電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

GD22009

タイトル(和文)

広域負荷周波数制御へのエリア間連系線運用容量制約の組込みとその影響評価

タイトル(英文)

Incorporation and Analysis of Tie-line Available Transfer Capability Constraints into Cross-Regional Load Frequency Control

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
 わが国では周波数制御を効率的に行うため,既存の負荷周波数制御(LFC)機能を活用した広域的なLFC(現状活用案の広域LFC)が2026年度に開始される予定である1)。その実現に向け,これまで当所では制御手法の提案および有効性検証を行ってきた2)。ただし,広域LFCの実現可能性を早急に検討するため,既提案手法ではエリア間連系線の運用容量制約3)(連系線制約)を考慮しておらず,連系線の制御目標値が運用容量を超過する場合があった。このため,実系統への既提案手法の適用にあたっては,連系線制約を考慮し,その制約下における広域LFCの効果を検証する必要がある。

目  的
 既提案手法に連系線制約を組み込む。また,連系線制約下において,広域LFCが周波数面やコスト面等へ与える効果をシミュレーションにより明らかにする。

主な成果
1. 既提案の広域LFC手法への連系線制約の組込み
 既提案手法では,まず周波数品質を向上するため,連系系統全体の地域要求量(AR)をLFCの対象ユニット(LFC対象機)の出力変化速度比で各エリアに配分する。次にLFCによる調整コストを低減するため,連系系統全体の既LFC動作量3)をLFC対象機の調整単価順で各エリアに配分する。この二つの配分計算に対してそれぞれ以下の連系線制約を設けるとともに,これらの制約条件を満たすための計算方法を考案した。
・AR配分では,同配分による連系線制御目標値の変化量が,連系線の空容量以内となるようにする(図1左下)。
・既提案手法では周波数品質を重視し,AR配分を優先する。このため,既LFC動作量の配分では,同配分による連系線制御目標値の変化量が,AR配分後における連系線の空容量以内となるようにする(図1右下)。

2. 連系線制約を考慮した広域LFCによる各種効果の検証
 中国・九州間連系線(関門連系線)の中国向き空容量がない場合(関門連系線の計画値=中国向き運用容量の場合)における中西地域の広域LFCのシミュレーション結果を図2に示す4)。連系線制約を考慮した広域LFCはエリア毎のLFCと比べて,関門連系線の中国向き運用容量からの逸脱電力量5)を低減しつつ,周波数変動や発電コスト6)も低減できることを明らかにした(図2)。

注1) 「二次調整力①広域運用の検討状況について」,第18回需給調整市場検討小委員会 資料5,2020-8.
2) 例えば,徳光,天野:「周波数品質の維持・向上と二次調整力①の運用コスト低減を両立する広域LFC手法の提案」,電力中央研究所報告R20002,2021-4.
3) 当該時点におけるLFCによる出力変化量 [kW]。
4) 関門連系線の中国向き空容量は他の連系線と比較して小さい場合が多いため,シミュレーションケースとして選定。また,広域LFCのシミュレーションは,日本の電力系統を模擬したモデルを用いて実施。徳光,天野:「全国10エリアの需給・周波数シミュレーションモデルの開発」,電力中央研究所報告R18003,2019-6.
5) 連系線の運用容量は需要の変動等により生じる実潮流と制御目標値の偏差を考慮して設定される。このため,実潮流が運用容量からある程度逸脱しても,連系線の安定限界潮流には至らない。
6) 各発電機の発電電力量[kWh]×単価[円/kWh]の合計値。

概要 (英文)

In Japan, to ensure more efficient and economical operation of automatic frequency restoration reserves (aFRR), cross-regional load frequency control (CRLFC) will be introduced in FY 2026, which involves the sharing and cooperation of aFRRs between control areas. Therefore, we have proposed CRLFC method to realize both the improvement of the frequency quality and the reduction of the aFRR activation cost. The proposed CRLFC calculates the area requirement (AR) and already activated aFRR interchange values between control areas (CAs). However, tie-line available transfer capability (ATC) constraints have not been considered in this calculation.
In this study, we incorporate tie-line ATC constraints into the proposed CRLFC. The proposed CRLFC determines the aFRR interchange values using two distributions to CAs, namely, a pro-rata distribution of the net AR and a merit-order distribution of the net already activated aFRR. In the pro-rata distribution of the net AR, the AR interchange values are calculated within the tie-line ATC. In the merit-order distribution of the net already activated aFRR, interchange values of the already activated aFRR values are calculated within the remaining tie-line ATC after the pro-rata distribution of the net AR.
To evaluate of the influence of incorporating tie-line ATC constraints into the proposed CRLFC, we performed the time-domain simulations using the detailed western Japanese power system model. The simulation results show that the proposed CRLFC incorporated the tie-line ATC constraints can reduce the frequency deviation, the aFRR activation cost and the tie-line power deviation than the current localized LFC without CRLFC.

報告書年度

2022

発行年月

2023/04

報告者

担当氏名所属

徳光 啓太

グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門

天野 博之

グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門

キーワード

和文英文
二次調整力① Automatic frequency restoration reserve
広域運用 Cross-regional cooperation
負荷周波数制御 Load frequency control
シミュレーション Simulation
連系線 Tie-line
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