電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
GD22011
タイトル(和文)
住宅のレジリエンス向上に資する技術の開発 ―電力ひっ迫時等にエアコンを利用可能にする外部制御装置の試作―
タイトル(英文)
Development of Technologies for Improving Resilience of Residential Buildings - Prototype of an External Control Device to Make Air Conditioners Available During Power Shortage -
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
寒波襲来時や災害時の電力需給ひっ迫や停電を回避するために、エネルギーに関する住宅のレジリエンス性向上が求められており、対策の一つとして消費電力の一時的な上限設定1)が検討されている。しかし、エアコンは負荷に追従して消費電力が大きくなるため2)、対策が必要である。
目 的
エアコンを外部から簡易に制御することによって、消費電力(電流)3)を設定値以下に抑える装置を試作し、実験用模擬住宅4)でその特性を把握する。
主な成果
1. 電流を目標値以下に抑えるためのエアコンの簡易制御装置の構築
電流センサ・温度センサと学習リモコンを用いて、エアコンの消費電流及びエアコン吸込口近傍の空気温度(吸込温度)の測定値に応じてエアコンの設定温度・風量を変更し、エアコンの電流を目標値以下に抑えるための制御装置を構築した(図1)。同装置は安価な市販品のみを組み合わせており、またエアコンを外部から制御する方式のためエアコン自体の改造が不要で、汎用性・拡張性に優れるという特長を持つ。
2. 動作確認試験による特性の把握
当所の実験用模擬住宅において上記装置の暖房・冷房時の動作確認試験5)を行い、①安定運転時や負荷の変動が小さい場合には、電流目標値以下に概ね収まるように制御が行えること(図2)、②電流を同様の目標値以下に抑えた場合の実現温度は住宅の断熱性能によって異なること(同図2)、③温度・風量の制御よりも温度のみの制御の方が電流値・吸込温度の変動が小さいこと(図3)等を確認した。
一方で、試験対象機種ではエアコン起動直後、吸込温度が設定温度と大きく離れている場合には初期の電流値が大きくなることが分かった(図4)。
今後の展開
停電時の活用が期待されているポータブル電源(蓄電池+PV)と組み合わせた試験を行い、本装置による電流抑制効果を確認する。
注1) 次世代スマートメータでは遠隔から計量器の電流値上限を変更することで設定値以上の利用を制限する機能の搭載が検討されている。
2) 現在日本で用いられているエアコンはインバータによってコンプレッサの回転数を制御する。コンプレッサの回転数を上げ、冷媒循環量が多くなるほど、多くの消費電力を要する。
3) 本来、消費電力の計測・制御を行いたいが、ここでは計測システムの簡易さを優先し、エアコンの電流値を代替として計測・制御を行う。
4) 当所「冷暖房試験設備」での試験。異なる断熱性能(等級2 住宅(旧省エネ基準相当=低断熱)、等級4 住宅(次世代省エネ基準相当=高断熱))を持つ試験住宅2棟(平屋建、リビングダイニング室+廊下)。試験住宅は温度制御された環境試験室内に設置されている。
5) 暖房時試験では外気温を2℃一定とし、室内発熱を変動させない定常試験、同変動させる変動負荷試験、吸込温度の低い段階から起動させる立ち上がり試験を行った。冷房時試験では外気温を35℃一定とし、変動負荷試験を行った。
関連報告書:
[1] GD21006「人感センサを備えたエアコンの空気流制御機能が室内温熱環境へ及ぼす影響の把握」(2022.4)
概要 (英文)
There is a need for air conditioners that can provide a minimum acceptable thermal environment within a limited power supply to improve the resilience of the residential buildings. Therefore, we constructed a simple device to control air conditioners from the outside so that power consumption can be controlled within a target range and conducted tests in an experimental house to understand the characteristics of the device.
The main results are as follows. 1) A simple control device for air conditioners to maintain the target current range are constructed. This device combines only inexpensive commercial products, and because it controls the air conditioner externally, it does not require modification of the air conditioner itself, making it highly versatile and scalable. 2) Operation verification tests of the device during heating and cooling in an experimental house are constructed and confirmed that the device can be controlled to stay within the specified current range during stable operation and when the load fluctuation is small.
報告書年度
2022
発行年月
2023/05
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
上野 剛 |
グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門 |
共 |
安田 昇平 |
グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門 |
共 |
宮永 俊之 |
グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
家庭用エアコン | Room Air Conditioner |
住宅レジリエンス | Resilience of the Residential Buildings |
電流制限 | Current Limit |
電力ひっ迫 | Power Shortage |
室内温熱環境 | Indoor Thermal Environment |