電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

GD22018

タイトル(和文)

Grid-Formingインバータにおける電力動揺減衰制御に関する基礎研究

タイトル(英文)

A Fundamental Study on Power Oscillation Damping Control of Grid-Forming Inverters

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背 景
再生可能エネルギーの大量導入および同期発電機(同期機)の並列容量減少に伴う系統安定性の低下対策のひとつとして,Grid-forming インバータ(GFM)に注目が集まっている。系統周波数の維持に対する貢献が期待されるものとして,同期機の動揺方程式を適用したGFM が提案されているが,同GFM は外乱発生時において同期機と同様に電圧位相角や出力等が動揺する特性を有する。系統安定性維持の観点からは,この動揺を速やかに減衰(ダンピング)させることが望ましい。
目 的
同期機の動揺方程式を適用したGFMにおけるダンピング面の課題を明らかにする。また,GFMのダンピングに寄与する種々の制御方式について特徴を評価する。
主な成果
1. 電源脱落による周波数低下時におけるGFM のダンピング面の課題
電力系統動特性解析プログラム(Y 法)上でGFM モデル1)(図1)を構築し,電源脱落により大幅な周波数低下が生じた場合の応答を分析した。その結果,GFM において一般に考慮される制動項(図1 の緑囲み部分)による出力がリミッタ2)に到達している間,ダンピングに寄与する要素が無くなり,有効電力の検出遅れによっては動揺が発散傾向となる場合があることを示した3)(図2)。この課題の対策のため,大幅な周波数低下時でもダンピングに寄与する制御を制動項とは別に設ける必要があると考えられる。
2. GFM のダンピングに寄与する種々の制御方式の評価
ダンピングに寄与する制御方式として,過去に提案されている3方式の他に今回2方式を考案し,Y 法シミュレーション解析や固有値解析等から各方式の特徴を明らかにした。図3 に示した方式について,大幅な周波数低下時の影響や系統条件の変化4)に対するロバスト性など,実運用上で考慮すべき観点から評価した結果の抜粋を表1 に示す。これらの特徴や留意点を考慮し,GFM 導入の目的に応じて適切な方式を適用することが重要と考えられる。また,考案方式(Z2)は他方式に比べ簡単な構成であり,周波数低下の過程で過渡的な出力増加を引き起こさず,系統条件の変化に対してロバスト性が高い特長を有しているため,有用な制御方式の一つになることが期待される。
注1) 研究用途に構築したプロトタイプモデル。なお本モデルでは,背後に蓄電池相当の電源が設置されていることを想定している。
2) GFMのハードウェア上の各種制約(蓄電池の容量制約やGFMの過電流制約等)に到達することを極力避けるために,大幅な周波数変動時における出力変動を制限する手段のひとつとして,制動項にリミッタが設けられることが想定される。本報告書では,制動項にリミッタが設けられることを前提としてモデルを構築している。
3) 蓄電池が有効電力を吸収している場合,負荷脱落等により周波数が大幅に上昇した際も,同様の現象が生じると考えられる。
4) 具体的には連系点の短絡容量およびGFMの出力の変化。

概要 (英文)

Grid-forming inverters (GFM) have been studied as a solution to the degradation of power system stability when synchronous generators are displaced with renewable energy sources. Although GFM applying the swing equation of synchronous machines is expected to contribute to frequency stability, it may cause power swings when external disturbances occur.
This paper clarifies the issues in the power oscillation damping of GFM by applying the swing equation of a synchronous machine and summarizes examples of characterization of the control schemes that contribute to the power oscillation damping of GFM. Time-domain simulations show that the power oscillation damping may be deteriorated during significant frequency fluctuations when the capacity constraints of the converters and detection delays of the active power output are taken into account. The control schemes that contribute to the power oscillation damping of GFM were classified. It was clarified that they differ regarding the need for a frequency measurement device and the number of parameters, among other factors. Various studies have also revealed the effect on the capacity constraints of the converters, the robustness against system changes, and a small-signal stability.

報告書年度

2022

発行年月

2023/09

報告者

担当氏名所属

平川 遼太郎

グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門

白崎 圭亮

グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門

天野 博之

グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門

キーワード

和文英文
系統安定性 Power system stability
電力動揺 Power swing oscillation
Grid-formingインバータ Grid-forming Inverter
ダンピングトルク Damping torque
固有値解析 Eigenvalue analysis
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