電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
GD21009
タイトル(和文)
EV導入・活用時における系統負荷のモデリングに向けたEV用充電器の特性把握
タイトル(英文)
Experimental Investigation of EV Chargers Characteristics for Modeling of Aggregate Load with Large-Scale EVs
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
わが国では,脱炭素化や災害時のレジリエンス確保に資する対策の一つとして運輸部門での車両電動化が推進されており,特に電気自動車(以下,EV)の導入・活用が期待されている1)。しかしながら,EV の導入拡大が進み,系統負荷の電圧や周波数に対する特性が変化してくると2),電力系統の運用・制御への影響拡大が懸念される。この影響を事前に解析するためには,EV 用充電器の特性を把握し,系統負荷の特性変化への影響を分析することが必要となる。
目 的
市販のEV用充電器の電圧・周波数特性を試験により把握し,同特性が系統負荷の特性に与える影響を分析する。また,試験結果に基づき電圧・周波数変動時の応動を模擬できるEV用充電器の実効値解析用モデルを開発する。
主な成果
1. EV 用充電器の特性把握と系統負荷の特性に与える影響の分析
EVの充電方式は,普通充電または急速充電の2 種類に分類される(図1)。そこで,各方式の代表1 機種3)を対象に,電圧・周波数変動に対する充放電電力の応動を把握し4),各方式の特性を分析・整理した(表1,図2)。主な特徴は,以下のとおりである。
・電圧変動時の充電電力は,普通充電の場合,車載PCS の有効電力一定制御により電圧変動直後は定格電力値5)に保たれるが,その後,コントロールボックスの電流一定制御により電圧に応じた値に落ち着く(定電流特性を示す)。一方,急速充電の場合は,EV用PCS の有効電力一定制御により定格電力値に保たれる(定電力特性を示す)。
・周波数変動時(急峻な変動を除く)は,普通充電時の充電電力,急速充電時の充放電電力いずれも定格電力値に保たれる(周波数特性はなし)。
系統負荷の特性6)を表す電圧特性指数および周波数特性係数は,近年の負荷機器のインバータ化により減少傾向7)にある。上記試験結果を踏まえると,EV の導入拡大が将来の系統負荷の特性に与える影響は各方式によって異なり,普通充電の場合は電圧特性指数の減少傾向を緩和し,周波数特性係数の減少傾向を進行させる。一方,急速充電の場合は電圧特性指数と周波数特性係数の両者の減少傾向を進行させると考えられる(表2)。
2. 電圧・周波数変動時の応動を模擬できるEV 用充電器モデルの開発
前述した各充電方式の特徴的な応動は,表3 に示すモデル要素により模擬することができ,開発モデルが実機の応動を概ね再現できることを確認した(図3)。今後は,必要に応じて本開発モデルの調整・改良を行うとともに,EV 導入・活用時の系統負荷モデル(EVの集合体としての特性を考慮したモデル)の開発を進める。
注1) 経済産業省,「2050 年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」(2021)
2) 系統負荷とは上位系統から見た需要家側機器の集合体である。今後系統負荷の主要な要素になると想定されるEV用充電器の特性は未知であるとともに, この導入拡大が系統負荷の特性に与える影響は明らかとなっていない。
3) 普通充電器は国内シェア上位の機種,急速充電器は実証試験済みで実系統への導入実績がある機種を選定した。
4) 任意の電圧・周波数を生成可能なインバータ電源とEV等を直結して特性把握試験を実施した。EV用充電器の力率は1(標準値)であり,無効電力は電圧・周波数変動時もほぼ0 であるため,有効電力の応動のみを対象とした。
5) 一般的に充電電力は定格電力値となり,放電電力は指定した値(本試験では定格電力値)となる。
6) 系統負荷の特性は,一般に指数関数モデル(下式)により表現される。
7) 一般的にインバータ負荷の𝛼pと𝛽pは0であり,インバータ化の進行により系統負荷の𝛼pと𝛽pも0に近づいていく。
概要 (英文)
In Japan, in order to realize the transport decarbonization and the enhancement of power system resilience following a disaster, the electrification of vehicles is being promoted as one of the measures. In particular, the large-scale integration of and use of Electric vehicles (EVs) are expected. However, large-scale integration of EVs will change the load component and load characteristics. There is a concern that this may impact the operation and control of the power system. It will be necessary to develop a load model considering EV's characteristics to analyze the impact of EVs on the power system in advance.
Therefore, the authors conducted laboratory tests using CRIEPI's power system simulator to investigate the characteristics of the response to voltage and frequency fluctuations for two types of charging types, slow and rapid charging, for commercial products of one representative manufacturer. The results of the tests were used to develop the EVs model considering types of charging. This report provided the following key findings obtained from the tests.
The characteristics of the response of each charging type and its impact on load characteristics
Models for root mean square analysis to simulate the response of slow charging and rapid charging
報告書年度
2021
発行年月
2022/09
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
増田 宗紀 |
グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門 |
共 |
佐藤 勇人 |
グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
負荷特性 | Load characteristic |
系統解析 | Power system analysis |
電気自動車 | Electric vehicle |
実効値解析用モデル | Root-Mean Square analysis model |
実機試験 | Laboratory test |