電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
GD22012
タイトル(和文)
PV・EV大量導入時の小地域レベルでのネット電力需要の想定手法の考案
タイトル(英文)
Methodology for Assuming Net Electricity Demand at the Detailed Regional Level At the Time of Mass PV/EV Introduction
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
カーボンニュートラル(CN)の達成に向け、地域脱炭素の機運が高まっており、太陽光発電(PV)の更なる普及や、電気自動車(EV)の普及が期待されている。さらに実効的な地域脱炭素を実現するためには、PV やEV の大量導入時の電力系統や災害時の対応等を検討する必要があり、そのためには地域のネット電力需要1)の定量的な将来想定が必要であるが、想定方法は未発達である。
目 的
将来のPV・EV の導入シナリオに基づいて、各地域の電力需要を定量的に想定する手法を考案し、愛知県を対象に試算を行う。
主な成果
1. 小地域レベルでのネット電力需要カーブの計算方法の考案
当所既開発のシミュレータを組み合わせて、日本国内の各地域のネット電力需要を想定する手法を考案した(図1)。当該手法では、公開統計情報等をもとに各地域の住宅や事業所における電力消費及びPV 発電量を想定する需要シミュレータと、大量のEV を仮想的に走らせて充電需要を想定するEVオリエンターを組み合わせることで、将来のネット電力需要カーブを計算する。
2. PV・EV の普及シナリオに基づく愛知県のネット電力需要カーブの試算
政府等の複数主体におけるPV・EV の将来導入量に関する目標や想定、住宅戸数の変化やPVの実績導入量に基づいて、愛知県を対象に、2050年までの乗用車EV、非住宅PV、住宅用PV の導入量に関するシナリオ(表1)を想定し、県内の全13,000 余の町丁字を対象にネット電力需要の試算を行った。
・県全体の年間需要量は、住宅数の減少やPV の普及に伴い減少する。ただし、EV が政府目標通りに普及し、PV の普及が緩やかとなるシナリオ(EV シナリオ)では、減少は緩
やかとなる(図2)。
・2050 年時点では、シナリオによらず県全体の需要カーブのダックカーブ化が進む。特に電力負荷の少ない5 月休日にその傾向が著しく、PV が政府目標通りに普及すると、2020 年と比べて昼間のネット電力需要が4GW減少し、県全体のネット電力需要がマイナスとなる時刻がある(図3)。
・ネット電力需要への影響は地域によって異なり、名古屋市中心部では影響は小さい。一方、郊外では影響が大きく、地域によっては一時的にも、年間合計値としてもマイナスとなる(図4)。
今後の展開
事業所の電力需要の変動等、他の将来要素を考慮し、需要想定の精緻化を行う。
1) ここでは、住宅や事業所における消費電力(電力負荷)に加え、需要家サイドに設置された分散型電源による発電も含めた需要のこと。ネット電力需要=消費(負荷)-発電とし、マイナスの場合、供給側への逆潮流となる。
関連報告書:
[1] GD21007「全国町丁字別のPV導入量を考慮した地域レベルの電力需要カーブの推定手法の構築」(2022.4)
概要 (英文)
To promote decarbonization while ensuring the reliability of electricity supply in the future, it is necessary to develop a method to assume net electricity demand that considers the diffusion of PV and EVs, targeting detailed regional levels such as towns and villages. Therefore, a method to calculate electricity demand in the region based on scenarios regarding the future introduction of PV and EVs to the region were developed and were conducted trial calculations for Aichi Prefecture. The main findings are as follows: 1) Annual net electricity demand in Aichi Prefecture as a whole will tend to decline as the number of residences decreases and PV penetration increases; if only EVs are deployed as targeted by the government and PV penetration is slow, the decline will be moderate. 2) As of 2050, regardless of scenario, the demand curve will be duckcurved in Aichi Prefecture as a whole. This trend will be particularly severe during May holidays when electricity load is low, and net electricity demand will be negative in Aichi Prefecture as a whole if PV penetration is as high as the government target.3) The impact on net electricity demand will vary by region, with a small impact in the central Nagoya area, but a larger impact
in the suburbs, and an increase in the number of regions where net electricity demand will be negative, either temporarily or as an annual total.
報告書年度
2022
発行年月
2023/05
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
上野 剛 |
グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門 |
共 |
高木 雅昭 |
グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門 |
共 |
安田 昇平 |
グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
太陽光発電 | Photovoltaic System |
電気自動車 | Electric Vehicle |
電力需要 | Electric Power Demand |
統計データ | Statistical Data |
地理情報システム | Geographic Information System |