電力中央研究所

報告書「電力中央研究所報告」は当研究所の研究成果を取りまとめた刊行物として、昭和28年より発行されております。 一部の報告書はPDF形式で全文をダウンロードすることができます。

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

GD22015

タイトル(和文)

需給構造の変化に対応した電圧運用制御の高度化に向けたVQCシミュレータの改良

タイトル(英文)

Improvement of the VQC simulator for upgrading voltage operation and control in response to structural changes in supply and demand

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背 景
カーボンニュートラルな電力系統の実現に向けて,再生可能エネルギー電源(以下,再エネ)の導入は今後も拡大し,これにより同期発電機(SG)の並列台数は減少し,需給構造は大きく変化していくことが予想される。このような将来状況においても電力系統の安定性を確保するためには,系統状況に応じて制御整定値や目標値を動的に変更する,予測情報に基づき先行制御を行うなど,より高度な電圧・無効電力制御(VQC)を開発・適用していく必要がある。当所では平常時の電圧維持を分析・評価するVQC シミュレータ1)(以下,VQCsim)を開発しているが,需給構造の変化に対応した,より高度なVQCの実効性を解析するためには,さらなる機能改良が求められる。
目 的
既開発のVQCsim に対して,電圧運用制御の高度化の検討に必要な機能改良を行い,その有効性を確認する。
主な成果
1. VQCsim の機能改良
既開発のVQCsimに対して以下の改良を行った(図1)。
(1)電力設備モデルの拡充,再エネ出力・負荷の設定機能の拡充
今後,導入拡大が予想されるSVC,STATCOM,蓄電池についてCPAT2)に実装されている静特性モデルをVQCsim で扱えるようにした(図2)。また,再エネの出力は不確定性と変動性を有するものであり,その条件設定の効率化が求められる。そこで,既開発1)の気象データに基づく出力設定機能に加えて,需給運用で想定されるエリア内の出力総和量から各設備の容量に基づき出力を配分する機能を実装した(図3)。
(2)VQC モデリング支援機能の高度化
様々な系統状況の電圧維持に対応するためには,制御整定値や目標値の動的な変更,または予測情報を活用した先行制御などが考えられる。そこで,VQC モデリング支援機能の高度化として,制御部品(Vblock)の拡充,制御ユニット(Vunit)間の連携(制御整定値・目標値の受け渡し),VQCにおける予測情報の活用を可能とした(図4)。
(3)計算機能の拡充
多角的に平常時の系統状況を把握するため,VQCsimと連動して短絡容量を一定周期で計算する機能や,ユーザが指定した任意のイベント情報(送電線開放,負荷変化等)を反映した系統の電圧・潮流状況を予測計算する機能を実装した。
2. モデル系統を用いたVQCsim の有効性確認
実装した電力設備・制御モデル及び機能について,モデル系統を用いて各種開発機能について検証した。図5 のモデル系統を用いた試算では,動的な整定値変更が模擬可能であること,これによりVQC の制御効果を動的に変更し,電圧が低下している時間帯に監視無効電力潮流を目標値付近に維持できることを確認した(図6)。
注1) R19003「需給構造の変化と電圧制御の高度化に対応したVQC シミュレーションツールの開発―基本解析機能を実装したプロトタイプ版―」(2020.06)
2) T90072「電圧安定運用のための実用的解析プログラムの開発―系統電圧静的解析プログラム―」(1991.06)

概要 (英文)

The introduction of renewable energy sources is expected to increase to achieve a carbon-neutral power system. This will cause a decrease in the number of synchronous generators in power system operations, and the supply and demand structure are expected to change significantly. Under these future conditions, more advanced and stable voltage controls must be developed and applied to ensure the stability of the power system. Therefore, we have upgraded the Voltage and Reactive power Control (VQC) simulator that can analyze and evaluate the steady-state voltage controls in future low-carbon power systems. This paper summarizes the improvements made to the VQC simulator and the results of its verification. The main improvements are as follows.
(1) Implementation of static characteristic models for SVC/STATCOM/Battery
(2) Implementation of output power setting function for load and renewable energy equipment models
(3) Expansion of control components for modeling VQC, hierarchical coordination capabilities between VQC models, and addition of standard VQC model at a substation
(4) Short circuit capacity calculation and prediction calculation functions to set events for any system operation or situation change (including contingency calculation)
The effectiveness of the developed functions was verified using model systems (simple load model, IEEE14 model, IEEJ 10-machine model).

報告書年度

2022

発行年月

2023/05

報告者

担当氏名所属

小関 英雄

グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門

野本 悟史

グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門

キーワード

和文英文
送電系統 Transmission Network
VQC Voltage and Reactive Power (Q) Control
再生可能エネルギー電源 Renewable Energy Resources
潮流計算 Load Flow Calculation
シミュレーション Simulation
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry