 で規定されている冗長化方式。PRP(Parallel Redundancy Protocol)はLAN を2 重化し並列に接続する冗長化方式で,HSR(High-availability Seamless Redundancy)はリング構成による冗長化方式である。
3) プロセスバス適用システムでは,保護リレー装置の入出力機能と演算機能を分離し,入出力機能をプロセスレベルの装置であるMU(Merging Unit)に,演算機能をベイレベルの装置であるIED(Intelligent ElectricDevice)に搭載する。
4) システムを構成する全ての装置の稼働・不稼働の組み合わせとそのときのシステムの稼働・不稼働を真理値表に書き表し,不稼働となる組み合わせの確率を足し合わせる計算方法である。装置の稼働・不稼働の組み合わせ数が膨大なため,同時に不稼働となる装置の台数に制限を設ける近似計算を行う。同時に不稼働となる台数を増やすと計算精度は上がるが,計算時間は長くなる。
5) 本報告では,PRP またはHSR で冗長化されている最小単位をMU/IED グループと呼ぶ。図1 のように,PRP の場合は2 台のL2 スイッチとそれに接続するMU/IED であり,HSR の場合は1 つのリングである。

概要 (英文)

As an application of IEC 61850 to substations in Japan progresses, expectations are growing for the application of process buses to protection relay systems, which have strict requirements regarding availability. In order to increase the availability of process buses, an application of PRP/HSR, which are redundancy schemes defined in the IEC 62439-3 standard, is recommended. However, no accurate and fast availability calculation methods have been made so far.
In this report, we proposed a method to calculate the availability of process buses combining PRP and/or HSR by dividing them into layers. While the truth table method involves a trade-off between accuracy and computation time, this method is unaffected by the number of devices and enables fast and exact availability calculations. As a result of applying the proposed method and the truth table method to a busbar protection relay system with a process bus, it was shown that the proposed method can output an exact solution within 1 second for the process bus configuration, whereas the truth table method could not calculate a highly accurate solution in a practical time.

報告書年度

2022

発行年月

2023/08

報告者

担当氏名所属

田中 彰浩

グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門

大場 英二

グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門

キーワード

和文英文
IEC 61850 IEC 61850
プロセスバス process bus
不稼働率 availability
PRP Parallel Redundancy Protocol
HSR High-availability Seamless Redundancy
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry