電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
GD21024
タイトル(和文)
電力系統の周波数安定性の維持に資する需要側インバータの制御方法に関する基礎検討 -系統負荷の電圧・周波数に対する自己制御性を模擬した有効電力制御-
タイトル(英文)
A Basic Study on Control Method of Demand Side Inverter to Ensure Frequency Stability of Power Systems - Active Power Control Method Emulating Load Characteristics Responses to Variations in Voltage and Frequency -
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
わが国では,電力系統の脱炭素化と周波数安定性維持の両立に向けて,十分な調整力の確保が課題となっている。これまで,系統負荷は自己制御性1)により一次調整力2)とそれよりも速い時間領域(以下,対象時間領域)における周波数変動を緩和するとともに電圧変動の緩和に貢献してきたが,近年,これが減少傾向にあると想定される3)。このような観点から,需要側機器の活用も議論されており4, 5),主として低圧に連系される電気自動車(以下,EV)や太陽光発電(以下,PV)等の需要側インバータに周波数安定性維持に資する制御機能を付加することが有効な対策の一つになると考えられている。
目 的
周波数安定性維持に資する需要側インバータに適した有効電力制御方法を提案し,その効果をシミュレーションにより検証する。また,需要側インバータを活用して対象時間領域の調整力を確保していくための課題と対応について整理する。
主な成果
1. 周波数安定性維持に資する需要側インバータに適した有効電力制御方法の提案
需要側インバータの出力を電圧変動に応じて適宜調整し,周波数変動の緩和と電圧変動の緩和を両立させる制御機能として,系統負荷の電圧・周波数に対する自己制御性を模擬した有効電力制御方法6)を提案した(図1)。
2. シミュレーションによる提案制御の検証
提案制御の適用効果を,電気学会WEST30 機系統モデルでの電源脱落を想定したY 法シミュレーションにより検証した。その結果,充電時のEVを模擬した需要側インバータが各負荷ノードの電圧の上昇(低下)に応じて有効電力を減少(増加)させることで,系統負荷の自己制御性が向上し,電圧変動を緩和しつつ周波数の低下を抑制できることを確認した(図2)。
3. 需要側インバータを活用した対象時間領域の調整力確保における課題と対応
今後,導入拡大が見込まれるEV は,PV と比較して時間的な制約が小さく対象時間領域の調整力として随時活用できる可能性が高いと考えられる。需要側インバータを活用していくためには,表1に示す特徴を考慮するとともに,表2に示す課題への対応が重要となる。
注1) 系統負荷とは上位系統から見た需要家機器の集合体であり,有効電力の自己制御性は,一般に下式の指数関数モデルで表現される。系統負荷のαp,βpは一般に正の値をと り,系統の電圧・周波数の低下(上昇)に対して有効電力を減少(増加)させることで電圧・周波数の低下(上昇)の緩和に貢献する。需要家機器単体として,αpは2 程度(熱負荷等),βpは6 程度(誘導モータ等)までの値をとる。
αp,βp∶ 有効電力の電圧特性指数・周波数特性係数,Po,Vo ∶ 有効電力・電圧の初期値,Δf∶基準周波数との偏差。
2) 本研究では,発電機等のガバナフリー(GF)制御の時間領域に相当する周波数調整力を,一次調整力と称す。
3) 一般的にインバータ負荷のαp,βpは0であり,インバータ化の進行により系統負荷のαp,βpも0に近づいていく。
4) 経産省,「カーボンニュートラルの実現に向けた検討」,第33回総合資源エネルギー調査会基本政策分科会(2020)
5) CIGRE TB 851: “Impact of High Penetration of Inverter-based Generation on System Inertia of networks”, JWG G2/C4.41 (2021)
6) 電圧・周波数の単体制御はあるが,提案制御のように負荷特性を模擬したものは他にない。
概要 (英文)
In Japan, it is an important issue to ensure sufficient frequency control reserves for realizing decarbonization and ensuring frequency stability of power systems. Conventionally, load characteristics contribute to suppressing frequency fluctuations and voltage fluctuations in the time domain corresponding to the containment reserve and the faster domain. However, in recent years, the contribution of load characteristics is predictedd to be on a declining trend. From this perspective, the use of demand-side devices has been discussed. It is recognized that the addition of frequency stabilization control function to demand-side inverters for photovoltaic, electric vehicles, etc., will be one of the effective measures.
Therefore, the authors proposed an effective power control method suitable for demand-side inverters that contribute to ensuring frequency stability. The proposed method was applied to the actual machine in CRIEPI's power system simulator, and a lab test confirmed its characteristics. In addition, the proposed method was validated through time-domain RMS simulations using the IEEJ WEST 30-machine system model. This report clarifies the effectiveness of the proposed method and discusses issues and measures to ensure control reserves using demand-side inverters.
報告書年度
2021
発行年月
2022/10
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
佐藤 勇人 |
グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門 |
共 |
増田 宗紀 |
グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門 |
共 |
天野 博之 |
グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
電力系統のレジリエンス | Power System Resilience |
周波数安定性 | Frequency Stability |
負荷特性 | Load Characteristics |
太陽光発電 | Photovoltaic |
電気自動車 | Electric Vehicle |