電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

GD22017

タイトル(和文)

インバータ連系電源の導入拡大が系統保護へ及ぼす影響の評価-故障計算用単相インバータモデルの開発-

タイトル(英文)

Evaluation of the Impact of Large-scale Penetration of Inverter-Based Resources on Protection Relays - Development of a Single-phase Inverter Model for Fault Calculation -

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背 景
近年,太陽光発電(PV)を中心にインバータ連系電源が系統に大量導入されており,住宅向けPVとして単相インバータが配電系統に多く連系されている。しかしながら,単相インバータの導入拡大が特別高圧系統の保護リレーへ及ぼす影響は十分に明らかになっていない。このため,保護リレー整定検討で用いる故障計算用の単相インバータモデルの開発が必要とされている。
目 的
実機の単相インバータの事故時の供給電流特性を試験で明らかにし,その特性に基づき故障計算用単相インバータモデルを開発する。また,開発した単相インバータモデルを用いて,抵抗接地系で広汎に適用される送電線保護リレーへの影響を明らかにする。
主な成果
1. 故障計算用単相インバータモデルの開発
電力系統シミュレータで,同じ型式の3 台の単相インバータを各線間に連系して試験した(図1)。系統事故による電圧低下時には単相インバータの出力が直流電源の出力になるように電流の大きさや位相を変えて制御するが,電気的諸量の変動が小さくなるまでには時間を要した(図2)。また,ある線間の単相インバータが事故時に停止する場合や二相短絡の場合には,系統側からみると三相不平衡である電流を供給する(図3)。これらの単相インバータの事故時の供給電流特性を基に,保護リレーの整定検討で利用できるように,次の特徴を有する単相インバータモデルを開発した。なお,単相インバータが三相平衡に連系されていることが前提のモデルである。
・事故直後の供給電流1)およびインバータ制御後の供給電流を模擬可能
・一部の線間の単相インバータが事故時に停止する場合の供給電流を模擬可能
・平衡事故および不平衡事故時の供給電流を模擬可能
また,単相インバータモデルは三相不平衡電流を供給する場合があるため,逆相電流を注入できるように故障計算プログラム2) ,3)を拡張した(図4)。
2. 単相インバータ導入拡大時の保護リレーへの影響
抵抗接地系で送電線保護として広汎に適用されるPCM 電流差動リレー,回線選択リレー,距離リレーを対象に単相インバータ導入拡大による影響を検証し以下を確認した。
・PCM 電流差動リレーは短絡容量が低下した場合でも保護リレーの動作に影響がない。
・回線選択リレーや距離リレーについて,ある線間の単相インバータが停止するケースやリレー動作までにPLL の追従が完了していないケースでは,短絡容量低下に伴い保護リレーの測距インピーダンスが変わり動作に影響を与える懸念がある(図5)。
注 1) ここでの事故直後の供給電流とは,事故前の電圧位相に基づく電流のことを指す。
2) 田中,竹中. 大規模電力系統の多点故障計算プログラムの開発. 電力中央研究所 研究報告T92034. 1993.
3) 会田. インバータ連系電源の大量導入時の系統保護に関する基礎検討-故障計算用インバータ連系電源モデルの開発-. 電力中央研究所 研究報告R20001 において,故障計算用の三相インバータ用モデルを開発している。

概要 (英文)

The feed-in tariff scheme introduced in 2012 has led to a significant increase in photovoltaic (PV) generation throughout Japan. Many single-phase inverters for residential use have also been introduced, and reverse power flow at distribution substations has also become prominent. On the other hand, the impact of the increased introduction of single-phase inverters on the operation of protection relays has not been evaluated. Therefore, the Central Research Institute of Electric Power Industry developed a single-phase inverter model as a fault calculation program to study the settings of protection relays. The actual single-phase inverters were tested in CRIEPI experimental laboratory to determine their characteristics for three-phase balanced and unbalanced faults. A single-phase inverter model was developed based on the test results. The developed model was used to simulate medium-voltage system failures, and to study the impact of the expanded introduction of single-phase inverters on protection relays. The results showed that the operation of the current differential relays was not affected, but a decrease in short-circuit capacitance could cause malfunctions of the transverse differential protection relays and the distance relays.

報告書年度

2022

発行年月

2023/09

報告者

担当氏名所属

会田 峻介

グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門

キーワード

和文英文
単相インバータ Single-phase Inverter
故障計算 Fault Calculation
保護リレー Protection Relay
系統事故 System Fault
電力系統 Electric Power System
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