電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
GD22008
タイトル(和文)
変圧器加圧時の励磁突入電流および電圧低下率の解析式に基づく簡易計算手法の提案 ― 変圧器のスター結線側から加圧した場合 ―
タイトル(英文)
A Simplified Calculation Method based on Analytical Formulas for Inrush Currents and Voltage Drops During Energization from the Star Connected Side
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
発変電所や需要家の変圧器を加圧する際,過大な励磁突入電流が流れ,瞬時電圧低下が生じる場合がある。瞬時電圧低下の幅(電圧低下率)が問題となる水準 1)を超えると,その抑制対策が必要となるため,変圧器やこれを含む設備を新規に連系する場合などには,事前に電圧低下率を計算し,対策の要否が検討される。適切な対策を行う観点から,可能な範囲で高精度な計算が求められるが,精度の高い手法として知られる瞬時値解析を用いた手法 2)は,瞬時値解析に不慣れな技術者には取り扱いがやや煩雑で実務への適用は難しい。このため,簡便かつ高精度に計算可能な手法が求められている。
目 的
発変電所や需要家の変圧器を加圧した際に流れる励磁突入電流および電圧低下率を,簡便かつ高精度に計算可能な手法を提案する。
主な成果
1. 解析対象となる変圧器励磁回路の簡略化と解析式の導出
対策検討の対象となる回路は,通常は変圧器の結線を除いてその構成が変化しないため,回路から得られる連立微分方程式の解析解をあらかじめ求めておけば,変圧器や系統のパラメータを与えるだけで各部の電圧や電流を直ちに求めることができる。このとき,非線形な磁気飽和特性を持つ励磁インダクタンスをいかに扱うかが重要となる。そこで,励磁インダクタンスを,飽和時のインダクタンスと,巻線の磁束が一定値を超えると動作するスイッチの組み合わせで簡略化して回路を単純な線形回路にするとともに,8通りのスイッチ開閉状態(モード)ごとに,スター結線側を加圧したときの巻線の磁束,電流の解(指数関数と三角関数からなる数式。以降,解析式と呼ぶ)を導出した(図1)。巻線の磁束によりモードを移行しながら解析式を切り替えて計算する手法(提案手法)により,系統各部の電圧や電流の時間推移を簡単に計算できる(図2)。
2. 瞬時値解析プログラムを用いた詳細計算との比較による提案手法の検証
提案手法を実装し,3種類の接地方式(直接接地,非接地,抵抗接地)ごとに変圧器加圧時の励磁突入電流および電圧低下率を計算した。非線形の電流-磁束特性を精緻に扱った 3)瞬時値解析による手法と計算結果を比較したところ,励磁突入電流および電圧低下率の時間推移はよく一致した(図3)。
以上により,変圧器のスター結線側を加圧したときの励磁突入電流および電圧低下率を簡便かつ高精度に計算できる手法が提案できた。
注1) 例えば,高圧配電線に発電設備等を連系する場合,瞬時電圧低下は常時電圧の10 % 以内となるよう,系統連系技術要件に規定されている。特別高圧電線路への連系時についても,同様の要件の整備が電力広域的運営推進機関グリッドコード検討会において現在検討されている。
2)EMTP やXTAP などの瞬時値解析プログラム上に変圧器を加圧する系統モデルを構築し,これを用いて解析を行う。
3) 専用の励磁回路モデルにより,磁気飽和とヒステリシスを含む滑らかな電流-磁束特性を模擬している。
概要 (英文)
If an instantaneous voltage drop gets lower than a certain threshold at the moment when a transformer is energized, its mitigation is required. For this reason, when a transformer is newly interconnected, the voltage drop is calculated in advance and the need for its mitigation is considered. From the viewpoint of preventing unnecessary countermeasures, highly accurate calculations are required. However, electromagnetic transient analysis, which is known as a method with high accuracy, is not practical because its operation is rather complicated. In this paper, the analytical circuit is simplified by simulating the magnetizing inductance of the transformer with the inductance and the series connection of the ideal switch, and analytical formulas for the flux and current in the winding are derived for each switching mode. The calculated inrush currents and voltage drops during transformer energization using the derived analytical formulas agreed well with the results from electromagnetic transient analysis, which handled the nonlinear current-flux characteristics precisely.
報告書年度
2022
発行年月
2023/05
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
米澤 力道 |
グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門 |
共 |
田中 洋平 |
グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門 |
共 |
会田 峻介 |
グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
電力品質 | Power quality |
瞬時電圧低下 | Instantaneous voltage drop |
グリッドコード | Grid code |
保護リレー整定 | Protection relay setting |
瞬時値解析 | Electromagnetic transient analysis |