電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
GD22004
タイトル(和文)
架空送電設備遠隔監視のための通信網構築手法-公衆通信網が利用困難な地域における高速通信回線の構築-
タイトル(英文)
Communication networks construction method for remote monitoring overhead power transmission facilities - Construction of high-speed communication lines for areas where public communication networks are difficult to use -
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
高経年化が進む架空送電設備では,携帯電話などの公衆通信網を活用した遠隔監視による保守省力化の検討が進められている。しかし,公衆通信網が整備されていない山間地などにおいてはセンシングデータの遠隔収集が困難であることから,自営通信網の構築が望まれている。画像等を用いた高度な保守を実現するためには,長距離の大容量通信回線を効率的に構築することを可能とする無線通信技術の活用が必須であり,鉄塔上への無線装置の設置を想定した無線通信技術の選定,および通信特性の把握を通じた適用性評価が必要となる。
目 的
山間地における大容量通信回線を構築するための無線通信技術を選定し,架空送電設備の遠隔監視に向けた通信における課題を抽出する。また,抽出した課題に対し,屋外試験により選定した無線通信技術の基礎特性を把握し,その適用性を評価する。
主な成果
1. 無線通信技術の選定と通信における課題抽出
山間地における通信回線構築への適用が想定される無線通信技術を表1に示す。ここでは,鉄塔上に無線装置を設置した大容量通信回線を構築する技術として25 GHz帯FWA(Fixed Wireless Access)を選定した。
想定する通信システムのイメージを図1に示す。通信システム構築上の主な課題としては,「鉄塔の揺れ等に伴うアンテナの位置変動」,および「降雨等の気象変化」による通信特性への影響が挙げられる。
2. 25 GHz帯FWAの基礎特性
(1)鉄塔の揺れ等に伴うアンテナの位置変動を模擬し,アンテナを水平移動,垂直移動,および回転した場合の影響を評価した。その結果,3 m程度の水平・垂直移動に対しては通信特性への影響はなく,アンテナがビーム幅1)である4度以上回転すると急激に通信特性が低下することがわかった。
(2)見通しのある約820 m離れた2地点間において,長期測定(2021年10月~2022年6月)を実施した。その結果,災害が生じない程度の降雪,強風,地震による大きな影響がないと見込まれること(図2(a)),降雨による受信電力の低下は測定期間中において最大約14 dB(図2 (b))であり,この瞬間以外では安定した実効スループット(単位時間あたりに送受信可能なデータ量)が得られる(図2 (c))ことがわかった。
3. 25 GHz帯FWAの適用性
見通し環境における所要伝送距離を4 kmと想定し2),長期測定の結果を踏まえ,降雨時に回線が途絶する時間率を評価したところ十分低いことがわかり3),10 Mbps以上の実効スループットを良好に確保できる見込みが得られた。
注1)指向性(ビーム幅)を鋭くしてアンテナ利得を向上しており,今回用いた装置のビーム幅は4度である。
2)携帯電話事業者のサービスエリアマップを参考に,山間地における送電鉄塔位置までの距離を見積もった。
3)参考として18 GHz帯公共業務用固定局の所要年間回線断時間率である4×10−4より低い1.3×10−4となった。
概要 (英文)
In order to realize remote monitoring systems for overhead power transmission facilities in mountainous areas where are outside of the service areas of public networks, it is necessary to build a private wireless communication network from the inside of the service areas of public networks to the target transmission tower to be monitored. In this report, an applicability of 25 GHz band FWA (Fixed Wireless Access) for remote monitoring of overhead power transmission facilities is evaluated through outdoor experiments. The influence of antenna position fluctuations and the weather conditions when the wireless communication terminals are installed on transmission tower are evaluated.
Through the experiments, it was found that there is almost no impact even if the antenna is moved horizontally or vertically, and that strong winds, snowfalls, and earthquakes that do not cause disasters have almost no affect to the wireless communication quality. In addition, although there is radio wave attenuation due to rainfall, as a result of evaluation based on the experiments, it became clear that achievement of good communication quality using 25 GHz band FWA can be expected.
報告書年度
2022
発行年月
2022/12
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
宮下 充史 |
グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門 |
共 |
加川 敏規 |
グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
架空送電設備 | Overhead Power Transmission Facility |
固定無線アクセス | Fixed Wireless Access |
25 GHz帯 | 25 GHz Band |
降雨減衰 | Rain Attenuation |
遠隔監視 | Remote Monitoring |