電力中央研究所

報告書「電力中央研究所報告」は当研究所の研究成果を取りまとめた刊行物として、昭和28年より発行されております。 一部の報告書はPDF形式で全文をダウンロードすることができます。

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

GD22005

タイトル(和文)

地中送電設備監視のための磁界発電装置の開発 -ケーブル通電電流に応じたCT(変流器)の構築-

タイトル(英文)

Development of an Energy Harvester by Use of Magnetic Field Generated from an Underground Transmission Cable - Construction of Current Transformers According to Cable Current Flow-

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背景
電力設備においては、保守作業の省力化やリアルタイム異常検知などを可能とするために、ICT(Information and Communication Technology、情報通信技術)を活用した設備監視システムが注目されている注1)。地中送電設備の監視にICT機器を適用するためには、マンホール内部に設置されるICT機器を動作させるための電源確保が不可欠である。これまで、電力ケーブルに流れる通電電流が比較的大きい場合には、磁界発電によって電力を得る装置が開発されているものの注2)、通電電流が小さい地域や時間帯では、ICT機器を安定動作させるために必要な電力の確保が困難な状況にある。
目的
磁界発電装置の主要機材であるCT(Current Transformer、変流器)の設計手法を、電磁気学的な特性に基づいて構築するとともに、同手法により設計したCTを用いることで、通電電流が小さい注3)地中送電設備でも必要な電力注4)が確保できることを実証する。
主な成果
1. 磁界発電装置のCT設計手法の構築
電力ケーブルの通電電流を用いた磁界発電装置の基本的な構成を図1に示す。磁界発電装置の発電特性は、任意の通電電流に対して、電力ケーブルに設置されるCTの構造、特性に大きく依存する。CTの設計にあたり、磁性体コア(以下、コア)サイズやコイル巻数を変数としてコアで集められる磁束φ、CTで得られる起電力V、二次側電流値I等を数式として示し、それらを用いて取り出せる電力Pを求める計算式を導出した。電力Pについて実測値と計算値を比較したところ、ほぼ一致する結果が得られ(図2)、導出した計算式の妥当性が示された。以上を踏まえ、CTを設計する手順をフロー図として示し(図3)、任意の通電電流に対して必要な電力を得る為のCTが設計可能となった。なお、大電流時には過度に発電しない対策注5)が別途必要となる。
2. CT設計手法の実証
上記のCT設計手法を用いて、一例として40 A程度の小さい通電電流を想定した場合にも、部分放電等のセンサ情報を得るための機器および無線通信機器から構成されるICT機器[1]の消費電力20 Wが得られる磁界発電装置を試作した(図4)。実際に通電電流40 A程度にてICT機器が安定して動作することを確認し、構築したCT設計手法が妥当であることを示した。

注1)参考:経済産業省「電気保安分野 スマート保安アクションプランの概要」
https://www.meti.go.jp/shingikai/safety_security/smart_hoan/denryoku_anzen/pdf/20210430_1.pdf (2022年10月26日閲覧)
注2)大電(株) 電力ケーブル用レイカプラ。CT1台で出力15 Wを得るためには通電電流495 A以上が必要とされる。
注3)ローカル系統における小電流条件の目安として、数十 A程度を想定した。
注4)ICT機器の動作に必要な電力の一例として関連報告書[1]の機器の消費電力を参考にし、20 Wと想定した。
注5)既存の磁界発電装置注2)では、大電流時に意図的に入力インピーダンスを不整合させて発電効率を落とす対策が施されており、本件では同じものを採用した。

関連報告書:[1] GD21022「送電用マンホールでの遠隔絶縁診断に向けた部分放電波形データの圧縮手法の開発」(2022.04)

概要 (英文)

Information and communication technology (ICT) devices for an underground transmission cable always have an issue of a power supply. Although the power supply was developed by use of a current transformer (CT) to extract electric power from the cable, the case of low current flow of the cable in a local area or in a time period makes difficult to extract it. We tried to develop some modified CTs aim to extract the power of 20 W from the cable with the current flow of as small as several tens amperes.
We derived theoretical equations for efficient power extraction through electromagnetic studies. By increasing a cross section of the core to obtain large magnetic flux, and by optimizing turns of the coil, we demonstrated to deliver electric power to the ICT device in operation with the current flow of 40 A successfully.

報告書年度

2022

発行年月

2023/06

報告者

担当氏名所属

伊藤 雅彦

エネルギートランスフォーメーション研究本部 材料科学研究部門

椎名 健雄

グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門

名雪 琢弥

グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門

真下 貴文

グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門

堀 康彦

グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門

キーワード

和文英文
電源装置 Power supply
変流器 Current transformer
磁界発電 Magnetic field power generation
地中送電 Underground power transmission
ICT機器 ICT devices
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