電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

GD22006

タイトル(和文)

EV急速充電器の高出力化による電力系統ピーク負荷への影響-地域メッシュサイズと充電需要の平滑化効果の関係-

タイトル(英文)

Impact of High Power of EV Quick Chargers on Power System Peak Load - Relationship Between Area Mesh Size and Smoothing Effect of Charging Demand -

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背 景
先行研究注1)において、EV 搭載電池の大容量化と急速充電器の高出力化によるピーク負荷への影響を系統レベルで評価し、特定の時間帯に充電行動を変えるなどのケース注2)を除けば、系統レベルでのピークへの影響はほとんど無いことを明らかにした。これは、系統レベルの需要全体では、多数台のEVによる充電需要は平滑化されるためである。しかし、平滑化効果が期待できる充電需要のエリアサイズは未解明であるため、エリアサイズの大小がピークに与える影響を明らかにする必要がある。
目 的
当所開発の交通シミュレータ[1]を用いて、急速充電器の高出力化と充電行動の変化によるピーク負荷への影響を地域メッシュ単位で分析することで、配電エリア単位および系統レベル上の課題を明らかにする。
主な成果
愛知県注3)に4 万台注4)のEV が普及している状況を想定し、表1 に示す12 ケースについて1km, 5km, 10km の3 パターンのメッシュサイズで充電需要への影響を評価した。
1. 急速充電器の高出力化による影響
以下の2 点が明らかになった。
・急速充電器の出力を増加させると、1km メッシュでのピーク負荷は大きくなる(図1)。これは、1kmメッシュに存在するEV台数では、50kWと100kWの出力差を相殺するだけの平滑化効果が得られないためである。
・メッシュサイズを拡大すると、平滑化効果により、メッシュ単位でのピーク負荷の増加割合は小さくなる(図2)。これは、系統レベルのような多数台のEV による充電需要では平滑化されるが、配電エリア単位など、局所的に見た場合、同様の平滑化効果が期待できないためである。
2. 充電行動が変化することによる影響
充電行動の変化を模擬するため、金曜午後に充電しきい値を変化させるケースを想定したところ、充電しきい値を固定したケースよりもメッシュ単位でのピーク負荷は大きくなることが明らかとなった(図3)。また、メッシュサイズが大きい程、メッシュ単位でのピーク負荷の増加割合は大きくなることも分かった(図4)。これは、充電行動の変化は、愛知県エリア内の全EVに同時に起きるため、メッシュサイズを拡大しても平滑化されないためである。
1、2 の結果から、配電エリア単位では配電設備等の容量超過に対して注意が必要であり、系統レベル単位ではピーク負荷を回避する対策が重要であることが明らかとなった。
注1) 高木雅昭,池谷知彦:「電気自動車の搭載電池の大容量化と急速充電器の高出力化によるピーク負荷への影響」,電学論B, Vol.143 No.2, pp.1-9 (2023)
注2) 週末の長距離走行に備えて、金曜午後の充電しきい値をSOCで60%に引き上げるケース。
注3) 自家用乗用車および急速充電器が比較的多い地域の代表として選択した。
注4) 下記の文献より、シミュレーションの試行ごとの結果の差異が小さくなる台数として4 万台と設定した。次世代自動車振興センター他「H26年度急速充電ステーション最適配置に関する解析調査」(2014-8)
注5) メッシュサイズとピーク負荷の関係を定量的に評価するための指標として、図1 や図3 における各ケースの面積に相当するピーク積分値を算出し、その比率がメッシュサイズを拡大することでどのように変化するかを分析した。
関連報告書:[1] L09009「充電インフラ検討用次世代自動車交通シミュレータの開発-電気自動車導入に向けた基本解析機能構築-」(2010.06)

概要 (英文)

Large-scale introduction of electric vehicles (EVs) puts an electric load to the power system. Recently, the capacities of on-board batteries and the outputs of quick chargers have been increasing. Increase in the battery capacity allows EV owners to charge more freely; however, charging may concentrate at a certain time such as on Friday afternoon, which is before the weekend, because EVs travel relatively long distance on weekend. Therefore, we evaluate the impact on the peak load in are mesh unit, assuming high power of quick chargers and the change in charging behavior. Charging threshold is defined as follows: when the state of charge (SOC) of an EV falls below the charging threshold, the EV goes to a quick charging station to charge. To simulate the change in charging behavior, we set up cases that the charging thresholds are raised on Friday afternoon.
Through the analysis targeting Aichi Prefecture, we obtained following findings. (1) As for the impact of high power of quick chargers, the charging demand of a large number of EVs in the power system level is smoothed, but the same leveling effect is not expected when viewed locally, such as the power distribution area level. Therefore, there is a possibility of overload of the power distribution facilities. (2) As for the impact of the change in charging behavior, even if the area mesh size is expanded, the smoothing effect of the charging demand cannot be expected. Therefore, it is especially necessary to take measures to avoid peak load at the power system level.

報告書年度

2022

発行年月

2023/04

報告者

担当氏名所属

高木 雅昭

グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門

池谷 知彦

企画グループ

キーワード

和文英文
電気自動車 Electric Vehicle
急速充電 Quick Charging
ピーク負荷 Peak Load
交通シミュレータ Traffic Simulator
平滑化効果 Smoothing Effect
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry