電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

GD22003

タイトル(和文)

雷電磁パルスの影響を考慮した配電線雷サージ解析手法の開発(その1)-直撃雷サージ解析手法の開発-

タイトル(英文)

Development of Lightning Surge Analysis Method for Distribution Lines (Part 1) -Development of Analysis Program for Direct Lightning Surges-

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背 景
我が国の高圧配電線では,架空地線の高い施設率および避雷器の密な取り付けにより,誘導雷による雷事故は少なく,直撃雷によるそれの割合が高い。直撃雷に対する高圧配電線の耐雷性能評価には,XTAP やEMTP注1による回路解析が広く用いられるが,落雷時に発生する雷電磁パルス(Lightning electromagnetic pulse, LEMP)注2の影響は考慮されてこなかった。一方,これまでに,FDTD法注3等による数値電磁界解析を用い,高圧配電線直撃雷においても,LEMP が雷事故率に大なる影響を及ぼす場合があることを明らかにしてきた[1], 注4。しかし,FDTD 法では雷撃位置・雷電流波形等を変更した多数回の解析による雷事故率計算の実施は非常に困難であり注5,高圧配電線雷事故計算の精緻化と実用性向上のためには,従来より雷事故率計算に用いられてきた回路解析においてLEMP の影響を模擬し得る,新たな直撃雷サージ解析手法の開発が必要である。
目 的
回路解析において,雷放電路および被雷柱から放射されるLEMP の影響を模擬し得る直撃雷サージ解析手法を開発し,FDTD法に基づく解析ツール VSTL REV注6による計算結果との比較により,開発した解析手法の妥当性を検証する。
主な成果
1. 雷放電路および被雷柱から放射されるLEMP の影響を模擬し得る解析手法の開発
雷放電路および被雷柱から放射される LEMP の影響を,次のステップにより考慮可能とする直撃雷サージ解析手法を開発した(図 1)。ステップ1:回路モデルにより,雷放電路および被雷柱を伝搬する雷電流を計算する。ステップ2:雷放電路および被雷柱を伝搬する雷電流により発生するLEMP を解析式により計算する(架空地線に分流する雷電流によるLEMP の影響は,回路モデルにおける架空地線―相導体間の相互結合として近似的に考慮する)。ステップ3:ステップ2で計算したLEMPを Agrawal らの電磁界-導体結合モデル注7に組み込み,回路解析により配電線に発生する雷サージを計算する。本解析手法は,回路解析に基づくため,雷事故率計算への適用性がある(表1)。また,モデリングが容易でかつ避雷器や変圧器等の各種回路モデルを取り扱うことも可能である。
2. 開発した直撃雷サージ解析手法の妥当性の検証
上記で開発した解析手法を用いて,架空地線が取り付けられた高圧配電線を対象として,配電線に直撃雷が発生した際に発生するがいし間電圧を計算した(図2)。なお,図2 には,比較のため,LEMP の影響を考慮しない従来の回路解析を用いて計算した結果もあわせて示す。開発した解析手法を用いて計算したがいし間電圧波形は,VSTL REV による計算結果と良好に一致しており,開発した解析手法が妥当であることを確認した。

注1)eXpandable Transient Analysis Programおよび Electromagnetic Transients Programの略。接点解析法に基づく回路解析プログラム。
注2)雷撃に伴い発生する電磁パルスで,配電線に誘導電圧(誘導雷)を発生させる要因となる。
注3)Finite difference time domain法の略。時間領域における数値電磁界解析手法の一種。
注4)参考文献: K. Ishimoto, F. Tossani, F. Napolitano, A. Borghetti, and C. A. Nucci, “Direct lightning performance of distribution lines with shield wire considering LEMP effect,” IEEE Trans. Power Del., vol. 37, no. 1, pp. 76–84, Feb. 2022.
注5)3 次元 FDTD 法では,解析空間を微小領域に分割し,各領域での電界・磁界をマクスウェル方程式に基づき解くため,一般に回路解析と比較し大容量のメモリと長い計算時間を必要とする。
注6)Virtual Surge Test Lab. Restructured and Extended Versionの略。FDTD法に基づくサージ・過渡電磁界解析プログラム。
注7)配電線の回路モデルの一種。線路の Pi型回路に電圧源として外部電界の影響を組み込むことで,誘導電圧を計算できる。

関連報告書:
[1] H20007「雷放電路からの誘導の影響を考慮した配電線直撃雷フラッシオーバ解析」 (2021.08)

概要 (英文)

Direct lightning strikes to overhead medium voltage distribution lines are the main cause of lightning outages in Japan. Electromagnetic transient (EMT) analysis, in which the lightning electromagnetic pulse (LEMP) effect is not considered, has been widely used to evaluate the lightning performance of distribution lines. Recent studies based on the three-dimensional finite-difference time-domain (FDTD) analysis have shown that the LEMP effect has an impact on the lightning performance of distribution lines in some cases. However, the FDTD method is computationally expensive and there are still difficulties in performing the FDTD-based statistical analysis. Thus, the development of a fast and accurate analysis method that can consider the LEMP effect in a direct lightning strike to distribution lines within the EMT analysis is required. In this report, we have developed a new analysis program, which consists of EMT analysis based on the nodal analysis method, LEMP computation based on the scalar and vector potentials considering the presence of the struck pole by lightning, and the field-to-line coupling formula to compute the lightning-induced voltages. The developed program is applied to analyze the lightning strike to a distribution line with an overhead grounding wire. The program provides more accurate insulator voltages than the conventional EMT analysis: the LEMP effect can be considered within the EMT analysis by the developed program.

報告書年度

2022

発行年月

2022/11

報告者

担当氏名所属

山中 章文

グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門

石本 和之

グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門

立松 明芳

グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門

キーワード

和文英文
配電線 Distribution line
直撃雷 Direct lightning
雷電磁パルス Lightning electromagnetic pulse
電磁界-導体結合モデル Field-to-line coupling formula
瞬時値解析 Electromagnetic transient analysis
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