電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
GD21010
タイトル(和文)
IP保護リレー情報に対する伝送経路の増強コスト最小化に向けた設計手法 -マイクロ波無線通信網への適用と評価-
タイトル(英文)
A Method for Designing Transmission Paths of IP-based Protection Relay Information with Minimum Augmentation Cost -Application to Microwave Wireless Communication Networks and its Evaluation-
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
自然災害の影響を受けづらいマイクロ波無線通信は,基幹系統のPCM電流差動リレーシステムにおける情報(以下,リレー情報)の伝送に多く用いられている。近年,リレー情報の伝送にIP系技術を適用したIPリレーシステムの検討が進められている。IPリレーシステムの新設や既存のリレーシステムからの更新が進むと通信量が増大するため,マイクロ波無線帯域の増強が必要になる可能性がある。IPリレーシステムの要件を満足する伝送経路の設計を,新設や更新の時期に応じて逐次行う方法は,直近のマイクロ波無線帯域の増強コストのみを考慮した設計を繰り返すこととなる。これに対し,全ての新設や更新を踏まえた伝送経路の設計方法に基づき増強計画を立案することができれば,マイクロ波無線通信網の構築に要する総コストの低減が期待できる。
目 的
全てのリレーシステムの新設や更新を踏まえ,マイクロ波無線帯域増強に要する総コストが最小となる伝送経路を設計する手法を提案する。また,実規模の通信網を対象とした評価を行う。
主な成果
1. 無線帯域増強に要する総コストが最小となるIPリレー情報の伝送経路設計手法の提案
経路設計問題を,マイクロ波無線帯域増強に要する総コストを目的関数とする数理最適化問題として定式化し,総コストが最小となる増強区間およびIPリレー情報の伝送経路を求める手法を提案した。提案手法は以下の特徴を有する。
・ 変電所/中継所とそれらを繋ぐマイクロ波無線通信網に対し,帯域の空き容量と送電線の対向の変電所の組,区間の増強可否や増強可能量を与えることにより,総コストが最小となる増強区間とIPリレー情報の伝送経路を求めることができる。
・ 経由する中継箇所が4中継以内,対向の変電所間の2経路が同一中継箇所を経由しないといった,既存のリレー情報における伝送経路設計の要求を制約式として加え,これらを満足するIPリレー情報の伝送経路の導出が可能である。
2. 実規模のマイクロ波無線通信網を対象とした評価
10×10の合計100箇所の変電所/中継所からなる格子状の実規模マイクロ波無線通信網に対し,乱数を用いて141の対向する変電所の組(141本の送電線の対向変電所)を設定した。提案手法と,伝送経路の設計を逐次行う手法を模擬した貪欲法を用いて,マイクロ波無線帯域の所要増強区間数を求めた。初期の無線帯域の空き容量を変化させて計算した結果,いずれの場合でも提案手法は貪欲法よりも少ない増強区間数で全てのIPリレー情報を収容可能であった。提案手法により得られる計算結果は,総コストを低減したマイクロ波無線通信網の構築計画立案に活用できる。
概要 (英文)
In recent years, the application of IP-based technology to the transmission of power line protection relay information has been studied. As the communication volume increases due to application of IP-based technologies, it may become difficult to accommodate it in existing microwave radio communication networks, then microwave radio bandwidth may need to be significantly increased.
In this paper, the authors formulated the problem determining transmission path of IP-based power line protection relay information as a mathematical optimization problem with the objective function of minimizing the cost of microwave radio bandwidth augmentation and solved it by using optimization solvers. They also implemented a greedy algorithm to design the path sequentially according to the update of power line protection relay devices, and to find the least-cost microwave bandwidth augmentation section each time when the microwave radio band is insufficient to accommodate the available capacity. Numerical experiments showed that the proposed method can reduce the cost by 26% on average compared to the greedy calculation method.
報告書年度
2021
発行年月
2022/07
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
田中 彰浩 |
グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門 |
共 |
大場 英二 |
グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
マイクロ波無線 | microwave radio communication |
保護リレー | protection relay |
数理最適化 | numerical optimization |
インターネットプロトコル | internet protocol |
点素パス | disjoint path |