電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
GD21030
タイトル(和文)
再生可能エネルギー電源大量導入時の可変速揚水機制御に関する基礎検討-電源脱落直後のRoCoF低減に資する制御方式の提案-
タイトル(英文)
A Basic Study on Variable Speed Pumped Storage System Control with Large-scale Penetration of Renewable Energy - Proposal of a Control Method for Reducing RoCoF in Generation Tripping -
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
再エネ導入拡大により,電力系統の同期発電機(同期機)の並列容量が減少すると,電源脱落直後の周波数変化率(RoCoF1))の増大により太陽光発電(PV)が脱落し周波数低下が助長される懸念があること等から,電源脱落直後のRoCoF低減のための各種対策が検討されている。一方,可変速揚水機(可変速機)は,回転子の可変速運転により揚水時の動力調整が可能であるなど,主に平常時の周波数維持に貢献するが,電源脱落直後のRoCoFに及ぼす影響については明らかとなっていない。
目 的
可変速機の従来制御が電源脱落直後のRoCoFに及ぼす影響について整理する。また,電源脱落直後のRoCoF低減に資する可変速機の励磁電圧制御を提案し,その効果を検証する。
主な成果
1. 可変速機の従来制御が電源脱落直後のRoCoFに及ぼす影響
図1に示すモデル系統を用いて,可変速機の従来制御が電源脱落直後のRoCoFに及ぼす影響をY法シミュレーションにより解析した2)。変換器の制御速度をパラメータとし,可変速機の代わりに同容量の同期機を並列したケースと対比して解析した結果(表1),可変速機のRoCoF低減への貢献は同期機と比較して限定的であることを示した(図2)。これは,変換器制御に用いる座標系(DQ軸)の周波数3)の低下および電流制御器(ACR4))の出力電圧の位相の遅れにより,励磁電圧の周波数5)が有効電力を下げる方向に変化することが主な要因と考えられる。
2. 電源脱落直後のRoCoF低減に資する可変速機の励磁電圧制御
電源脱落直後のRoCoF低減に資する以下の制御を考案した(図3)。
● 励磁電圧の周波数を固定することで等価的に同期機のように振る舞わせ6),電源脱落直後のRoCoF低減に貢献する。また,端子電圧は,同期機と同様に,励磁電圧の大きさを調整することにより制御する。
● 上記制御により常時運転した場合,平常時の発電機回転数は固定され,可変速運転による利点(揚水時の動力調整等)が損なわれるため,有効電力および発電機回転数を変更する際は従来制御に切り替える。
シミュレーションにより,提案制御の効果を検証した。その結果,提案制御が,従来制御と比較して電源脱落直後のRoCoF低減に貢献することを確認した(図4)。
注1) Rate of Change of Frequencyの略
2) PVの低圧連系の標準方式である新型能動的単独運転検出機能は,検出・解列時間として200 ms 以内が要求されており,こうしたPV の脱落には電源脱落発生直後のRoCoF を低減することが重要となるため,本研究では短い時間領域のRoCoFに着目し,RoCoF は電源脱落発生から200 ms時点の値で計算した。
3) 通常は,すべり周波数(=PLL(Phase Locked Loop)により検出した系統周波数-発電機回転数)に制御される。
4) Automatic Current Regulator の略。変換器の電流が指令値通りになるように変換器電圧を制御する。
5) DQ軸の周波数およびACRの出力電圧の位相によって決まる。
6) 可変速機と同期機の主な違いは,可変速機が変換器により励磁電圧の大きさと励磁周波数の両方を制御可能であるのに対し,同期機は励磁電圧の大きさのみが制御可能である点である。したがって,可変速機の励磁周波数を固定すれば,等価的には同期機と同じ挙動になる。
概要 (英文)
As synchronous generators are displaced with renewable energy sources such as photovoltaics generation (PV), the inertia of the power system decreases. As a result, the Rate of Change of Frequency (RoCoF) following a sudden large generation trip would become severe, and there is a concern that a secondary PV trip would occur.
In this paper, the effect of Variable Speed Pumped Storage System (VSPSS) with the conventional control method on RoCoF is examined, and a new control method of VSPSS that improves RoCoF is proposed. Through power system simulations (RMS), it was clarified that the conventional control method does not improve RoCoF as compared with the synchronous generator. The main reason is that the excitation frequency of VSPSS changes and the active power of VSPSS decreases. Therefore, a new control method fixing the excitation frequency was proposed. It was shown that the proposed method improves the RoCoF as compared with the conventional control method.
報告書年度
2021
発行年月
2023/01
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
青木 廉 |
グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門 |
共 |
菊間 俊明 |
グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
可変速揚水発電システム | Variable Speed Pumped Storage System |
電源脱落 | Generator Trip |
周波数変化率 | Rate of Change of Frequency (RoCoF) |
単独運転検出機能 | Islanding Detection Function |
PV脱落 | Secondary PV Trip |